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仙台市民交響楽団「仙台市民交響楽団 第75回定期演奏会」
- 実施日時
- 2016年11月20日(日)14:00開演
- 実施場所
- 東北大学百周年記念会館 川内萩ホール
- プログラム
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モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲 K.620
ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調Op.36
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調Op.98
主催者からのレポートをお届けします。
私たち、仙台市民交響楽団は、仙台市内を拠点に活動を続けている結成47年を迎えたアマチュアオーケストラです。震災当時は、団員の多くが職場や自宅で被災しながらも、震災直後から活動を再開し、震災3か月後の2011年6月には市民センターでの演奏会開催に漕ぎつけました。また、被災地への訪問演奏や祈念式典での献奏活動等を実施しながら、定期公演も再開し、本公演は震災後11回目の定期公演となりました。震災直後の演奏会で出会えたことは「こんな私たちの拙い演奏でも待ってくれている人たちがいる、そして涙を流して喜んで聴いてくださる方々がいる」という事実でした。被災地・七ヶ浜町で「新世界」を演奏した後に、涙を流しながらスタンディングオベーションをいつまでも続けてくれたご老人の姿を忘れることはできません。そして「音楽を当たり前に奏でることができる日常への感謝と、市民響にしか奏でられない熱い音楽を、お客様と一緒に紡ぎながら共有したい。」これこそが私たちのできる喜びであり使命なのではないか、と改めて感じたのでした。
そういった思いをこめ「仮設住宅に住む方々への定期演奏会への招待」を毎回継続実施し、団員自らポスティング活動をしており、招待した仮設住宅の皆様からも大変な好評を得ております。このように震災以降も地道に活動を続けてきたことが、今回、サントリー芸術財団様より「音楽復興祈念賞」として評価頂き大変うれしく思います。そして、私たちの活動を支えてくれたお客様の継続的な暖かいご支援の賜物と感謝しております。
さて、今回の演奏会は当団の原点回帰ともいうべき、モーツアルト「魔笛序曲」・ベートーヴェン「交響曲第2番」・ブラームス「交響曲第4番」というドイツ物の王道である3大作曲家のプログラムに挑戦致しました。そして指揮者は今回当団初登場の石崎真弥奈先生をお迎えし、750名を超えるお客様から大変熱い拍手とブラボーを頂戴致しました。石崎先生は非常に緻密で骨格のしっかりしたアンサンブルを作ることに情熱を傾けておられ、ブラームスの練習時にこのような指示が何度も飛んできました。「この交響曲では、室内楽的なアンサンブルの響きを作ることを常に考えて演奏してください」まさに目から鱗が落ちる思いでした。このようなアプローチは今まで行ったことがなく、先生の指示でスコアを何度も読み込むと、実はこの曲には室内楽的な要素が数多くあることが発見できます。そして、室内楽的な響きを求めていくと、その先には、この曲に秘められた「神々への敬虔」や「人生の終焉における生への強い意志」を求めるブラームスの教会音楽への回帰も感じられたのです。また、モーツアルト、ベートーヴェンについても、「各々のフレーズの中で、何がメロディでどの楽器に寄り添うべきか、各々が聴きあい、そして考えながら演奏しましょう」という指示のもと、メロディラインと和音を一つずつ丁寧に確認し、スコアに忠実な古典的な様式美の追求をなされました。本番では練習の成果が十分に発揮され、「アマチュアでここまで丹念に完成させるのは素晴らしい」「オーケストラが成長している様がよくわかる」「熱のこもった素晴らしい演奏と時間をありがとう」などの好評価を頂いております。
なお、演奏会当日は、サントリー芸術財団より佐々木様がご来場され、リハーサル終了後に記念楯の授与が行われました。そして今回の助成金により、旧西ドイツ製のティンパニ名器「ギュンター・リンガー」を借用することができ、「ドイツ古楽器独特の深くて古典的な響き」を再現できました。東北大学・萩ホールの素晴らしい音響空間でこの響きを再現できたことはとても幸せなことであり、改めて感謝申し上げます。
また、来場者アンケートでは、今回の助成に対して「メセナ・企業の社会的貢献のあるべき姿として大変すばらしいことであり、今後とも復興支援活動を進めてほしい」「このような支援は演奏者の励みになる」「ウイーンフィル奏者との共演も実現できるようぜひ支援してほしい」などのご意見を頂きました。
間もなく震災後6年が経過します。建築物などの目に見える部分は徐々に復興してきましたが、被災地の方の心の傷は簡単に癒えるものではありません。そして、いまだ困難な生活を余儀なくされている方、特に高齢者で困難な生活を送っている被災者が多数いらっしゃいます。
私たちの活動により、微力ながら「音楽の力」で心を癒してもらえることができるよう、今後とも地道に活動を続けてまいりたいと存じます。