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特定非営利活動法人 京都フィルハーモニー室内合奏団「音楽でつながろう!福島~京都~ウィーン 
地元中学生の選抜オーケストラ・合唱団と共演  
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 合唱付き」

  • 実施日時
    2015年3月22日(日)14:00開演
  • 実施場所
    郡山市民文化センター中ホール
  • プログラム

    京都フィルハーモニー室内合奏団(以下、京フィル)

    ・ヨハン・シュトラウス:ワルツ「春の声」
    ・モーツァルト:アイネ クライネ ナハトムジーク
    ・E.シュトラウス:カルメン・カドリーユ
    ・J.S.バッハ:G線上のアリア
    ・ラツェック:猫のセレナーデ
    ・ヨゼフ・シュトラウス:鍛冶屋のポルカ

    京フィルとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以下、ウィーン・フィル)のメンバー

    ・ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

     ウィーン・フィルのメンバー

     ・ハイドン:ディヴェルティメント 変ロ長調より

     ・ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」より第4楽章

  • 出演

    佐藤俊太郎(指揮)、早川圭子(ソプラノ)、橋本厚子(アルト)
    角地正道(テノール)、渡邊浩司(バリトン)
    郡山市の中学生、京都フィルハーモニー室内合奏団
    ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー
     ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン)、マリオ・カルヴァン(ヴィオラ)、
     ミヒャエル・ブラーデラー(コントラバス)、アレクサンダー・エールベルガー(オーボエ)、
     ミヒャエル・ヴェルバ(ファゴット)

主催者からのレポートをお届けします。

京都フィルハーモニー室内合奏団は2015年3月22日と23日に福島県郡山市で、震災復興支援コンサートをおこないました。昨年の第2回ウィーンフィル&サントリー音楽祈念賞受賞に引き続き、本年も第3回ウィーンフィル&サントリー音楽祈念賞を受賞させていただきました。一同心より御礼申し上げます。そして、郡山市民の皆様はじめ数々のご支援を賜り、皆様のお陰で公演が無事に開催できましたことを感謝申し上げます。特に今回はウィーンフィルのメンバー5名の参加が実現したことを大変うれしく思いました。ここ郡山市は全国でも有数の合唱王国でありますが、オーケストラ活動も活発で、なんと公立の中学校に立派なオーケストラ部があります。京フィルが2012年から続けている震災復興支援コンサートでは、必ずその中学生オーケストラの子供たちとの共演を実現しています。オーケストラ部の子供たちがプロの演奏家と共演することで、飛躍的に子供たちの演奏向上と心の励みになります。まして今年はウィーンフィルのメンバーが参加してくれたので、子供たちだけでなく、地元の先生と、そして京フィルメンバーも、ウィーンフィルのメンバーと共演できたことに心から感激しました。今年のコンサートは思い切って、ベートーヴェン作曲の交響曲第九番「合唱」の第四楽章を共演することにしました。中学生が第九を演奏出来るのか?という不安が少しありましたが、この郡山では当たり前のごとく中学生も第九が出来るのです。私たちの想像をはるかに超えてウマイのです。長年郡山市民が培って来た音楽への情熱が、今の子供たちに確実に伝えられていることを実感します。コンサートの前半はポルカやワルツなど京フィルの楽しい演奏と、ブラームス作曲の「ハンガリー舞曲第五番」を京フィルとウィーンフィルメンバーとの合同演奏で華やかに繰り広げました。その後ウィーンフィルメンバー5名によるハイドンのディヴェルティメントで、一気にウィーン情緒を味わいました。

そして後半に京フィル+中学生オーケストラ+ウィーンフィルメンバーとの合同でベートーヴェン作曲の交響曲第九番「合唱」の第四楽章を演奏しました。仙台出身の若手指揮者、佐藤俊太郎さんの熱のこもった指揮のもと、地元のソリスト(ソプラノ、アルト、バリトン)のみなさんと、関西からボランティアで駆けつけてくれたテナーの角地さんの力強い歌声、そして中学生と地元一般の方、計120名の素晴らしい歌声がホールに響きわたりました。まさに「歓喜の歌」でした。演奏直後は京フィル、ウィーンフィル、そして中学生それぞれが熱い握手で、感動を共有できた喜びとお互いの演奏の労をねぎらっていました。前日の練習やコンサート当日のリハーサルの合間では、京フィルメンバーやウィーンフィルメンバーは積極的に中学生にアドヴァイスをしていました。中学生はウィーンフィルのメンバーに、片言英語とジェスチャーでお話をして交流を深めていました。不思議なことに中学、高校生のような多感な年齢の若者は一流の演奏者と隣同士で演奏すると瞬時に音が良くなります。今回のコンサートでも前日の練習と本番の音では全く違った音が出ていました。中学生にとっては一生忘れることの出来ない時間となったことでしょう。

翌日23日は各種の楽器クリニックを実施しました。郡山市は「ミューカルがくと館」という市民が使用出来る立派な練習会場があります。その「ミューカルがくと館」で2時間近く、熱のこもったクリニックをしました。このクリニックには京フィルのヴァイオリン、チェロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、トランペット、トロンボーン、打楽器の各奏者とウィーンフィルのフロシャウワーさんが参加して、中学生のみならず、一般アマチュアの演奏者に教えました。京フィル演奏者は子供たちに時間の経つのも忘れて熱心にクリニックをしていましたが、特にフロシャウワーさんに絶対教えてもらいたいという中学生が、フロシャウワーさんが来る1時間ほど前から準備練習をしてクリニックにのぞみ、一音一音丁寧に指導を受けていました。教えられることを忘れないようにと、フロシャウワーさんの一言一言にその中学生はメモを取っていましたが、彼が模範演奏をして、彼女で演奏するというのを繰り返すと、見る見る音楽が変化していきました。この中学生にとっては一生の思い出になり、今後の彼女の人生に大きな影響を与えたことでしょう。またこの機会にという思いで京フィルのヴァイオリニストも、中学生にクリニックを実施した後にフロシャウワーさんに色々質問をぶつけていて、実に有意義で楽しいクリニックでした。これまで4年間毎年支援コンサートを実施してきましたが、まだまだ復興には遠い道のりがかかる東北ですが、これからも京フィルが出来る範囲で支援を継続していきたいと考えています。