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盛岡バッハ・カンタータ・フェラインメンデルスゾーン作曲 オラトリオ「聖パウロ」演奏会
- 実施日時
- 2014年11月24日(月・祝)14:30開演
- 実施場所
- キャラホール(岩手県盛岡市)
- プログラム
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メンデルスゾーン:オラトリオ「聖パウロ」作品36
- 出演
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【独唱】多田羅迪夫(Bass/パウロ)、村元彩夏 (Soprano)、三谷亜矢(Alto)、 鈴木准(Tenor)、小原一穂(Bass)、千田敬之(Bass)
【管弦楽】東京バッハ・カンタータ・アンサンブル(コンサートマスター:蒲生克郷)
【合唱】盛岡バッハ・カンタータ・フェライン、岩手大学教育学部附属小学校合唱部
【指揮】佐々木正利
主催者からのレポートをお届けします。
盛岡バッハ・カンタータ・フェライン(以下、フェライン)はわが国の音楽界の重鎮である多田羅迪夫氏ら6人のソリスト、東京バッハ・カンタータ・アンサンブル、岩手大学教育学部附属小学校合唱部の皆さんを迎え、佐々木正利氏(岩手大学教育学部教授)のタクトの下、「メンデルスゾーン作曲《聖パウロ》」演奏会を開きました。演奏会では総勢約180名がステージ上にて熱演し、来場した628人の聴衆の皆さんとともに、音楽の力と恵みを十分に堪能しました(写真1)。演奏会直前にはステージ上で第3回「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」授与式を執り行いました(写真2)。
フェラインは1977年に「カンタータを歌う会」として盛岡で誕生し、主にJ.S.バッハの作品を中心としたドイツ・バロック合唱曲の研究を行ってきました。ドイツ・バロック音楽の権威である佐々木正利氏を常任指揮者に迎え、「“音楽が生きる”と“言葉が生きる”は歌の世界では同義語である」という音楽信条を掲げ、特にドイツ・バロック音楽を音楽的かつ人間的に表現することを目標に活動しています(写真3)。
《聖パウロ》はメンデルスゾーンが20歳代に作曲した、キリスト教の大伝道者パウロを題材にした大作です。主人公のパウロは今から約2000年前のローマ帝国時代、様々な困難を乗り越えてキリスト教の礎を築いた人物です。有名な「目からウロコが落ちる」のことわざは、パウロがキリスト教に回心するときの出来事が語源です。パウロは伝道活動において多くの迫害を受けるなど、その伝道生涯は苦難の連続でした。一方でパウロをサポートしてくれた多くの人々がいたことも聖書は伝えています。特に、《聖パウロ》でも登場するステファノ、アナニア、バルナバはパウロが大伝道者に成長する過程で重要な役割を果たしました。人との繋がりが生きていく上で欠かせないのは昔も今も同じだと思わせられます。
メンデルスゾーンはそのパウロの生涯と信仰、そしてパウロを取り巻く人々との関わりを、バッハの作曲技法も織り交ぜて、格調高く、独自の音楽で丁寧に表現しました。《聖パウロ》には合唱、アリア、コラールが多く登場し、ヘンデルの作品やバッハの受難曲を彷彿とさせます。パウロが旅した地中海世界を舞台とする壮大な物語が《聖パウロ》によって雄弁に奏でられます。
物語の核である“パウロがイエスの幻と出会う”場面では、岩手大学教育学部附属小学校合唱部の皆さんが「イエスの声」を歌いました。小学4年生から6年生の47名の子どもたちがドイツ語の歌詞を暗譜で歌いました。ドイツ語の子音がきちんと発音され、音楽的にも高い技術に支えられた合唱は、まるで天から降り注いでいるかのよう。演奏会後、「練習したことができて良かった」、「プロのオーケストラと合唱の演奏を生で聴くことができてよかった」等、子どもたちから演奏会に参加して成長したことを実感させる多くの感想が寄せられました。子どもたちには無限の可能性が秘められていることを改めて感じます。
また、演奏の流れとストーリーがしっかりリンクして伝わらないと曲の魅力を十分伝えることができないとの判断から、物語が一段落する要所で、指揮者による解説を入れました。解説のタイミング、解説の長さ及び内容については音楽の流れを寸断することがないよう、指揮者自らが熟慮して決定しました。このような試みは《聖パウロ》の演奏史上、珍しい取り組みだと思いますが、来場された聴衆の多くから「物語が分かりやすかった」との声を頂き、ほっとしました。
《聖パウロ》の演奏には音楽的な技術に加えて、運営面においても多額の資金、準備期間、そして多くの方のご理解・ご協力が必要です。私たちのようなアマチュアの合唱団が気軽に取り組める曲ではないと考えています。しかし、演奏会開催にあたり、多くの方から頂いた寄附・協賛と応援、加えて、第3回「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」の受賞は演奏会を開催する強力な力になりました。会員一同、この場を借りて深く感謝します。 あの大震災から4年が経過しました。演奏会で奏でた物語が復興を目指す人々や地域に対して少しでも力になればと願います。