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いわき室内楽協会「いわき室内楽協会コンサートシリーズ」
年4回開催 Vol.1
第3回「オール・モーツァルト・プログラム」
- 実施日時
- 2013年11月28日(木)19:00開演
- 実施場所
- いわき芸術文化交流館アリオス 音楽小ホール
- プログラム
-
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番 ト長調 K.423
オーボエ四重奏曲 へ長調 K.370
アヴェ・ヴェルム・コルプス(編曲:蠣崎耕三)
ディヴェルティメント 変ホ長調 K.563
- 出演
-
蠣崎耕三(オーボエ)、水谷晃(ヴァイオリン)、馬渕昌子(ヴィオラ)、丸山泰雄(チェロ)
主催者からのレポートをお届けします。
2013年4月に発足した「いわき室内楽協会」。福島県いわき市において国内トップクラスの室内楽コンサートを開催する市民団体です。ミュージック・ディレクターには日本を代表するチェロ奏者・丸山泰雄さん。丸山さんがリーダーを務めるヴィルタス・クヮルテットは、いわきアリオスオープン時より、いわきを拠点に演奏活動(演奏会、アウトリーチ)を続け、いわきとの交流を深めてきました。そして震災…丸山さんは、いわきを含む被災各地100ヵ所以上を慰問演奏に訪れるなか音楽の必要性を実感。いわきへもさらに音楽を届けていきたい(上質な室内楽公演、そして可能な限り無償の訪問演奏も付随して行いたい)とし、それに賛同した市民有志とともにこの協会をスタート。コンサートは年4回。ヴィルタスのメンバー4人を中心に、国内外で活躍中のゲスト出演者を迎えます。ひとときの音楽が喜びとなり明日への活力となることを実感した今だからこそ、出演者、スタッフ、そしてお客様がこの場に集ってくださると思っています。さらに今回より1年間、計4回のいわき室内楽協会コンサートシリーズに対して、第2回「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」受賞の栄誉をいただき、心より感謝申し上げます。これは私共の活動に大きな支えとなり喜びを与えてくれました。
11月28日、いわき室内楽協会第3回目となる公演は「オール・モーツァルト・プログラム」。いわきではお馴染みのヴィルタス・クヮルテットより、水谷晃さん(ヴァイオリン、東京交響楽団コンサートマスター)、馬渕昌子さん(ヴィオラ)、丸山泰雄さん(チェロ)、さらに初の管楽器として蠣崎耕三さん(オーボエ、読売日本交響楽団首席オーボエ奏者)。モーツァルトの音楽のなんとも言えない幸せな時間を堪能しました。プログラムにより楽器編成も変わり、ヴァイオリンとヴィオラで二重奏、オーボエが加わった4人で2曲、そして弦楽三重奏でディヴェルティメント。編成がいろいろ見られたということも楽しかったですし、オーボエの音色に感激したというお客様からの声も多数ありました。特にアヴェ・ヴェルム・コルプスはパンフレット記載になかったサプライズ、オーボエの蠣崎さんがこの編成のためにアレンジしてくださった曲で大好評でした。いわき室内楽協会では、4回券・2回券をお求めいただいた方への会員制度も儲けており、現在、会員は101名となりました。回を増すごとにお馴染みの皆様とコンサートで再会する喜びもあります。会発足以前は、年に一度だったヴィルタス・クヮルテットの演奏会が、3ヶ月に一度はメンバーの皆さんの演奏を聴ける喜び。今回、会員の皆様や、一般のお客様、さらには翌日訪問演奏会を行う学校の先生方、120名余りが来場され、コンサート後のロビーは笑顔にあふれていました。
<訪問演奏>
- 実施日時
- 2013年11月29日(金)10:15開演
- 実施場所
- いわき市立豊間小学校体育館(豊間小学校・豊間中学校)
- プログラム
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モーツァルト:3本のバセットホルンのためのディヴェルティメント
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番より プレリュード
ボッケリーニ:ヴィオラとチェロのためのソナタ
J.S.バッハ:シシリアーノ
コダーイ:無伴奏チェロソナタより 第3楽章
カッチーニ:アヴェ・マリア(編曲:蠣崎耕三)
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス(編曲:蠣崎耕三)
- 出演
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蠣崎耕三(オーボエ)、馬渕昌子(ヴィオラ)、丸山泰雄(チェロ)、常光今日子(ヴァイオリン賛助出演)
いわき市において最も震災の津波被害が深刻だった薄磯海岸に所在する、豊間小学校への訪問演奏会。豊間中学校は海辺にあったために校舎が使えなくなり、山側にあった小学校に併設されています。この小学校では2名の児童が津波の犠牲になりました。また家族を亡くしたり、家を流されてしまったり、現在は仮設等地域外から車で送ってもらってこの学校へ通うなど、しなくてもいい苦労をしている子どもたち。会場となった体育館は、小学校の校長先生のアイディアで、オレンジ色の温かみを感じる照明のなか、演奏者の左右には、写真のスライドと、イタリア人画家から贈られた大きな絵。あまりに素敵なセットに驚きました。参加は学級ごとの判断となり、小学生、中学生、先生方、お子さんを亡くしたお父さんも聴いてくださいました。 前夜の公演出演の4人で訪問する予定でしたが、水谷さんの都合がつかなかったため、地元出身のヴァイオリニスト、常光今日子さんに賛助出演していただきました。4人ともアウトリーチにも慣れている演奏家で、各楽器解説も入れながら、弦楽三重奏、チェロ独奏、ヴィオラとチェロの二重奏、そして最後の名曲と言われる2曲は、オーボエの蠣崎さんがこの4人編成のために特別に編曲してくださった楽曲、楽器編成を変えながら約1時間、内容の濃いプログラムとなりました。
丸山さんたちの訪問演奏は、気取らないカジュアルな服装で行います。そして子どもたちに、「もっとみんな近くにおいでよ」堅苦しくないお決まりのスタイルが和みます。演奏や楽器の説明に聴き入る子どもたち。取材記者の方から、「あの一番前の男の子はお父さんを亡くしていて、いつもはやんちゃだけど一生懸命聴いている。あの子があんなに喜んでくれて本当によかった」。この学校の事をよく知る方ならではのエピソード。また、子どもたちの代表数人が、出演者の紹介や、お礼の言葉等、一生懸命にお話してくれました。前もって、花束などのお気遣いはなさらないようお願いしていましたが、出演者とスタッフにフラワーアレンジの花かごをプレゼントしていただきました。校長先生はこうおっしゃいます。「支援してくださった皆様への御礼は、尽くすものだと自分にも言い聞かせて、子どもたちにもそう教えたかったからです」。素晴らしい校長先生のもと、大人でも頭が下がるほど礼儀正しい子どもたちの姿に心を打たれました。子どもたちの未来が幸せに切り開かれますように。
年4回開催 Vol.2
第4回「ヴィルタス・クヮルテットいわき定期演奏会」
- 実施日時
- 2014年2月16日(日)15:00開演
- 実施場所
- いわき芸術文化交流館アリオス 音楽小ホール
- プログラム
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第1番 ヘ長調 op.18-1
バルトーク:弦楽四重奏曲 第4番 Sz.85
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 op.130
- 出演
-
ヴィルタス・クヮルテット:
三上亮・水谷晃(ヴァイオリン)、馬渕昌子(ヴィオラ)、丸山泰雄(チェロ)
主催者からのレポートをお届けします。
この日はサントリー芸術財団より3名の皆様に来訪いただき、「第2回ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」記念盾の受賞式が行われました。今回の栄誉に、あらためて心より感謝申し上げます。
さて、いわき室内楽協会の初年度最後となる第4回目の公演は、当協会ミュージック・ディレクター丸山泰雄さん率いる弦楽四重奏団ヴィルタス・クヮルテットの定期演奏会(いわきでは6年連続6回目)。4人の磨きぬかれたアンサンブルを堪能しました。弦楽四重奏曲のジャンルで最も重要な作曲家ベートーヴェンと、その100年後に現れた、弦楽四重奏の世界で不滅の業績を残したバルトークによる作品が演奏され、140名あまりにご来場いただいた客席は、大きな感動に包まれました。
いわき市は、一週間前には98年ぶりの大雪となり残雪もありましたが、この二日前の各地の大雪の際、いわき市は雨となり、市内の皆様に影響はありませんでした。
しかし市外からのお客様に欠席が相次いだり、また出演者も、二日前の東京公演の夜に大雪となり、朝方帰宅したメンバーも。さらに東京からいわきへの移動では、常磐線強風の影響により8時間以上。その疲れも見せずに演奏に集中する姿に感動すら覚えました。
終演後には、いわき室内楽協会の会員とヴィルタス・クヮルテットのメンバーによる親睦会も開かれ、和やかなひと時の中で、丸山さんによるサプライズ演奏(コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタより第3楽章)もあり、ご出席の皆さんも大満足の一日となりました。
<訪問演奏>
- 実施日時
- 2014年2月17日(月)10:30開演/13:30開演
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- 実施場所
- いわき市立 平第一小学校 多目的室(6年生)
- いわき市立 泉北小学校 体育館(5年生・保護者)
- プログラム
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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第1番 ヘ長調 op.18-1
バルトーク:弦楽四重奏曲 第4番 Sz.85
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 op.130
- 出演
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ヴィルタス・クヮルテット
主催者からのレポートをお届けします。
コンサートの翌日、午前中にいわき市中心部に位置する平第一小学校、午後には南に下って、泉地区の泉北小学校にて訪問演奏が行われました。
平第一小学校では6年生約70名が、リーダーの丸山さんのお話で曲に対する理解を深めたあと、実際にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番と第13番からいくつかの楽章を鑑賞しました。泉北小学校ではPTAの主催で、5年生約150名とその保護者の方たちが演奏を鑑賞。約50分の、中身の濃いプログラムでしたが、どちらの学校でも子どもたちの真剣な眼差しがとても印象的でした。
年4回開催 Vol.3
第5回「弦楽六重奏の夕べ」
- 実施日時
- 2014年6月28日(土)19:00開演
- 実施場所
- いわき芸術文化交流館アリオス 音楽小ホール
- プログラム
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ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 op.18
チャイコフスキー:弦楽六重奏曲 ニ短調 op.70「フィレンツェの思い出」
- 出演
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三上亮、戸上眞里(ヴァイオリン)、馬渕昌子、ジェームズ・ハースタット(ヴィオラ)、
丸山泰雄、室野良史(チェロ)
主催者からのレポートをお届けします。
いわき室内楽協会、2014年度最初となる第5回公演は、弦楽器の音色を最大限に楽しめる「弦楽六重奏」の名曲を特集したものです。ミュージック・ディレクター丸山泰雄さんが選抜したメンバーによって、ある時は繊細な室内楽、そしてある時は豪快なオーケストラ・サウンドにも匹敵する豪華なアンサンブルが繰り広げられました。
今回のプログラムは、映画でも使われて一躍有名になった第2楽章を含む、ブラームスが20代で作り上げた名作に、ほぼ同時代の“ライバル”作曲家であるチャイコフスキーが、晩年に書き上げた力作を組み合わせたもの。ブラームスの美しい旋律に負けずとも劣らないチャイコフスキーの「アダージョ」に聴き惚れるひと時でした。
さらにアンコールでは、この日のために特別に用意してくれた、日本の佳曲「赤とんぼ」を素敵な和声感に包まれた編曲で演奏。心に染み入る美しい調べに、会場では涙を流す人も。弦楽六重奏という贅沢な室内楽コンサートは、120名余りのお客様の拍手喝采で幕を閉じました。次回は9月23日「フルートと弦の出会い」。
年4回開催 Vol.4
第6回「フルートと弦の出会い」
- 実施日時
- 2014年9月23日(火・祝)15:00開演
- 実施場所
- いわき芸術文化交流館アリオス 音楽小ホール
- プログラム
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ロッシーニ:フルート四重奏曲 第1番 ト長調
シューベルト:弦楽三重奏曲 第2番 変ロ長調 D.581
ベートーヴェン:弦楽三重奏曲 第4番 ハ短調 op.9-3
モーツァルト:フルート四重奏曲 第1番 ニ長調 K.285
- 出演
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小池郁江(フルート)、水谷 晃(ヴァイオリン)、馬渕昌子(ヴィオラ)、丸山泰雄(チェロ)
主催者からのレポートをお届けします。
いわき室内楽協会第6回公演は、爽やかな音色のフルートと、ヴィルタス・クヮルテットのメンバーによる艶やかな弦楽器の音色が融け合い、極上の響きを醸し出すコンサートとなりました。息のあった3人の弦楽三重奏、そしてフルート四重奏。丸山泰雄さんが最も信頼するフルート奏者、小池郁江さんの演奏は、やわらかく清々しく、それでいて凛として、その音色に芳醇な弦楽器が絡み合い、モーツァルトのフルート四重奏曲は極上でした。さらにアンコールにもモーツァルトの別のフルート四重奏曲を演奏、集まった110名余りの皆様とともに素敵な音楽のひとときを分かち合いました。
今回で、第2回ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞として助成いただいた一年間、計4回のコンサートが終了となります。市内の学校への訪問演奏は曜日の関係や出演者のスケジュールもあり前半の2回しか叶いませんでしたが、今後もできる限り子どもたちへの訪問演奏活動も続けたいと思います。
いわき室内楽協会はこれからも「いわきで最高水準のクラシック音楽を」と掲げ、東京でも羨むようなプログラムをいわきで展開してまいります。地域の皆様のために。
最後に、財団関係者の皆様に心より御礼申し上げます。一年間ありがとうございました。