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盛岡バッハ・カンタータ・フェライン「ドイツ・レクイエム演奏会」

  • 実施日時
    2013年11月4日(祝)15:00開演
  • 実施場所
    盛岡市民文化ホール(マリオス)大ホール
  • プログラム

    ~ピアノ2台の伴奏による~ドイツ・レクイエム演奏会

    <1部>

    H.シュッツ:『宗教的合唱曲集』より
    「涙と共に種を撒く人は」SWV378
    「今から後、主のもとに死ぬ人々は幸せである」SWV391
    「これほどに神は世を愛しました」SWV380

    J.S.バッハ:『カンタータ68番』より「イエスを信じるもの、その人は裁かれません」
    『カンタータ102番』より「主よ、あなたの目は信仰を顧みます!」BWV102-1

    <2部>

    J.ブラームス:『ドイツ・レクイエム』Op.45

  • 出演

    佐々木正利(指揮)、村元彩夏(ソプラノ)、小原一穂(バリトン)、平井良子、東浦綾郁(ピアノ)、盛岡バッハ・カンタータ・フェライン、仙台宗教音楽合唱団

主催者からのレポートをお届けします。
盛岡バッハ・カンタータ・フェライン(以下、フェライン)は長年の盟友である仙台宗教音楽合唱団(以下、宗音)と合同で「ドイツ・レクイエム」演奏会を開催しました。両合唱団から合わせて約150名がステージ上で熱唱しました。演奏会の主催はフェラインが担当しました。
フェラインは1977年に「カンタータを歌う会」として盛岡に発足し、主にJ.S.バッハの作品を中心としたドイツ・バロック合唱曲の研究を行ってきました。一方、宗音は1967年の創立以来、一貫して「宗教音楽」、特にドイツ・バロック期の宗教合唱曲を中心に据えて活動してきました。フェライン及び宗音とも常任指揮者に佐々木正利氏を迎えて活動しており、従来から交流が活発で、深い信頼関係を構築して今日に至っています。
本演奏会のメインステージを飾る「ドイツ・レクイエム」はドイツの作曲家J.ブラームスがM.ルター訳のドイツ語聖書からテキストを歌詞として選び作曲されたものです。誰でも避けて通ることができない「死」を念頭におきつつ、今を生きている人間の苦悩、はかなさ及び忍耐への共感、さらにそれらの先にある慰めや救いの確信がこの曲で高らかに歌われています。「傷つき、悲しんでいる人々にそっと寄り添う」ような温かさがこの曲に満ちているように思います。
本演奏会を迎えるまでにはいろいろなことがありました。ドイツ・レクイエムを演奏する構想は数年前からあり、当初は2011年に両合唱団も参加を予定していたドイツ演奏旅行において演奏することを目論んでいましたが、このときは条件面で折り合いませんでした。このときから、ドイツ・レクイエムはいつか演奏したいと構想を温める曲になりました。
2011年3月11日東日本大震災。それは両合唱団の活動にも大きな影響を与えました。合唱団員の中には津波で親族・知人、財産を失った会員、間一髪で津波から逃れた会員もいました。震災後に発生した物資不足には随分悩まされました。2011年5月に予定していたドイツ演奏旅行も生活再建が優先との雰囲気の中、泣く泣く断念しました。しかし、毎週の練習(通常練習)だけは集まれるメンバーだけでも集まろうということで震災後も継続しました。「練習で顔を合わせ、共に歌う」・・・震災後、この当たり前のことができることをどれほど感謝したことでしょうか。練習後は互いの無事を確認する場となりました。震災当時沿岸に住んでいたある会員は救援が来るまでの数日間、島で子供たちを守りつつ過ごした時の様子を話してくれました。その様子を見て「毎週の練習は会員が集まるきっかけになっている」と練習を継続して本当に良かったと思わずにはいられませんでした。また、震災後、世界的バッハ演奏家H.ヴィンシャーマン先生をはじめ多くの方から励ましのお言葉を頂きました。ドイツ演奏旅行でお世話になるはずだった受け入れ先の合唱団(コレギウム・ヴォカーレ、ギュンツブルグ)は義捐金を送金して下さいました。あの震災は私たちの生活だけでなく人生観も大きく変えました。しかし、両合唱団とも震災後に多くの方々の祈りと励ましに後押しされ、通常練習だけは続けたことで、歌う仲間との繋がりの尊さを実感し、絆を深くして徐々に日常を取り戻していったように感じます。

2年後の2013年、両合唱団から多くの会員が参加して、震災直後に断念したドイツ演奏旅行を実施し、震災直後にドイツの合唱団から頂いた支援に対する謝意を表すことができました。本日の演奏会はその帰朝演奏会として企画したものです。帰朝演奏会では両合唱団が同じステージで演奏できる曲として2台のピアノによる「ドイツ・レクイエム」を選曲し、盛岡及び仙台を互いに行き来して練習を積み重ねました。練習の過程で双方の考えの違いが浮き上がることは何度かありましたが、双方とも長年築き上げてきた信頼の上に立って、粘り強く話し合いを重ねて演奏会開催に無事こぎ着けました。演奏会直前、第2回「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」の受賞対象企画に選ばれるという大きな栄誉を頂きました。演奏会の機運が一気に盛り上がりました。

そしてついに来た演奏会当日。天気にも恵まれ、数十人のお客様が開場前から並んでいました。第1部ではH.シュッツ及びJ.S.バッハの作品、第2部ではJ.ブラームス作曲「ドイツ・レクイエム」を演奏しました。第1部の曲は少人数での演奏が相応しいことからフェライン単独で演奏し、第2部は合同で演奏しました。演奏会には748人の聴衆が来場し、両合唱団の演奏に感動と大きな拍手をおくってくれました。感動して涙ぐんでいる方もいたそうです。演奏会後に頂いたアンケートには好意的な感想が多く寄せられ、演奏会を感動で包んで締めくくることができました。まさに「Selig sind(幸いなるかな)」ひとときでした。