2016年12月17日(土) 11:00開演(かいえん)(10:30開場)
「炎(ほのお)のハーモニー」
<出演(しゅつえん)>
指揮(しき):飯森範親(いいもりのりちか)
ソプラノ:佐藤優子(さとうゆうこ)
司会(しかい):坪井直樹(つぼいなおき)(テレビ朝日アナウンサー)
オーケストラ:東京交響(こうきょう)楽団(がくだん)
<曲目>
ファリャ: 『恋(こい)は魔術師(まじゅつし)』から「火祭りの踊(おど)り」
モーツァルト: オペラ『魔笛(まてき)』から 夜の女王のアリア「復讐(ふくしゅう)の炎は地獄(じごく)のように我(わ)が心に燃(も)え」
モーツァルト:交響曲第40番から 第4楽章
チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割(わ)り人形』から 行進曲、花のワルツ
ストラヴィンスキー:バレエ組曲『火の鳥』抜粋(ばっすい)、他
12月の公演は、こども定期演奏会が今回で3度目となる飯森範親さんです。「炎のハーモニー」というテーマで行うプログラムについて飯森さんにくわしくお話しを聞いたよ。
***************************************************************:
・・・・・・今回は「炎のハーモニー」というタイトルなのですね。
炎にはいろいろな意味があります。心の中の怒(いか)りの炎というのもあるし、『火の鳥』のような正義(せいぎ)の象徴(しょうちょう)としての炎もあります。
・・・・・・そのストラヴィンスキーの『火の鳥』(抜粋)を演奏されます。
火の鳥は、平和の象徴です。愛(あい)と友情(ゆうじょう)を持ち、争(あらそ)いを好まない炎。『火の鳥』は、大学4年生のとき東京国際(こくさい)指揮者コンクールの本選で指揮をして、30歳のときモスクワ放送交響楽団と全曲をCD録音(ろくおん)するなど、自分にとって、節目節目(ふしめふしめ)で演奏してきた重要(じゅうよう)な作品です。母校(高校)の吹奏楽(すいそうがく)部で、自分で編曲(へんきょく)した吹奏楽版を指揮したこともあります。
この作品の大きな魅力(みりょく)は、楽器(がっき)のあつかい方が見事に天才的(てき)なこと。いくつかの版(はん)がありますが、今回演奏する1919年版(ばん)は、まったくむだのない作品に仕上がっていて、必要(ひつよう)な音をこの楽器しかないという楽器で奏でている。そしてこれだけのドラマを色彩(しきさい)ゆたかに描いています。
・・・・・・はじめてオーケストラを聴(き)く人にも、様々な楽器の使い方の素晴らしさを聴いてほしいということですね。
化け物のさけびのようなトロンボーン、耳をつんざく悲鳴のようなトランペットのミュートの音、心臓(しんぞう)の鼓動(こどう)を示すティンパニ、さまざまな描写(びょうしゃ)が見事にいろいろな楽器で演奏されるので、コンサートではその話にも触れたいですね。とにかく、フィナーレの遠くから聞こえてくるホルンの美しいソロはぜひ聴いてもらいたいなと思います。
・・・・・・ファリャの『恋は魔術師』からは「火祭りの踊り」です。
『恋は魔術師』は、昨年、いずみシンフォニエッタで全曲を演奏したばかりです。「火祭りの踊り」は、ろうそくのともされた暗い部屋で、女性(じょせい)がたいまつのようなものを持って踊っているふんいきです。
・・・・・・モーツァルトのオペラ『魔笛』から夜の女王のアリアは、怒りの炎ですね。
オペラ『魔笛』から夜の女王のアリアは、ザラストロへの、パミーナへの、今の自分の立場への、夜の女王の複雑(ふくざつ)な思いがアリアにこめられています。歌っていただく佐藤優子さんはサントリーホール オペラ・アカデミーの出身です。自分の意に反することへの怒りが短いアリアに凝縮(ぎょうしゅく)されています。そして、それが交響曲第40番にうまくつながります。
・・・・・・モーツァルトの「交響曲第40番」はどのような炎なのでしょうか?
交響曲第40番は、モーツァルトのたった2曲しかない短調の交響曲の一つです。大ト短調交響曲といわれます。ウィーンでモーツァルトの人気にかげりの見えた時期の作品であり、かれの心の中の葛藤(かっとう)や、見返してやるという怒りの炎が感じられます。
・・・・・・どうして、よく知られている第1楽章ではなく、第4楽章を演奏されるのですか?
第4楽章は当時の前衛(ぜんえい)のような音楽です。悪魔(あくま)に取りつかれたようで常軌(じょうき)を逸(いっ)しています。つねに心は安定せず、突然(とつぜん)、大きな音で爆発(ばくはつ)して火がつきます。それが第1楽章よりもはっきりと表現(ひょうげん)されています。『なぜ自分が理解(りかい)されないのか』という葛藤が怒りの火として表されています。炎というタイトルはついていませんが、そういう要素(ようそ)があり、それを演奏で出したいと思っています。今だって、学校や友だちに理解されないというジレンマをかかえるこどもたちがいっぱいいるわけですよ。そういう思いと重ねてもいいです。
この10年、ぼくは、モーツァルトやハイドンなど古典派(こてんは)の音楽をかなり演奏してきました。山形交響楽団では、モーツァルトの作品を100曲以上取り上げて、アマデウスとは相当友だちになりましたよ。こどもたちにも古典派の音楽をきちっと聴いてもらいたいと思い、18世紀の作品のなかで炎というテーマを考えた時、この2曲が思いうかびました。
・・・・・・『くるみ割(わ)り人形』の「花のワルツ」はこども奏者(そうしゃ)との共演ですね。
『くるみ割り人形』はクリスマスの頃、ろうそくのあかりで見える幻想的(げんそうてき)な世界というイメージ。初演(しょえん)が、この「こども定期演奏会」の公演日とほとんど同じ(1892年)12月18日なのです。ロシア音楽は、比較的(ひかくてき)、こどもでも演奏しやすいと思います。リズミックなところ、メロディックなライン、それらの対比(たいひ)を、プロのオーケストラの人がどう身体で感じているのか、そばで体感してほしいです。
・・・・・・さいごにこどもたちにメッセージを。
こども定期演奏会では、みなに聴いてほしい曲を常に取り上げています。4回を通して聴くことで、東京交響楽団やサントリーホールの思いも感じてもらえると思うので、ぜひ、通して聴いてもらいたいですね。
「オーケストラの様々(さまざま)な楽器の素晴(すば)らしさを聴いてほしい」山田治生(はるお)(音楽評論(ひょうろん)家)インタビューより
***************************************************************:
また、開演(かいえん)前の10時40分からは、東京交響楽団のコンサートマスターのグレブ・ニキティンさんが、オーケストラや楽器についてわかりやすくお話してくれる「プレトーク」(約(やく)10分間)が始まります。こちらもお楽しみに。