2025.02.10
対象社員は全4万人! 企業理念の浸透を図るサントリー流インターナルコミュニケーション術

サントリーでは創業以来、数々のブランドを世に送り出し、さまざまな分野に挑戦し続けてきました。「やってみなはれ」をはじめとするサントリーの社風はどのように育まれ、醸成されてきたのでしょうか。サントリーグループ全体のインナーコミュニケーション(組織力を強めるために行われる社内コミュニケーション)を一手に担う、サントリーホールディングス株式会社 コーポレートブランド戦略部の金澤 男(かなざわ だん)さんにお話を伺いました。
弱小校から花形ラグビー部へ。大学時代の気持ちをそのままに
「ゴールの姿を浮かべ、柔軟に、愚直に」。
金澤 男さんがこの仕事への基本姿勢を培ったのは、ラグビー選手として過ごした学生時代。早稲田大学ラグビー部で、多様な選手が集まり、互いを認め合いながら日本一を目指す経験をしたことが、今の仕事に活きています。
金澤さん:早稲田のラグビー部は、推薦入学の強豪校出身者や付属校、そして私のように浪人して一般受験で入った弱小高校の選手まで、さまざまなバックグラウンドの選手が集まります。その多様性を活かしながら勝利を目指す。このカルチャーに惚れて早稲田大学を選びました。
入部当初は最下層である5軍からのスタート。ケガに苦しみながらも諦めることなく練習を重ね、4年次には念願の1軍でプレーできるまでに成長しました。目標に向かって、達成のプロセスを考え、周囲に左右されず努力を愚直に積み重ねること。そしてチームメイトと共通のビジョンやゴールイメージを掲げ、“本音”を言える信頼関係を築くことの大切さを学べた、貴重な経験になりました。
早稲田大学ラグビー部時代の金澤さん。ポジションはセンターでプレー。
2014年に入社後、6年間は北海道の小樽、千歳、苫小牧、室蘭、伊達、そして札幌(すすきの)エリアで営業職として腕を磨きました。北海道は地元競合メーカーが強く、サントリーの商品は苦戦する市場です。「普通では売れない。だからこそ、自分が介在する意味を考え、お客様目線に立って提案すること」を徹底しました。
金澤さん:大学時代に5軍から1軍まで這い上がった経験や北海道時代の逆境が、現在でもめげずに踏ん張る力を育ててくれたのかもしれませんね(笑)。
これまでの経験を生かして企業理念浸透にチャレンジ
金澤さんは、2020年にコーポレートブランド戦略部に異動。現在は企業理念の社内浸透をはじめ、グループ全体へのインターナルコミュニケーションを担当しています。全体戦略を組み立てることから、活動の推進、基盤整備など、仕事は多岐にわたります。
金澤さん:サントリーのコーポレートブランディングをしていくうえで、重要なポイントのひとつは、社員への企業理念浸透です。私はグループ全体のインターナルコミュニケーションを担当しており、社員一人ひとりが自分なりに企業理念の理解を深められるよう、さまざまな仕組みづくりに取り組んでいます。
「サントリーグループ全体のことを広く深く、知ることができました」と金澤さん。サントリーの歴史やグループ会社の取り組みなども含めてサントリーのことならなんでもござれ。
サントリーの企業理念の理解を深める活動の核となるのが「サントリー理念月間」です。サントリーグループでは、2月1日の創立記念日を皮切りとした1ヵ月間に、グループ全体への企業理念浸透のためにさまざまな取り組みを行っています。
金澤さん:社員一人ひとりが、サントリーらしさを自分なりに解釈する機会にしたいと、あの手、この手を考えています。理念をただ暗記してほしいのではなく、自分の価値観と重ね合わせて、自分なりの捉え方を見つけてほしいと考えています。
この1ヵ月間を通して、世界中のサントリー社員一人ひとりが、サントリーが大切にしている企業理念を自分なりに解釈し、理解を深めることを目的としています。
金澤さん:勉強形式で、企業理念を言葉として学んでも、どうしても自身の日々の仕事や生活とは遠く、自分事として捉えるのは難しくなります。
そこで、自身の直属の役員やマネジャーなど身近な人から、企業理念にまつわる経験やエピソードを生の言葉で語ってもらう機会を設け、企業理念との距離を近くするといった工夫をしています。
また、チームごとに集まって、企業理念をフックにしたディスカッションも行なっています。企業理念が自分の仕事とどう結びついているのか、そのポイントを自分なりに考えたうえで、部署ごとに話し合うことで、日々の行動と企業理念がつながっていくことを目指しました。
そのほかにユニークな施策も行っています。創業者・鳥井 信治郎が通った屋台のうどんを社員食堂で再現し、「創業家が通った屋台の“うろん”」という特別メニューとして取り入れました。
創業者・鳥井 信治郎の生涯を描いた小説『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』(伊集院 静著)に登場するうどんをモチーフとしたメニューです。
サントリー理念月間中の食堂コラボ。デザインチームと作成したポスター。
金澤さん:「なんで、『サントリー理念月間』にうどん?」と、疑問を感じる社員も多いと思います。食堂内で創業者とうどんのエピソードをポスターで紹介し、そのうどんを食べながら、「創業者が夜中食べたんだな」「考えが煮詰まって、気分転換に食べたのかな」などと思いを馳せてもらいたいと思っています。
物語のなかで、鳥井 信治郎が「お揚げが沈んでるがな」とコメントしたきつねうどんを再現するために「油揚げ」をうどんの下に隠したり、器に創業者の名言を刻印したりするなど、真面目一辺倒ではなく、ちょっとした“遊び心”を企業理念に重ね合わせて届けています。
金澤さん:うどん以外の施策でも、細部にまでエピソードやストーリーをていねいに込めること。そして、それを受け取った側にも認識されるように、きちんと施策全体を設計すること。でも、遊び心を忘れないこと。こういった一つひとつの地道なこだわりと、考動を積み重ねていくことが、サントリーらしさだと思っています。
海外のサントリアンとともに世界に広がる企業理念
昨年のサントリー理念月間では、「入社したときのことを思い出した」「働く仲間の思いを知ってもっと頑張ろうと思った」といった社員の声も聞かれたといいます。この取り組みは海外含めたグループ全体で行っています。
金澤さん:私の上司、先輩社員とともに、海外のグループ企業に対しても同じようにサントリーの企業理念の浸透を図っています。現地社員にサントリーカルチャーが浸透していくには、現地の意見を汲み取り、尊重することが重要だと思っています。
いつも上司や先輩の背中を見て、各国にいる企業理念浸透の推進リーダーたちとワンチームになっていく様子を学び、推進しています。
企業理念は海外のグループ会社にも訴求。研修の一環で他国のサントリアンたちもサントリー創業の地・大阪に訪れた。
海外の企業理念浸透推進リーダーと年に一度開催しているFace to Face会議「One Suntory Summit」の様子。企業理念浸透の事例やアイデアについて共有し合った。
金澤さん:一見、企業理念というと少し距離を感じるかもしれません。でも、仕事との結びつきを考えたり、さらには自分自身の価値観との重なりを考えたりすることで、実は企業理念が身近なものだと感じてもらうことを目指しています。会社で過ごす時間のなかで、少しでもサントリーで働く社員一人ひとりが自分らしさを発揮できる。そんな会社であり続けられるような仕組みをつくっていきたいです。
以前のように自身が営業担当として製品をセールスしているわけではないが、「サントリーらしさを継承すること」が製品の一滴につながる、と金澤さん。
金澤さん:大学時代のラグビーでの経験では、ゴールに向けて、自分の役割・価値を認識して個の力を高めることや、「ワンチーム」でひとつの方向に向かっていくことの大切さを経験できたと感じています。
企業としてもまた、社員一人ひとりが自分なりに企業理念を理解することで「ワンチーム」となり、ひとつの目標へ向かっていける。世界中のサントリーグループ全体で“One Suntory, One Family”を育むためにも、いろいろな種を蒔いていきたいですね。
※内容・社員の所属は取材当時のものです。

金澤 男Dan Kanazawa
サントリーホールディングス株式会社
コーポレートブランド戦略部
1990年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部を卒業後、2014年4月にサントリー株式会社に入社。北海道支社の業務用営業部門に配属後、2020年4月よりサントリーホールディングス株式会社 コーポレートブランド戦略部へ異動。社外向けコーポレートブランディングを経て、現在は社内向け(インターナル)コーポレートブランディングを担当。