2024.10.29
サントリーが20年続ける「水育」って何? 次世代環境教育を大人が体験してみた

サステナビリティ経営を目指すサントリーでは、子どもたちが自然の素晴らしさを感じ、水や、水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引きつぐために何ができるのかを考える次世代環境教育として、2004年から「水育(みずいく)」をスタート。参加者は国内で累計25万人以上を数えます。そして、2015年からは海外では初となるベトナムを皮切りに、現在では日本も含めて8ヵ国で展開しています。そんな「水育」に込めたサントリーの想いを実際の水育プログラムのレポートとともにご紹介します。
「水と生きる」を体現する「天然水の森」の広がり
サントリーのコーポレートメッセージ「水と生きるサントリー」。この言葉からもわかるように、サントリーには、自然と水の恵みに生かされる企業として、貴重な水資源を守り、次世代につないでいくという強い決意があります。
サントリーが管理・保全する「天然水の森」は全国に26ヵ所(2024年11月時点)
サントリーが目指す「サステナビリティ経営」においても、「水のサステナビリティの実現」は最上位の目標。なかでも「水」への取り組みを象徴するのが、全国16都府県26ヵ所、約12,000 ha(2024年11月時点)にも広がる「サントリー天然水の森」です。
サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 天然水の森グループ スペシャリストの市田 智之さんは、「天然水の森」について次のように語ります。
サステナビリティ経営推進本部 天然水の森グループ スペシャリストの市田 智之さん
「水や農作物などの自然の恵みが、私たちの企業活動を支えています。
良質な地下水はサントリーの生命線で、良い水がなければビールや清涼飲料水、ウイスキーもつくることができません。良質な地下水を育むために取り組んでいるのが『天然水の森』活動です。
地下水ができるには約20年以上もの時間がかかります。それだけの長い時間をかけて豊かな水を育むのが、森の『ふかふかの土』です。森の木々を手入れすることで、日光が地面に届くようになります。
そうすると下草や低い木々が生え、生き物たちが生息。地面は『ふかふかのやわらかい土』となり、良質な地下水を生み出します」(市田さん)
次世代に水の大切さを伝える「水育」プログラム
天然水の森づくりと並行して、サントリーが注力してきたのが「水育」です。
「豊かな水を育む森をつくるだけでなく、『次世代に水の大切さを伝える』ことも私たちの企業使命です。その強い想いから、20年という長い年月をかけて『水育』に取り組んできました」(市田さん)
「水育」とは、サントリー独自で展開する次世代環境教育です。その目的は、子どもたちが自然のすばらしさを感じ、水や森の大切さに気づくこと。そこから、豊かな森や水を未来につなぐために、自分たちにできることを考えるきっかけにしてもらおうというものです。
「水育」には、親子向けの自然体験プログラム「森と水の学校」と、「水育」講師が小学校に出向いて授業をする「出張授業」のふたつがあります。いずれも体験を交えながら、【水を育む森を守る→水を大切に使う→水をきれいにして自然に還す】という水循環の大切さを伝える内容となっています。
大人の「水育」がつながった20年目の再会
「森と水の学校」は本来、親子が対象ですが、2024年は「水育」20周年を記念して、大人向けの「水育」を実施。また、サントリーファンコミュニティ「マル・デ・シャイン」 の企画としても、大人向けの「森と水の学校」を白州(山梨県北杜市)で行いました。
内容は、子どもたち向けと同じで、最初に「森と水の関係性」や「水育」の意義・目的についてレクチャーを受けます。その後、ガイドに案内してもらいながら、グループごとに森の散策へ。
森に生い茂る木々を見上げつつ、虫や動物たちの気配、ふかふかの土の感触を確かめながら、森の豊かさを体験。模型を使った森と土、水の関係のデモンストレーションもあり、改めて森の豊かさが良質な水に欠かせないことを学びます。
今回は首都圏だけでなく、全国から「マル・デ・シャイン」の皆さんが参加。メンバーのなかには、小学生のときに「森と水の学校 白州校」に参加したことがあるという、Sさん、Yさんのお二人もいました。
今回のイベントに参加したYさん(左)とSさん(右)。「森と水の学校」に小学生以来の参加。
「今回、大人向けの『水育』があると知り、もう一度、体験したいと参加しました。前回は、小学5年生で、初めて親元を離れて参加した宿泊イベントだったので、とても印象に残っています。当時のイベントでもらったしおりや資料もまだ大切に保管しているほどです。
水の飲み比べなどさまざまな体験を通して、小学生ながらも水の大切さについて深く考えるようになりました。『森と水の学校』に再訪して、子ども時代の体験が大人になってもずっと心に残っていることに改めて気づかされました」(Sさん)
Sさんが大切に保管していた当時の資料。20年の歩みはきちんと参加者の心に届いていた。
「私は今、広島で小学校の教員をしているのですが、次は子どもたちをぜひ連れてきたいですね。小学生のときに経験したことでも、こうして大人になるまで記憶に残る体験はそう多くはありません。大人も『森と水の学校』にいつでも参加できると、もっといいのではないかと思いました」(Yさん)
お二人のように、子ども時代に「水育」を受けて、大人になってからも「豊かな森と水」に関心を寄せてくれる人たちが数多くいます。
「子どものときに『森と水の学校』に参加したことがあると言われたり、水育の参加者が大人になってから運営スタッフとしてかかわってくれたりするケースもあります。そういう裾野の広がりを目の当たりにすると、20年地道に続けてきた『水育』の成果が実を結んでいると実感でき、本当にうれしいです」(市田さん)
当時、引率を担当していた方とも感動の再会。
グローバル、オンラインとますます広がる「水育」の輪
20年前に熊本県阿蘇の「天然水の森」からスタートした「水育」も、現在では大きな広がりを見せています。「森と水の学校」は白州校(山梨)、北アルプス校(長野)、奥大山校(鳥取)、阿蘇校(熊本)の4校を展開。
また、2024年度の「出張授業」は、全国260校で実施。学校との連携を深めながら、年々授業内容をアップデートしています。特にオンラインの導入によって、全国各地からより参加しやすくなっています。
フランスの水育の様子。海外でも「mizuiku」という名称で実施している。
「水育」は国内だけにとどまりません。ベトナム、タイ、フランス、中国、スペイン、イギリス、ニュージーランドの、日本を含め8ヵ国でグローバルに展開しており、累計58万人以上が参加しています。
「海外ではその国の事情に合わせた内容にアレンジした『水育』を行っています。『水の循環の大切さ』をベースにしながら、国によっては『安心・安全な水』について伝えるケースもあります。
2024年は20周年イベントとして、大人の『水育』を実施しましたが、非常に大きな反響がありました。それを踏まえて、今後は大人向けの『水育』も展開することを考えていきたいですね」(市田さん)
もともとは営業部署にいた市田さん。現在は天然水の森グループスペシャリストとして「天然水の森」プロジェクトを推進している。
「天然水の森」は、地域との共創も大きなテーマです。
「20年前、『天然水の森』をスタートしたときも、地域の方々とていねいに話し合いを重ねて、私たちのやろうとしていることを理解してもらうところから始めました。森づくりで生じる間伐材は地域の収入源にするなどして、地域経済にも貢献しつつ、ともに森づくりに取り組んでいます。
ほかにもさまざまな専門家の協力を得るなど、多くのステークホルダーと力を合わせて豊かな森を育ててきました。このような共創の取り組みは今後も積極的に行っていくつもりです」(市田さん)
直近では、群馬県の県立勢多農林高校の学校林と協定を締結。今後、生徒たちとともに森づくりを進めていきたいと考えています。
このようにサントリーの「天然水の森」や「水育」を核に、教育現場や地域、取引先、そして一般の方にも裾野を広げていくこと。それが豊かな森と水に支えられた、私たちの未来へと続いていくのです。
※内容・社員の所属は取材当時のものです。