2023.11.13
ペットボトルはゴミじゃない! 未来に繋がる「水平リサイクル」の輪

サントリーでは2021年より「#素晴らしい過去になろう」というメッセージを発信し、2022年10月からは稲垣 吾郎さん、草彅 剛さん、香取 慎吾さんと「リサイクルの日(10月20日)」にちなんだプロモーションを展開しています。今年の舞台は「自動販売機」。「なぜ自動販売機?」と思った方も多いかもしれませんが、サントリーでは自動販売機を中心に多くの社員がリサイクルに関わっています。

サントリーグループでは循環型かつ脱炭素社会への変革を強力に推進。「プラスチック基本方針」に基づき、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルをサステナブル素材(リサイクル素材あるいは植物由来素材など)に100%切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにすることを宣言。ペットボトルの100%サステナブル化を目指しています。
2011年からは「水平リサイクル」とも呼ばれる「ボトルtoボトル(BtoB)」に注力。ペットボトルから食品トレーやPET繊維などにリサイクルすると、最終的にそれらは焼却や埋め立て処分となり、リサイクルの輪が途切れてしまいます。
これに対して「ボトルtoボトル(BtoB)」水平リサイクルは、ペットボトルからペットボトルを作るため、リサイクルの輪が何度も循環します。
今回は、サントリーグループの一員であり、自動販売機事業をはじめ、お客様に飲料をお届けしているサントリービバレッジソリューション株式会社から、それぞれ異なる立場の3人の社員に「水平リサイクル」に対する想いを聞くことができました。
自販機の横にあるのは「ゴミ箱」ではなく「リサイクルボックス」
サントリーグループの自動販売機のルートセールスドライバーの西島 拓哉さんは、「#素晴らしい過去になろう」のCMで草彅 剛さんが着ていたものと同じユニフォームで、毎日自動販売機のドリンクの補充と飲み終わった容器の回収を行っています。
サントリービバレッジソリューション株式会社 首都圏営業本部 千葉・埼玉支社 さいたま中央支店の西島 拓哉さん
西島さん:私の仕事は、自動販売機を通じてサントリーの飲み物をおいしくお客様にお届けすることです。それとあわせて、お客様が飲まれたあとの空き容器を「資源」として回収することも重要な仕事です。皆さんは、街中の自動販売機の横にあるボックスを何と呼んでいますか? これは「ゴミ箱」ではなく「リサイクルボックス」です。
実際にリサイクルボックスから空き容器を回収している西島さんに、「水平リサイクル」を推進していくにあたり、お客様にお願いしたいことを尋ねてみました。
西島さん:まずは「しっかり飲みきっていただく」ということですね。おいしく飲んでいただきたいと想って商品を補充しているということもありますが、飲み残しがあると臭いの原因になったり、室内の場合は回収時に床を汚してしまったりする恐れもあります。
西島さん:もうひとつは、リサイクルボックスにペットボトルや缶などの空き容器以外の異物を入れないようにしていただきたいということです。鋭利なものは回収袋を破いてしまいますし、ガスの残ったスプレー缶などは破裂の恐れがあります。また、紙コップなどでリサイクルボックスの口をふさいでしまうと、あとの方がリサイクルボックスに入れることができず、リサイクルボックス周辺がゴミ捨て場のようになってしまいがちです。
このような飲み残しと異物は、私たちが回収するときに困るというだけでなく、「水平リサイクル」の障害にもなってしまいます。
法人のお客様に身近なサステナ活動を提案
オフィスビルや商業施設などにある自動販売機についてはどうでしょうか。サントリービバレッジソリューション株式会社で自動販売機の営業をはじめ、ソリューション提案を行う法人営業の辻川 寛隆さんにお話を聞いてみました。
サントリービバレッジソリューション株式会社 法人営業本部 東日本法人営業統括部 広域法人二部マネジャーの辻川 寛隆さん
辻川さん:サントリーでは自動販売機を設置するだけでなく、自動販売機に関連したさまざまなサービスを提供しています。最近、多くの法人様が興味を持たれているのがサステナビリティであり、社員の皆さんの環境意識醸成です。
辻川さん:そこで、私たちがオフィス等で推奨させていただいているのが、「(キャップとラベルを)はずす、(容器を)すすぐ、つぶす」という活動。この身近なところからできるペットボトルの分別活動、サステナビリティへのアクションに非常に多くの法人様に共感いただいております。
実際、サントリーのオフィス内には、下の写真のようなポスターが貼られており、「はずす、すすぐ、つぶす」を啓発。法人のお客様からも「このポスター原稿を譲ってほしい」と依頼されることも多くあります。
辻川さん:サントリーの法人営業では、ものづくりのこだわりや環境への取り組みをお伝えするために、天然水、ビール、ウイスキー、ワインなどの工場へお客様をご案内することがあります。
その一貫として、グループのリサイクル工場である「リサイクル・プラザJB」で実際にリサイクルの工程を見学して、「水平リサイクル」にとって何が重要かを体感していただくこともしています。飲料メーカーが自社でリサイクル工場を運営していることに皆さん驚かれますし、何よりサントリーの「水平リサイクル」に対する本気度をご理解いただけていると思います。
分ければ「資源」。混ぜればただの「ゴミ」
では、実際に容器リサイクルでは何が重要なのでしょうか。サントリーグループのリサイクル工場「リサイクル・プラザJB」で、見学者向けに解説を行っている遠藤 遥さんに教えてもらいました。
リサイクル・プラザJBの遠藤 遥さん
遠藤さん:「リサイクル・プラザJB」は、自動販売機で飲料を販売する事業者として、販売後に回収した飲料空容器を「自社でリサイクルできないか」と考え、設立されました。缶、ビン、ペットボトルの飲料空容器の中間処理を自社で行う業界初のシステムとして2003年5月に稼働、その後2015年にサントリーグループの一員となりました。
リサイクル・プラザJBに持ち込まれる回収物は1日約20トン。2022年度は、2,000トン超ものペットボトルのベール品(圧縮したかたまり)を次のリサイクル工程を担う工場へ出荷しています。
では、2030年の目標達成に向けて何が必要なのでしょうか。遠藤さんの答えはルートセールスドライバーの西島さんと同様に、お客様の分別に対する“あと一歩”の心遣いを強調します。
遠藤さん:まずは、飲み残しをなくしていただくことです。ペットボトルに残った液体が単なる飲み残しか、それとも危険な液体なのかは目視で判別できず、飲み残しがあるというだけで「水平リサイクル」の輪からはずれてしまいます。
外出先でボトルをすすぐことは難しくても、飲み残しなくリサイクルボックスに入れていただくだけでリサイクルの工程が円滑に進み、エネルギー負荷も減らせるのです。
次に、キャップをはずすことです。キャップがついていることで圧縮ができず、一度に運べるペットボトルの量が少なくなり、運搬時のCO2排出による負荷が大きくなってしまいます。
さらにラベルやキャップがそのままの状態で回収されたペットボトルは、分別のために別の工場でそれらを外す工程が必要となり、そのぶん、環境負荷が高まります。
ラベルやキャップがそのままの状態で回収されたペットボトル(左)
遠藤さん:そして、リサイクルボックス内に異物が混入していないことも重要です。リサイクル・プラザJBでは、人の目を使って缶・ビン・ペットボトル以外の異物が含まれていないかを細かくチェックしています。
遠藤さん:リサイクルボックスはゴミ箱ではありません。しかし、なかには刃物や電子タバコのカートリッジ、使用済み注射針の入ったペットボトルなどの危険物が含まれていることもあり、これらはすべてリサイクルの妨げになります。
最近では異物混入対策として、缶・ビン・ペットボトルだけを回収できるように、下から挿入するタイプのリサイクルボックスも登場しています。
遠藤さん:リサイクル・プラザJBでは、「水平リサイクル」の仕組みを広く知ってもらうために、多くの見学者を受け入れています。前述の辻川のような法人営業の担当者がアテンドし、社内の環境施策を進めたい企業のご担当者様も多数見学に訪れています(22年実績:見学者数約2,700名 ※オンライン見学含む)。
皆さん、自分の目でリサイクルの現場を目の当たりにすることで、改めて「分別」の大切さを再認識してくださいます。「見学後は、飲み終わったペットボトルがゴミではなく資源に見えるようになりました」というお言葉をいただいたときは本当に嬉しかったです。
取材中、遠藤さんが「分ければ資源、混ぜればゴミ」という言葉を何度も口にしていたのが印象的でした。
遠藤さん:リサイクルボックスの入口は、リサイクルの入口です。ここからリサイクルが始まっていることを、ぜひ多くの皆さんに知っていただきたいです。
できることから見直して実践することが、「#素晴らしい過去になろう」へと続く道になるはずです。
※内容・社員の所属は取材当時のものです。