2023.10.03
プレモルの美味しさを世界へ! 海外展開にかけた担当者の想い

「ザ・プレミアム・モルツ」を国内外のお客様に最高に美味しい状態で体験していただくため、世界9都市で同時展開した「The PREMIUM MALT’S HOUSE」。その経緯とサントリー独自の海外ビール戦略について、プロジェクトリーダーであるサントリー株式会社 ビールカンパニー 経営企画本部 海外戦略部の福島 顕法(ふくしま あきのり)さんに語ってもらいました。
日本産高品質にこだわるサントリーのビール海外戦略
「プレモルの世界観を一人でも多くのユーザーに伝えたい」との願いを込めて2023年2月28日、東京駅八重洲口にオープンした旗艦店「The PREMIUM MALT’S HOUSE」──常設店としてオープンした東京を皮切りに、海外でもニューヨーク、ロサンゼルス、ソウル、香港、台湾(台北・台中・高雄)、シドニー、シンガポールの世界9都市で、7月1日から8月18日までの期間限定で展開され、盛況のうちにプロジェクトを終えました。
同プロジェクトを進めるにあたって、「The PREMIUM MALT’S HOUSE」の海外戦略について福島さんはこう説明します。
福島さん:海外で戦うには「つくり」にも天然水などの「素材」にもとことんこだわっているサントリービールのフラッグシップ──世界最高峰を目指した「ザ・プレミアム・モルツ」で真っ向勝負をしたかった。
世界に向けてその品質を打ち出すことに意味があるのではないかと思いました。
海外の戦略において「ザ・プレミアム・モルツ」は「ビールよりもむしろウイスキーの戦略に近いかもしれない」と福島さんは言います。一体どういうことなのでしょう?
福島さん:本来のビールビジネスは「消費地に近い場所で大量につくってコストを下げてたくさん売る」という考えが王道のマーケティング戦略です。対して、プレモルは「日本で厳選した水を使い、時間と手間暇をかけてじっくりとつくられた高品質なビールをそのまま海外に輸出して販売する」という、例えるならウイスキービジネスに近い──本来のビールビジネスとはある意味 “真逆” な海外戦略を採っています。
効率の良い現地生産ではなく、日本でつくって輸出する戦略を採っているのは、どんな理由がありますか。
福島さん:「日本でつくる『ザ・プレミアム・モルツ』を海外のお客様にも美味しく楽しんでいただく」というスタンスは変えたくありませんでした。海外でつくると水などの素材や工場での製法が違うので、どうしてもまったく同じ味のビールは作れません。海外のお客様が飲んだプレモルが日本の中味と違ってがっかりしないように、効率よりも品質を優先することにしました。
海外スタッフの想いが一つになった「アンバサダーサミット」
「The PREMIUM MALT’S HOUSE」の海外展開に関しては、「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドに相応しい各国での立地の選定や交渉に難航したり、店舗設営に必要な機材や販促ツールが税関で留められ現地に届かなかったり……プロジェクト立ち上げ時の苦労話は尽きません。しかし、何よりも「現地の販売代理店と、各国でプレモルの品質啓発やブランド育成に携わってくれているプレモルアンバサダーたちが、どれだけ本気で『The PREMIUM MALT’S HOUSE』に取り組んでくれるか」が最大のポイントだった──そう福島さんは振り返ります。
福島さん:現地のアンバサダーたちに対して、リモートで「ポップアップバーを立ち上げることになりました。じゃあ頑張ってね」だけだと、誰も本気で動いてはくれません。
そこで、2023年の3月に「アンバサダーサミット」と銘打って、各国からプレモルアンバサダーたちを日本に招待し、改めて製品やマーケティングの説明をしたり、ビール工場に行って醸造家の話を聞いてもらったりして、サントリーのすべてを理解してもらうことに力を注ぎました。
すると、メンバーの間に「横のつながり=絆」が芽生えてきて……「プレモルハウスをみんなで盛り上げよう!」という雰囲気をつくることができたんです。
福島さん:開催期間中はアンバサダー同士のグループLINEで、
「素晴らしいイベントでした! プレモルワールドツアー2023を一緒に盛り上げていきましょう!」
「次はあなたの番だね! 遠くから応援しています!」
「ニューヨークのプレモルハウスの成功を祈っています!」
……と、言語の壁を越えてバトンを渡すように現状を報告し合うことも。「サミット」をきっかけに最強のチームワークが築けたことを実感できた、とても誇らしいエピソードです。
海外でも人気が高い「ザ・プレミアム・モルツ」のクリーミーな神泡
「The PREMIUM MALT’S HOUSE」で提供されるのは樽から直接グラスに注がれる、いわゆるドラフトビール。「華やかな香り」「深いコク」「心地良い余韻」に、上質なイメージも加わった「ザ・プレミアム・モルツ」が “理想の状態” で味わえるスポットこそが「The PREMIUM MALT’S HOUSE」であり、そのためにはいくつもの厳しい精査が施されています。
福島さん:実のところ、ドラフトビール(樽生ビール)というのは製品だけで完結するものではないんです。日本の工場で醸造家が原材料の選別から製法……と、あらゆる部分にこだわって最高の状態のビールをつくるわけですが、お店に届いたものをそのまま提供はできません。
製品がビールサーバーに接続され、機械の中を通ってグラスに注がれるというプロセスがあるため、サーバーの洗浄一つ怠っても、本来の製品の味を損ねてしまうリスクがあるからです。なので、お店のスタッフが完璧に美味しいビールを注げるよう、日々のメンテナンスが必要になってきます。
もちろん、「ビールの注ぎ方」にも並ならぬこだわりが! クリーミーな泡をしっかりビールの上に乗せることによって、初めて缶ビールや瓶ビールを超えた美味しさをお客様に堪能してもらえるのです。
今回「The PREMIUM MALT’S HOUSE」を出店した海外の都市には、欧米の「パブ文化」──日本のように居酒屋などで食事をしながらビールを飲むのではなく、お酒の席ではビールをメインにパブでの時間を楽しむ文化があります。こうした風習に慣れ親しんできた人たちは、ゆっくりと会話を楽しみながらビールを口にするので泡がなくなり、ぬるくなってしまう事もよくあります。
福島さん:日本のお客様のように、ビールと泡の比率まで考えて注ぎ、泡まで味わうという感覚は海外ではあまり見られません。むしろ泡は敬遠されがちです。そこで私たちは、プレモルの「神泡」を体験してもらって、日本の、ひいてはサントリーとしての“ビール体験”を海外の人にも楽しんでもらいたいのです。
「The PREMIUM MALT’S HOUSE」ならではの目玉メニューの一つが、チェコで古くから伝わる「ミルコ」(=泡だけのビール)です。「(ビールの)液体(部分)だけをくれ」というお客様も多い海外では、どう受け入れられたのでしょうか。
福島さん:泡のきめ細やかさに皆さん驚かれます。日本ではすでに、クリーミーな泡のビールはファンも増えてきていますが、海外だと “イノベーション” に映るみたいです。
実際に、海外でモニタリングした “賞賛の声” の一部を紹介すると……
「訪れた人は皆この泡のファンになる!」
「泡だけのミルコは、ビジュアルも柔らかな口当たりも衝撃的!」
「泡は悪いものという常識を覆して主役にするなんて本当に驚き」
「他のビールとは全然違うしクリーミーで最高」
他のビールにはない「プレモルのクリーミーな泡」は “飲まず嫌い” だった海外客にも大好評! 同時に、プレモル特有の「味わい」や「香り」の素晴らしさも、確実に浸透しつつあるようです。
「サントリーの挑戦の歴史」が凝縮された「The PREMIUM MALT’S HOUSE」
もはや、日本では圧倒的な知名度を誇る「ザ・プレミアム・モルツ」ですが、海外だとまだまだその名前すら知らないというケースもしばしば……。そこで重要となってくるのが「SUNTORY」のブランド力です。
福島さん:海外では「SUNTORY」というブランドを日本よりは前面に押し出しています。「The PREMIUM MALT’S HOUSE」の看板も日本では「SUNTORY」の名が入っていませんが、海外では入っています。「SUNTORY」の知名度は海外でも確実に伸びてきていますから。
ビールはまさに「サントリーの挑戦の歴史」です。2023年でビール事業を始めて60年。当時の国内大手3社の壁はとても厚かったのですが、サントリーはあえてそこに参入して発泡酒や機能系ビールなどといった新しい市場をどんどんと開拓してきました。サントリーの「常に挑戦を続けるマインド」はビール……ひいてはプレモルの海外展開に凝縮されています。そのような私たちの姿勢も知っていただければうれしいですね。
最後に、福島さんはこう付け加えます。
福島さん:今回のプロジェクトには「とにかく体験してもらわないとプレモルの本当の価値は伝わらない」という考えが根底にあります。こうして一歩一歩広めていく活動をすることで、まずはプレモルを飲んで知ってもらいたい。
「いい店でいいシェフが選んだビール、それがプレモルだった」という状況をつくっていくことに挑戦しています。最終的には、お店に入ってメニューも見ずに「プレミアムモルツ!」と注文いただけるくらいの名声を海外でも獲得したいですね。
さらには、海外で培った知見がまた異なる商品の海外マーケティングや、プレモルの次のフェーズへのマーケティングに寄与するような流れができればと思っています。
※内容・社員の所属は取材当時のものです。