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STRATEGIES DX戦略 STRATEGIES DX戦略

#3

私はアンクル・トリス。
1958年の誕生以来サントリーの挑戦を見続けている。サントリーのことなら現役社員の誰よりも詳しいんだナ。
グローバルトップを目指すサントリーの「らしさ」が現れている戦略を、私が領域別に解説するゾ。
この項では、サントリーが考えるDXとは、新しい顧客価値を創造するための「手段」であることを知ってほしい。

point1

商品・サービスを革新する!
お客様への価値提供のDX

サントリーはこれまで、飲料や酒類、サプリメントなどを通じて人々の暮らしに「潤いや活力」をもたらしてきた。そして商品だけでなく、心に刺さるクリエイティブ、お酒を楽しむシーン・場所づくり、イベント・プロモーションなどを通じて、生活文化を創造してきたんだナ。
しかし、IT・デジタル技術の進化・浸透を背景として、私たちを取り巻く環境とお客様の意識・行動は大きく変わり始めている。
「商品起点/店頭中心・販売中心」の思考から、これまでの枠組みにとらわれることなくお客様にとっての価値をデザインする「顧客起点」の思考へのシフトが必要になってきた。

商品起点の枠組みを超えたサービス開発の分かりやすい例としては、従業員の健康増進アプリ・サントリープラスがあげられる。利用者はアプリがおススメする健康行動をするとポイントがたまり、ポイントは会社の自販機でサントリーの飲み物と交換することができる。このサービスでは、「ユーザーへの健康習慣の促進」が主サービスで、飲み物(製品)はインセンティブだ。

顧客起点で考えれば、そもそもこれまでもお客様の真のニーズは「ビールやウィスキーを飲みたいというより、気分に合わせてお酒を楽しみたい」「コーヒーや炭酸飲料を飲みたいというより、リフレッシュしたい」というような、個別の製品に紐づかないものだったのかもしれない。
デジタル技術の進化によって、具体的な商品の提案では実現できなかった「新しい顧客価値」を提供できるようになり、より深いニーズに寄り添うことが可能になったとも言えるんだナ。

もとより生活文化の創造をお客様への提供価値と考えていたサントリーは、深い顧客理解やコト消費を実現するノウハウとアセットを積み上げてきた。これは「顧客起点」志向で価値提供をDXしていく際にも大きな強みになると考えているゾ。

point2

業務プロセスを革新する!
ものづくりのDX

お客様が直接受取り体験する価値だけでなく、それを生み出すものづくりのDXも進展中だ。
環境変化への対応、安全・安心なものづくり、サステナビリティの要請、働き方改革など、ものづくりを取り巻く課題は多様になっている。
そうした複合的な課題をスピーディーに解決し、進化を遂げていくためにもDXの取組みが欠かせない。

象徴的な取り組みとしては、次世代ファクトリーモデル「サントリー天然水北アルプス信濃の森工場」があげられる。
2021年5月に稼働した同工場は、データの収集から統合・集約や活用、業務変革までをシームレスにつなぐスマートファクトリーだ。

天然水北アルプス信濃の森工場におけるIoT基盤を活用したDX

これまではお客様から商品に関する問い合わせを受けた際、担当者の経験・ノウハウに基づいて分析していた為、多大な時間を必要としていた。
しかし同工場では生産設備・機器のエラーを即座に特定し、商品の品質への影響を確認するとともに、蓄積したデータを分析することで、恒常的な品質改善が図れるようになった。
情報分析アプリによって、人手に頼っていた報告書作成もデジタル化・自動化され、業務の効率化を実現し、リモートワークも可能にしたゾ。
これまで工程・ライン単位で行っていたデータの取得も、全体データの収集と統合が可能になり、全体最適な改善とより高度な工場経営が実現しているんだナ。

その他にも、「激変する社会環境下で複雑化する需給業務を、需給予測にはAIを活用し、人の時間は予測の補正・戦略立案・推進プロセスに充てる」「ロボットによるルーティン業務の自動化を2019年には全社導入」するなど、デジタルを活用することによって業務の効率化と高度化を同時に達成した例が続々と生まれているゾ。
お客様の課題解決につながる重要な業務に人の時間を割り当てて、価値提供を進化させつつ、働き方も改革していく。目指すものづくりのDXが着々と実現しているんだナ。

IoT基盤を活用した次世代ファクトリーモデルの概念図

point3

グループ全体を巻き込むDXの実現を
教育研修・人事制度からもバックアップ!

これから取り組むDXは、世界中の全ての機能を巻き込んだものになる。成し遂げるためには特定の専門人材の力だけでなく、全ての社員のデジタルスキル・リテラシーの底上げが必要だ。
サントリーでは、年間を通した階層別・全従業員向けのデジタル研修、社内外の講師によるデジタル初学者から中・上級者向けまでの動画アーカイブ、外部のEラーニングなど、さまざまなチャネルで学びの機会を提供している。
中でも、応募・選抜研修「デジタルチャレンジ」は、目玉施策の一つだ。
事業変革を推進できるデジタル人材の育成を目的とし、約8か月間のタフなOff-JTプログラムとリアル課題解決プログラムに取り組むゾ。

今後は事業部門とデジタル部門の相互の異動を通じて、成長と活躍が生まれる循環を生み出していくことも目指している。
例えば、こんなイメージだ。事業部門で商品やリアルビジネスを学んだ人材が、デジタル部門に配属されてその知見をデジタルに活かし、デジタル部門で学んだ知見を再び事業部門に持ち帰って事業をアップデートする。
異動を通した人材と知見の行き来で、事業の力もデジタルの力もバージョンアップしていくゾ。

獲得競争が過熱している専門性の高いデジタル人材に対しては、職場としての優位性を作っていくことも必要なんだナ。2022年4月から、採用・育成・評価・処遇をデジタル人材に特化した「DX人事制度」の運用を開始している。変化の速いデジタル人材市場で戦うために、導入決定からわずか3ヶ月弱で運用にこぎつけたんだ。

全社でDXを実現するために、教育研修や人事制度の面でも統合的な取り組みを進めていくゾ。

デジタルチャレンジのプレゼンテーション