オウエン・デビッドOwen Devitt
私たちのチームの役割は、HD(ホールディングス)が持つITシステムをどう標準化し、有効活用していくかにあります。一つはガバナンスと標準化によるコスト削減と共通インフラの整備。もう一つがグローバルコミュニケーションを図るためのIT環境の整備とツールの開発。ITという観点からサントリーのグローバル経営体制をいかに整備していくかが大きなミッションです。チームは現在7人構成で、外国人は私を含め3人。国籍もさまざまです。
今回、私が参画した「システム統合プロジェクト」も、グローバルなITインフラ整備の一環でした。そのなかで私はPMO(プロジェクト・マネジメントオフィス)担当者として、エナジードリンク「ルコゼード」を展開するLRS(Lucozade Ribena Suntory)社のシステム統合に関わりました。GSK(グラクソ・スミスクライン)ではERP*によって人事や経理、工場、営業、マーケット部門などが総合的に管理されていましたので、その切り離された部分を私たちのシステムとどう統合していくか。与えられた開発期間はわずか3ヶ月、とてもチャレンジングな仕事となりました。
*ERP:基幹業務を部門ごとではなく統合的に管理するためのソフトウェアパッケージ。
通常、ERPの開発には1年近くを要します。そこで私たちは欧州にあるOSG(オランジーナ・シュウェップスグループ)のシステム基盤にLRSのアプリケーションを乗せていくという方法を取りました。
統合に遅れが生じれば、生産がストップし、多額の損失を被ります。いかにスムーズにシステムを移行させるか。大きなチャレンジがスタート。100以上のアプリケーションがありましたが、私は営業、マーケティング、R&D、購買部門のシステム移行をサポート。英・仏のスタッフと連日の打ち合わせを繰り返しました。実際の設計・構築・テストは欧州勢が行いましたが、要件定義は私たちの役割。私たちのチームもそれぞれの役割分担を決めながら、時に厳しく、時に鼓舞し合いつつ、無事に期日どおりの移行を完了させました。
最も大きな壁となったのが、買収に伴うIT資産の承継問題。私はIT資産の契約管理も担当していましたので、IT資産のデューデリジェンスや契約交渉にも関わりました。その過程で、必要なアプリケーションが譲渡の対象リストから漏れていることが発覚。相手側との厳しい交渉が行われました。納期はどんどん近づく中でどう判断していくか。最終的には経営陣の決断を仰ぐことで決着しましたが、グローバルでの交渉の厳しさと重要さを学びました。
* 内容・社員の所属は取材当時のものです。