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マーケティング
BUSINESS COURSEBUSINESS COURSE

  • #マーケティング
  • #16〜20年

畑中 和也Kazuya Hatanaka

  • サントリー株式会社
  • プレミアム戦略部
  • 2005年入社

「泡」に着目したビッグプロモーションでプレミアム復権を果たす。

入社後、大阪のスーパー営業部に配属され、約6年間、大手スーパーのエリア営業やチェーン本部の営業を担当。スピリッツやビールなどの販売営業に携わる。その後、広域営業本部に異動。ここでも約6年間、コンビニエンスストアチェーンの本部営業を担当し、スピリッツやビールなどの店頭プロモーション企画に携わる。スーパーとコンビニエンスストア、2つの売り場を経験。その違いも含め、現場での店頭プロモーションのあり方などを身につける。入社12年目にプレミアム戦略部に異動。「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドを担当する。プレミアム戦略部では、プロモーションチームに所属し、ブランドコンセプトや戦略を具体的な販売戦略に落とし込むプロモーション業務を担当している。

2003年の発売以来、「厳選された素材」や「手間を惜しまないこだわりの製法」とともに、「きめ細かくクリーミーな泡」にこだわり続けてきた「ザ・プレミアム・モルツ(以下プレモル)」。2018年3月に開始した“神泡”プロモーションは、この「良質な泡」を通じて「プレモル」の美味しさを伝えるビッグプロモーションである。2017年3月、「プレモル」は製品の大幅なリニューアルを敢行。「プレモル」の特徴である“溢れだす華やかな香り”と“深いコク”を全面に押し出した。中味のリニューアルとともに、改めて「プレモル」の特徴である「クリーミーな泡」に着目、“神泡”と名付けた。自宅でも最高の状態で「プレモル」を飲んでもらうために、家庭用「神泡サーバー」を開発。泡にこだわったプロモーションが功を奏し、開始後の3月後半には早くも、前年比173%の大幅な伸張を記録。ビール市場が低迷するなかで、プレミアム市場の復権を果たした。

ビール離れに対抗する戦略の立案へ。
「プレモル」の原点に還って、“泡”に着目。

ビール離れが叫ばれ、ビール市場が全体的に低迷するなかで、プレミアムビール市場もまた飽和状態にあり、一般のビールとの差別化も曖昧なものでした。いかにしてプレミアムを復権し、ビール市場の活性化を図るか。私たちプレミアム戦略部の大きな課題となっていました。「ザ・プレミアム・モルツ(以下プレモル)」の特徴とは何なのか。「プレモル」の独自性はどこにあるのか。改めて「プレモル」の本質に戻っての戦略立案を開始しました。
サントリーはビールづくりを始めた当初から、「ビールのうまさは泡に表れる」という信念のもと、「良質な泡」にこだわり続けてきました。2017年3月には、「プレモル」の中味の大幅なリニューアルを実施。「溢れだす華やかな香り」と「深いコク」を全面に打ち出しましたが、お客様が圧倒的な美味しさをより明確に実感できる、他には無い「プレモル」ならではの理由が必要だと考えました。「プレモル」ならではの美味しさとは、「クリーミーな泡」そのものではないか。改めてビールの最大の特徴である泡に着目。「泡を通してプレモルの美味しさを実感してもらう」というプロモーションの戦略コンセプトが決定しました。

泡のうまさを“神泡”とネーミング。
ビールづくりや品質へのこだわりを全面的に押し出す。

泡のうまさを決めるのは、素材・製法・注ぎ方と言われています。これまでサントリーでは、泡のうまさに重点を置いてビールの品質を向上させてきました。麦芽やホップなどの素材はもちろんのこと、製法においてもダブルデコクション製法やアロマリッチホッピング製法など、サントリー独自の製法を開発し、「プレモル」特有のきめの細かい泡を生み出してきました。注ぎ方においても、業界でいち早く泡の重要性に着目し、飲食店に向けてビールの注ぎ方やサーバーの管理方法などの講習会を実施。家庭向けでも、クリーミー泡サーバーを開発するなど、うまい泡の注ぎ方を追求してきました。
「プレモル」ならではのクリーミーな泡。私たちは、この泡を“神泡”と名付けました。
ネーミングに関しては、やや仰々しいのではないか、オーバーな表現ではないかといった懐疑的な意見も一部ありましたが、お客様にとって分かりやすく覚えやすい最上級表現の言葉が必要であったこと、そして何より私たちには、プレモルの「泡」への絶対的な自信がありました。今回のプロモーションは、これまでサントリーが作り上げてきた「プレモル」の美味しさを“神泡”と名付けることによって、ビールづくりや品質へのこだわりを全面的に押し出したことが最大の特徴だったと思います。

「泡の良さ」をどう伝えるか。
飲用時の注ぎ方をクローズアップ。

「プレモル」の最大の特徴であるクリーミーな泡、“神泡”を、これまで以上にお客様に伝えるにはどうすればいいか。私たちプロモーションチームがこだわったのが、飲用時の注ぎ方でした。これまで以上に注ぎ方をクローズアップすることで、“神泡”への認知度を高めてもらうこと。まずは飲食店での「プレモル」の泡の美味しさを実感してもらおうと、2018年の年明けに業務用向けプロモーションを開始。「プレモル」を“神泡”品質で提供していただく飲食店の拡大を目指しました。
「プレモル」の提供店では、“神泡”に相応しい品質の「プレモル」を味わってもらうために、樽生サーバーの管理方法や注ぎ方のアドバイスを実施。よりクリーミーな泡を実現できるよう“神泡”ノズルも開発しました。
飲食店に掲げられるポスターにもこだわり、漆黒の背景、琥珀色の液体、白い泡のコントラストが目を引くビジュアルを採用。飲食店からは「神泡のポスターを貼る以上、お客様に恥ずかしいビールは出せない」という声も聞かれるようになり、ビール=良質な泡という飲用時品質への意識向上につながったと思います。

飲食店だけではなく、自宅でも“神泡”を。
家庭用「神泡サーバー」の開発へ。

業務用プロモーションを受け、3月からは満を持して、家庭向け“神泡”プロモーションを大々的に開始。「自宅でも“神泡”を体験してもらう」というのが、家庭向けプロモーションの目標でした。飲食店で飲む状態に最も近い泡を、家庭でもどう再現するか。先ほども言いましたように、サントリーではこれまでも数々の家庭用サーバーを開発してきましたが、今回はより多くのお客様に、より手軽に使っていただけるサーバーをご用意すべく、24缶ケース販売用の「電動超音波式神泡サーバー」と、3缶、6缶パック販売用の「手動SS式神泡サーバー」の2種類を開発。
実は後者の「神泡サーバー」の開発が、今回のプロモーションの最大の難所でした。プロモーションを翌年に控えた2017年の秋、それまでチーム全員で考え抜き、形にしてきたサーバーが、最終段階で実現困難な状況に直面。
残された時間がない中で、改めてアイディアを一から考え直さなければならない状況に陥りました。しかし、チームメンバー一同、誰一人下を向くことなく、新しいアイディアの開発と企画化に向けて熱い議論を戦わせ、最終的には世の中にない全く新しい「手動SS式神泡サーバー」の誕生につなげました。大きな逆境に直面した時、一人ひとりが前向きに、むしろ楽しみながら乗り越えようとするところが、サントリーの強さだと改めて感じた瞬間でした。

“世界最高峰のビール”を目指して。
すべての人に「プレモルの美味しさ」を伝えるために。

今回の“神泡”プロモーションの成功は、プロモーションに関わったメンバーのみならず、会社全体が「プレモル」をフラッグシップ的ブランドと意識し、一丸となって進められたことにあったと思います。“神泡”の価値を一人でも多くのお客様に届けるには、ブランドとしての一人よがりの視点だけではうまくいきません。実際に商品をお客様にご提供いただくお得意先様、そのお得意先様に提案をさせていただく社内営業担当者に、プロモーションに込めた想いを正しく、そして熱く伝えることが不可欠でした。
これまでの営業部署での経験を活かし、できる限り現場を担う営業担当者の意見や想いに寄り添った企画の立案や活動を推進することができたと思っています。
“神泡”プロモーションが確かな数字に結びついたとはいえ、“神泡”の認知度はまだまだです。さらに“神泡”の認知や経験を高め、「プレモル」の美味しさを実感していただける仕掛けが必要です。家庭用「神泡サーバー」に関しても、さらに進化させてより使いやすいサーバーの開発を考えています。さらに“神泡”に限らず、若者のビール離れへの対策として、音楽や様々なイベント、映画などとのコラボレーションによるプロモーションも考えています。
「ザ・プレミアム・モルツ」は「“世界最高峰のビール”をつくりたい」という想いから出発し、現在まで「厳選された素材」と「手間を惜しまないこだわりの製法」そして、一口飲んだ瞬間の「飲用時品質」にまで徹底的にこだわり抜いてきました。これからも現状に満足することなく、すべての人に「プレモルの美味しさ」を伝えるために、情熱を持って夢に向かい挑戦し続けていきます。 * 内容・社員の所属は取材当時のものです。

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