INTERVIEW.13
YUMIKO
INOUE
PROFILE
井上 由美子
サントリーホールディングス株式会社
デジタルマーケティング部課長
2003年4月入社
CAREER
家政学部(管理栄養士専攻)を卒業後、お酒が好きだったことも手伝って「健康に気遣いながらもお酒を楽しみ、豊かな生活ができる商品や体験」を作りたいとサントリーに入社。営業本部や外食企業の業態開発・新たな飲み方提案などを行うグルメ開発部を経験後、産休・育休を経て、2017年よりデジタルマーケティング部配属。2022年より課長としてマネジメントにも従事。
CHAPTER.01
既存のビジネス変革や新規ビジネス創出を担う「デジタルマーケティング部」
私が所属しているデジタルマーケティング部は、①全社のDXを加速させること、②デジタルを手段として「既存ビジネスの変革」や「新規ビジネスの創出」を行うことの2つを主なミッションとしています。
「デジタルマーケティング部」と聞くと、広告運用、SEO、SNS運用、メールマガジン配信、データ分析などを想像される方も多いかと思います。しかしサントリーのデジタルマーケティングではこれらを「手段」として捉え、大きな目標に向けた取り組みを行っています。例えばデータを活用し顧客をより深く理解することで、今までよりも価値のある体験をお客様に提供することが可能です。データ活用の本質を見極め、その結果としてビジネスに貢献するのが、私たちの役割です。
SUNTORY+というサービスでビジネスモデル変革を目指す
私が担っているプロジェクトの一つが、SUNTORY+(サントリープラス)というサービスのグロースです。これは法人向けの健康促進サービスで、無料のアプリを通じて従業員の健康習慣をサポートします。このアプリを利用して、従業員が健康行動を継続してポイントを貯めることで、サントリーの健康飲料を自動販売機で交換することができる仕組みになっています。
従来の自動販売機ビジネスは、「営業を行い自動販売機を設置する」という点に集中していました。実質的には、営業力と飲料品質の二つの要素で市場シェアを拡大するビジネスモデルでしたが、SUNTORY+の開発により、私たちは自動販売機を設置した後の付加価値を提供することが可能になりました。これにより、「その自動販売機を利用する社員の健康促進」という新たなサービスを提供し、差別化を図ることができるようになったのです。
自動販売機を設置していただいている企業と従業員の皆様の双方にメリットがあるSUNTORY+ですが、ビジネス的な視点では「設置台数の増加」「飲料の売上向上」を目指して開発されたものです。その成果は顕著で、すでに800社以上の企業に導入され、アプリユーザー数もかなり増えています。SUNTORY+は自動販売機ビジネスの営業活動に大きく貢献しています。
サントリー初のカスタマーサクセス立ち上げ
SUNTORY+の開発にあたっては、部署横断のプロジェクトチームで進行し、我々デジタルマーケティング部からも10名で参加しました。
私たちはサービスのリリースを成功に導くだけでなく、その後も継続的な成長のために様々な施策を検討し、実行に移しています。その一環として挙げられるのが、カスタマーサクセス組織の構築と運用です。この組織の目的は、導入企業の従業員がより健康になることを支援することで、私たちは現在20~30人の体制でカスタマーサクセス活動を展開しています。
カスタマーサクセスという組織の立ち上げは、サントリーにとって新しい試み。初めはその概念すら知らなかったのですが、調査を深めるうちに「これは導入企業にとって大きな価値をもたらすだろう」と確信し、デジタルマーケティング部からプロジェクトチームに提案しました。
サントリーでは、お客様に価値をもたらすアイデアであれば、誰であっても積極的に提案することができます。どんな立場の人でも起案でき、それが当たり前のように検討してもらえ挑戦させてもらえる。そういうところは「やってみなはれ」精神が根付いているサントリーらしさだと思います。
またサントリーでは、まず「ユーザーに価値を提供できるか」というポイントを重視しています。このあたりは短期間で結果を求められるスタートアップ企業や、短期的な株主還元を求められる企業とは異なる、サントリー独自の特色だと思っています。
CHAPTER.02
管理職として人材育成を担う
2022年にはデジタルマーケティング部の課長になり、人材育成も担うようになりました。管理職として、メンバーが自分の考えや気持ちを安心して発言できる「心理的安全性」が高い環境を整えることを心がけています。失敗を恐れず、「やってみなはれ」精神で挑戦を促し、モチベーション高く日々の業務に取り組める環境づくりが仕事だと思っています。
心理的安全性が高い環境にこだわるのは、私がデジタルマーケティング部に配属された時の経験が大きな理由です。10年以上営業部門でキャリアを積んだ後、分からないことばかりのデジタルマーケティング部に配属されて随分と戸惑いました。慣れない横文字ばかりで「何をしたら良いんだろう」「自分に何ができるんだろう」と途方に暮れた時もありました。
しかしたくさんの方にご指導いただき、また励ましてもらった経験が今日の私に繋がっています。自分自身も日々勉強しながら、多様な人材が活躍できる環境、明るい未来のために挑戦しようという人の背中が押せる環境を作っていきたいですね。
スキルや個性に合わせたアサイン
実務に即して、私たちは従業員個々のスキル、個性、さらにはプライベート事情を考慮した業務アサインを重視しています。スキルを学ぶためのOFFJT(Off-the-Job
Training)、それを実践し経験を重ねて行くためのOJT(On-the-Job
Training)が大事だと考えています。デジタルの世界は多岐にわたり、一人ひとりの持つ能力やキャリアプランは異なります。そのため、従業員それぞれに最適なOJTやOffJTを提供することで、個人の成長と組織の発展の両方を支援したいと考えています。
デジタルマーケティング部へ配属された当時、全くスキルがなかった私に対して上司から言われたのは、「スキルは勉強すれば身につくけれど、マインドは勉強しても身につかない。井上さんのマインドだからできることがあるんじゃない?」という言葉。
その言葉に励まされ、他部署の扉を叩いてみたり、わからないことはすぐに聞いてみたり、また色々な人を巻き込んだりするうちに少しずつ自信をつけることができました。
だからこそ、既にスキルがある人にはそのスキルを最大限活かせて、更に輝けるアサインを。デジタル領域の経験は浅くとも本質的な思考が得意な人なら、その思考力を活かしつつデジタルのことも学べるアサインを。そんな風に、メンバーそれぞれに合った機会を提供したいと思っています。
サントリーでは研修や学習支援も充実しているので、「これを学びたい」「今後のケイパビリティとして必要なのでは」という提案に対しても、積極的に背中を押しています。私自身もカスタマーサクセスを立ち上げる際、サクセスラボさんの「実践カスタマーサクセス」という講座を受講させてもらいました。
手を上げやすく言いやすい雰囲気、そしてどんなチャレンジに対しても応援してもらえる経験が、サントリーの風通しの良さを作っていくのだと思っています。だからこそ、私も背中を押せる仲間でありたいです。
CHAPTER.03
様々なアセットが活かせるサントリーの「デジタル」
サントリーは長年にわたって飲料・食品業界において、製品そのものはもちろん、生活文化を創造してきました。これまで培ってきた「モノづくり」への誇りを大切にし、数多くのアセットを活かしながらリアルな製品や体験と結びつけることで、より価値のあるデジタル活用が可能になります。
SaaSサービスのようなオンライン上のみで展開されるサービスとは異なり、実際の商品や市場を取り込むビジネスモデルは複雑で変数が伴います。企業規模的にもステークホルダーは多く、取引先を含む数社を巻き込むビッグプロジェクトも少なくありません。だからこそ、成し遂げた時の達成感や喜びはひとしおです。例えば、SUNTORY+が深くかかわる自販機の市場は、その市場規模は5兆円以上、全国での設置台数は423万台以上というビックマーケットです。こうしたスケールの大きさが「当たり前」なのがサントリーのデジタル事業なのです。
またチームが大きくなっても風通しの良さが保たれていることが、サントリーで働く魅力のひとつ。SUNTORY+のチームでは、関係会社さんも含めて5F(Flat、Frank、Flexible、Fun、Fairness)を掲げており、組織の壁なく一つの目標を目指して進んでいるなと感じています。
CHAPTER.04
最近では様々な部署・部門でDXの取り組みが進行中
私が2017年にデジタルマーケティング部に配属された時、ちょうどその部署が新設されたばかりでした。当時はデジタルに対するポジティブな意識や理解も低く、デジタルの活用やそれに伴うビジネスモデルの変革といった話をしても、実感を持って理解してもらえないことが多いと感じていました。
しかしこの数年で社内の意識は大きく変わりました。デジタルマーケティング部などデジタルを主戦場とする部署だけでなく、他の部署や部門においてもデジタル化の波は急速に進んでいます。さまざまな新しい挑戦を続けるなかで、新しいサントリーへと生まれ変わる未来が目前にあることを感じています。