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©Yoshinori Tsuru |
公益財団法人サントリー芸術財団(代表理事・堤 剛、鳥井信吾)は、わが国の洋楽の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈る「サントリー音楽賞」の第56回(2024年度)受賞者を山田 和樹(やまだ かずき)氏に決定しました。後日贈賞式を予定しています。
●選考経過
2025年1月11日(土)国際文化会館において第一次選考を行い、候補者を選定した。引き続き2月27日(木)国際文化会館において最終選考会を開催。慎重な審議の結果、第56回(2024年度)サントリー音楽賞受賞者に山田 和樹氏が選定され、3月17日(月)の理事会において正式に決定された。
●賞金 700万円
●選考委員は下記の7氏
伊東信宏、片山杜秀、白石美雪、長木誠司、沼野雄司、舩木篤也、松平あかね(敬称略・50音順)
<贈賞理由>
山田和樹がブザンソン国際指揮者コンクールで優勝したのは2009年。小澤征爾が同コンクールで優勝してからちょうど50年後だった。そして2024年2月9日。山田はサントリーホールで読売日本交響楽団の定期演奏会を振った。曲目はバルトーク《弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽》、武満徹《ノヴェンバー・ステップス》、ベートーヴェンの交響曲第2番。明らかに小澤の得意レパートリーに基づく選曲で、1曲目をヒンデミットの交響曲《画家マチス》に取り換えれば、小澤が1967年11月にニューヨーク・フィルハーモニックの定期演奏会で《ノヴェンバー・ステップス》を世界初演したときのプログラムになる。まずバルトークがヴィヴィッドかつ精緻。休憩を挟んで武満に。舞台に現れた山田は急に客席に語りかけた。小澤征爾が2月6日に亡くなったと。その情報解禁は9日19時。コンサートの開演時間だった。それからの武満での湿気漂うしなやかさ、ベートーヴェンでの大胆な畳みかけ。見事だった。
事実は小説よりも奇なり。小澤に挑むかのように用意されたコンサートがそのまま追悼演奏会に。もちろんこれは偶然だ。ここで問題とすべきは2024年までの四半世紀にわたる山田の道程である。若き頃から覇気に富んだ躍動感で聴き手を魅了させてきたものの、天稟の気質に任せて閃きに頼るところもなくはなかった。が、年輪を重ねるとともに構想力とスケール感が膨らんできた。しかもその構想力は多分に奇想を孕む。常套を打ち破る楽曲解釈。意表を突く音色作り。この手があったかという楽器の配置。創意工夫がよく嵌る。その上にいざという時のドライヴ感の凄まじさといったら!瞬発力に耳が驚く。そんな山田の魅力は、5月のモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演での、ベルリオーズ《幻想交響曲》とサン=サーンスの交響曲第3番《オルガン付き》でも炸裂した。
さらに言えば、東京混声合唱団の音楽監督としての仕事がまた重要だ。合唱指揮者としてもオーケストラ指揮者としても、決して手を抜くことなく、レパートリーに工夫を凝らして、ひとりでも多くの聴衆を獲得しようとする貪欲さは、クラシック音楽が生き抜いていくための大きな指針ともなるだろう。今後への大きな期待を込めつつ、サントリー音楽賞を贈る。
(片山杜秀委員)
<略歴>
山田 和樹(やまだ かずき) 指揮
2009年第51回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。ほどなくBBC交響楽団を指揮してヨーロッパ・デビュー。同年、ミシェル・プラッソンの代役でパリ管弦楽団を指揮して以来、破竹の勢いで活躍の場を広げている。2012年~2018年スイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者、2016/17シーズンからモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督兼音楽監督、2023年4月からバーミンガム市交響楽団首席指揮者兼アーティスティックアドバイザーを務め、その後、2024年5月には同団音楽監督に就任。日本では、東京混声合唱団音楽監督兼理事長、学生時代に創設した横浜シンフォニエッタの音楽監督として活動、2026年4月1日より東京芸術劇場の芸術監督(音楽部門)に就任予定。
2024年夏は、バーミンガム市交響楽団とBBCプロムスに登場、ベルリン・ドイツ交響楽団に再客演した。2025年にはバーミンガム市交響楽団との欧州ツアーに続いて、日本ツアーを予定している。
サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、フランス国立管弦楽団への定期的な客演、近年および今後の活動に、スカラ・フィルハーモニー管弦楽団、スウェーデン放送交響楽団、クリーブランド管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団、サンフランシスコ交響楽団にデビュー、2025年6月には、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団にデビューを予定している。
エマニュエル・アックス、レイフ・オヴェ・アンスネス、チョ・ソンジン、イザベル・ファウスト、マルティン・ヘルムヒェン、今井信子、アルトゥース&ルーカス・ユッセン、アレクサンドル・カントロフ、エフゲニー・キーシン、マリア・ジョアン・ピリス、バイバ・スクリデ、ファジル・サイ、アラベラ・シュタインバッハー、ジャン=イヴ・ティボーデ、クリスチャン・ツィメルマン、フランク・ペーター・ツィンマーマンなどのソリストと共演。
教育活動にも熱心で、小澤征爾スイス国際アカデミーに毎年ゲスト・アーティストとして招かれている。また、バーミンガム市交響楽団のアウトリーチ・プログラムにも力を入れている。
東京藝術大学指揮科で松尾葉子・小林研一郎の両氏に師事。出光音楽賞、渡邉暁雄音楽基金音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、実行委員会代表を務めた『柴田南雄生誕100年・没後20年 記念演奏会』が平成28年(2016年)度文化庁芸術祭大賞、日本フィルハーモニー交響楽団と3年に亘り行った『山田和樹マーラー・ツィクルス』が第67回(2017年)芸術選奨文部科学大臣新人賞など受賞多数。2022年には、モナコ公国からシュバリエ文化功労勲章を受章。キングレコード、オクタヴィア・レコード、PENTATONE、EXTON、日本コロムビア(DENON)などから多くのCDを発表している。著述に『「超」音楽対談 オーケストラに未来はあるか』(対談・アルテスパブリッシング刊)、『「自由」の危機 ―息苦しさの正体』(論考集・集英社新書)などがある。本質に迫るとともにファンタジーあふれる音楽づくり、演奏家たちと一体になって奏でるサウンドは、音楽の喜びと真髄を客席と共有し熱狂の渦に巻き込む。名実ともに日本を代表する人気マエストロである。はだのふるさと大使。ベルリン在住。
以上
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