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©Yuriko Takagi |
公益財団法人サントリー芸術財団(代表理事・堤 剛、鳥井信吾)は、わが国の洋楽の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈る「サントリー音楽賞」の第54回(2022年度)受賞者を井上道義(いのうえ みちよし)氏に決定しました。
●選考経過
2023年1月8日(日)当財団会議室において第一次選考を行い、候補者を選定した。引き続き3月12日(日)当財団会議室において最終選考会を開催。慎重な審議の結果、第54回(2022年度)サントリー音楽賞受賞者に井上道義氏が選定され、3月27日(月)の理事会において正式に決定された。
●賞金 700万円
●選考委員は下記の7氏
岡田暁生、片山杜秀、白石美雪、長木誠司、沼野雄司、舩木篤也、松平あかね(敬称略・50音順)
<贈賞理由>
若くして頭角をあらわし、今年で77歳になるという年齢ならば、もはや「重鎮」や「巨匠」と呼ばれてもおかしくないのだが、井上道義をそんなふうに呼ぶ人はほとんどいない。これだけの活躍をみせながらも、その存在は強く未来を感じさせる。いまだに「若手」のようなのだ。
泰西名曲をしっかりとりあげる一方で、現代作品の開拓にも余念がない。あるいは、あえて道化のようにふるまいながらも、その音楽は実直で正統的。そんなさまざまな矛盾が、時として彼を異端のようにも見せてきたわけだが、しかし近年の演奏においては、その矛盾がいわば豊潤へと変化を遂げ、ゆたかに実っているように感じられる。
とりわけ2022年は、ショスタコーヴィチ作品において、スペシャリストならではの充実ぶりをみせた。2月に「交響曲第5番」(読売日本交響楽団)、「第15番」(オーケストラ・アンサンブル金沢)、「第1番」(東京フィルハーモニー交響楽団)、3月には「第8番」(名古屋フィルハーモニー交響楽団)、11月に「第10番」(NHK交響楽団)といった具合。鬼気迫るラインナップではないか。
さらに藤倉大の新作「Entwine」(読売日本交響楽団、1月)、クセナキスの「ケクロプス」(東京フィルハーモニー交響楽団、2月)、そして伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」(NHK交響楽団、11月)など、重量級の作品をこなすとともに、オール・プロコフィエフ・プログラム(兵庫芸術文化センター管弦楽団、4月)、偽作をあえて並べて見せた「モーツァルト+」(神奈川フィルハーモニー管弦楽団、5月)など、凝ったプログラミングも冴えわたっており、さらに年末にはNHK交響楽団とのベートーヴェン「交響曲第9番」で、なんともふくよかで、どこか懐かしい音の大伽藍を築いて見せた。これだけ骨のある活動を継続してきた指揮者は他に見当たらない。
以上の理由をもって、井上道義に第54回サントリー音楽賞を贈ることを決定した。
(沼野雄司委員)
<略歴>
井上 道義(いのうえ みちよし) 指揮
1946年東京生まれ。桐朋学園大学卒業。1971年ミラノ・スカラ座主催グィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝して以来、一躍内外の注目を集め、世界的な活躍を開始する。ニュージーランド国立交響楽団首席客演指揮者、新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督、京都市交響楽団音楽監督、大阪フィルハーモニー交響楽団首席指揮者、オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督を歴任し、斬新な企画と豊かな音楽性で一時代を切り開いた。シカゴ響、ベルリン放送響、ミュンヘン・フィル、スカラ・フィル、レニングラード響、ベネズエラ・シモン・ボリバルなどにも登場している。
2007年日露5つのオーケストラとともに「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト」を実施し、音楽・企画の両面で大きな成功を収めた。2014年4月、病に倒れるが同年10月に復帰を遂げる。2015&2020年全国共同制作オペラ「フィガロの結婚」(野田秀樹演出)、2017年大阪国際フェスティバル「バーンスタイン:ミサ」(演出兼任)を自身23年ぶりに、2019年全国共同制作オペラ「ドン・ジョヴァンニ」(森山開次演出)、2023年「井上道義:A Way from Surrender ~降福からの道~」をいずれも総監督として率い既成概念にとらわれない唯一無二の舞台を作り上げている。
2009年「第6回三菱UFJ信託音楽賞奨励賞(歌劇イリス)」、2010年社団法人企業メセナ協議会「音もてなし賞(京都ブライトンホテル・リレー音楽祭)」、2016年「渡邊暁雄基金特別賞」、「東燃ゼネラル音楽賞」、2018年「大阪府文化賞」「大阪文化祭賞」「音楽クリティック・クラブ賞」、2019年NHK交響楽団より「有馬賞」を受賞。オーケストラ・アンサンブル金沢桂冠指揮者。
以上