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ニュースリリース
  • No.sfa0027(2018/3/30)

第17回(2017年度)佐治敬三賞は
「三輪眞弘+前田真二郎 モノローグ・オペラ『新しい時代』」に決定

©羽鳥直志

 公益財団法人サントリー芸術財団(代表理事・堤 剛、鳥井信吾)は、わが国で実施された音楽を主体とする公演の中から、チャレンジ精神に満ちた企画でかつ公演成果の水準の高いすぐれた公演に贈る「佐治敬三賞」の第17回(2017年度)受賞公演を「三輪眞弘+前田真二郎 モノローグ・オペラ『新しい時代』」に決定しました。

●選考経過
応募のあった2017年実施公演について2018年2月26日(月)ANAインターコンチネンタルホテル東京において選考会を開催、慎重な審議の結果、第17回(2017年度)佐治敬三賞に「三輪眞弘+前田真二郎 モノローグ・オペラ『新しい時代』」が選定され、3月30日(金)の理事会において正式に決定された。

●賞金 200万円

●選考委員は下記の7氏
礒山雅、岡田暁生、片山杜秀、白石美雪、長木誠司、広瀬大介、宮澤淳一
(2月26日選考会は礒山雅氏を除く6名で審議)(敬称略・50音順)

(ご参考)佐治敬三賞についてはこちら

<贈賞理由>

 世紀のちょうど境目2000年に初演されて衝撃を与えた音楽劇の、17年ぶりの再演である。オペラといっても既成の諸形式の踏襲は一切ない。コンピューター・プログラムで制御され、フォルマント音響合成(佐近田展康による)を駆使した三輪眞弘の音楽が、前田真二郎の映像と一体になり、メディアアート的総合演劇を作り出す。コンピューター・ネットワークの中に神を見出し、光となってそこを永遠に漂う肉体なき旋律情報となることを願う主人公の少年の自死の物語は、既に初演時に衝撃を与え、来るべき21世紀のニューエイジともいうべき世代の、ほとんど不気味とすら言えるほどに純粋無垢なヴァーチャル的感性の到来を予告していた。しかし主役のソプラノに必要な極めて特異なキャラクターと声(透明で性ニュートラルな非身体性ともいうべきもの)、そして複雑なコンピューター・システムの故に、再演を望む多くの声にもかかわらず、その機会はこれまでなかった。だがこの17年の間に、本作品が描き出した ― 初演当時は多くの人にとって現実感がなかったであろう ― ヴァーチャル世界はいつのまにか世界を包み込む現実そのものとなり、その前で私たちはただ呆然としている。電気テクノロジーが現実化にする超(非)現実という逆説。科学技術による合理化の果てに出現する情報ネットワークの魔界。電脳世界へと人間の主体も身体も解消され、「わたし」と「あなた」といった人称性はもはやなく(この音楽劇がモノローグ・オペラの形をとっているのは必然である)、従って何の苦悩も対立も生じないこのすべすべした滑らかな調和の不気味。この上演至難な作品を「いま」の時点でもう一度再演した意義は、まさにここにある。初演時にも主役を歌ったさかいれいしうの、まるで遠い宇宙から送られてくる電波メッセージのように微かで透明な声は、17年の間隔をまったく感じさせず、生身の奏者によって演奏されつつ、コンピューター・システムによって制御される音楽は、完璧に映像プロセスとフィットしていた。芸術とは単に美的なものではなく、時代相の最も深いところにある患部の診断にほかならないということを、これだけ鮮烈に思い出させてくれる作品は滅多にない。以上の理由で「三輪眞弘+前田真二郎 モノローグ・オペラ『新しい時代』」に第17回佐治敬三賞を授与する。

<公演概要>

名称:三輪眞弘+前田真二郎 モノローグ・オペラ『新しい時代』

○愛知公演
日時:
2017年12月8日(金)19:00開演
      9日(土)14:00開演
会場:愛知県芸術劇場小ホール

○大阪公演
日時:2017年12月16日(土)16:00開演
会場:あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール

曲目:モノローグ・オペラ『新しい時代』
出演:さかいれいしう
 (キーボード)岩野ちあき、木下瑞、日笠弓、盛岡佳子
 (映像オペレーター)古舘健
 (音響オペレーター)ウエヤマトモコ
 (ミキシングオペレーター)大石桂誉
作曲・脚本・音楽監督:三輪眞弘
演出・映像:前田真二郎
主催:愛知県芸術劇場(愛知公演)
   あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール(大阪公演)


以上