国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(以下、東京大学)、サントリーホールディングス(株)(以下、サントリー)、ID&Eホールディングス(株)傘下の日本工営(株)(以下、日本工営)は、東京大学社会連携講座「グローバル水循環社会連携講座」を通じて、世界各地の水の需給を踏まえた水不足リスクを将来にわたって用途別に把握できる、世界初※1のオンラインプラットフォーム「Water Security Compass」を共同開発しました。産官学広い分野での水資源に関する研究で活用いただくことを主な目的に、今夏より無料公開しました※2。(https://water-sc.diasjp.net/参照)
※1 東京大学社会連携講座「グローバル水循環社会連携講座」調べ
※2 今回公開したのは正式版の前の試用版(β版)です。正式版の公開は2025年を予定しており、今後データや機能の改良・修正を順次実施していく予定です。
「グローバル水循環社会連携講座」は、企業と大学の知見を融合した研究開発および開発技術の社会実装、人材育成に取り組むことを目指し、2022年に開設されました。東京大学、サントリー、日本工営が参画する産学連携の枠組みです。
同講座を通じて開発された「Water Security Compass」は、東京大学等が構築した地球全体の水循環をシミュレーションする世界最先端のモデルを活用しています。また、季節の変化やダムなどのインフラによる水量への影響をシミュレーションに織り込んだことで、世界各地で必要とされる水の量と供給される量を的確に把握し、水資源がどの用途でどの程度不足するのかを現在から将来にわたって可視化※3した、世界初のオンラインプラットフォームです。
※3 日本域については、従来よりもはるかに高い解像度(約2km四方)でのシミュレーションを実現。(現在は西日本のみ公開。)
●「Water Security Compass」の主な特徴・用途
(1)人間や川などに棲む生き物が必要とする水資源に対する不足の程度を可視化
(2)農業用水、工業用水、生活用水など、用途別に水が不足する可能性の高い地域を特定
(3)上記(1)(2)を踏まえ、実際に水不足が発生しうる地域を特定し、対策に繋げることが可能
現在、世界中のさまざまな企業や組織が、気候変動に伴う水リスクへの対策を行っています。「Water Security Compass」は、そうした活動の精度を高める一助となり、グローバルな水資源保全活動の一層の推進につながることを目指しています。また、得られた知見や実績を基に、より広範囲なグローバル規模での活用や、国際的に議論され始めている水に関するルール形成などにも貢献していきたいと考えています。
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(b) |
図:Water Security Compassの画面例 |
指標(a)Cumulative Deficit to Demand(CDTD)。指標(b)Sectorial and Statistical Demand To Availability(SS-DTA)。指標(a)を使うと、実際に水不足が生じる可能性が高い地域を特定することが出来る。さらに指標(b)を使うと、農業用水、工業用水、生活用水、川などに棲む生き物が必要とする水のうち、どの用途の水が不足する可能性が高いかが分かる。青色が農業用水、緑から黄色が農業・工業用水、オレンジから赤色が農業・工業・生活用水が不足する可能性が高いエリアを示す。茶色は全ての用途で水が不足し、生き物が必要とする水も不足する可能性が高いエリアを示す。
●グローバル水循環社会連携講座への参画団体
・国立大学法人東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻
・サントリーホールディングス株式会社
・サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 水科学研究所
・日本工営株式会社 中央研究所 先端研究センター
本研究は、2022年度から実施されている東京大学社会連携講座「グローバル水循環社会連携講座」(参画機関:国立大学法人東京大学大学院工学系研究科、サントリーホールディングス株式会社、ID&Eホールディングス株式会社傘下の日本工営株式会社)によって実施されました。また、本研究成果の一部は、文部科学省の補助事業「地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業」(JPMXD0721453504)との共同研究課題(課題番号:DIAS23-A002、課題名:次世代水循環評価プラットフォームの開発)として実施し、同事業の運用するデータ統合・解析システム(DIAS)上に実装されたものです。DIAS共同研究課題については https://diasjp.net/joint-research/ を参照。
以上
Water Security Compass開発チーム
https://water-sc.diasjp.net/beta/jp/contact.html