山崎蒸溜所便り
白州蒸溜所便り
【蒸溜所で働く人】未来につながるウイスキーづくり~蒸溜工程編~
2023年1月31日
こんにちは、水野めぐみです。
今回の「蒸溜所で働く人」の連載では、蒸溜工程での製造管理や蒸溜釜のメンテナンスについてご紹介します。
インタビューしたのは山下さん。醸造グループで働く若手メンバーです。
醸造グループの蒸溜工程で働く山下さん
※写真は撮影時のみマスクをはずして撮影しています
山下さんは普段、蒸溜釜の温度管理や保全などウイスキー製造に関わる仕事を行っています。
水野「山崎蒸溜所で働くことになったきっかけを教えてください。」
山下「京都は元々好きな土地で、以前から近くに住みたいと思っていました。入社前はお酒は未知の世界だったんですが、つくり手に話を聞く機会があり『ウイスキーづくりは未来をつくっていく仕事だ』という言葉に感銘を受けてサントリーへ入社したいと思いました。」
山下さんは今年で入社5年目。
仕事に取り組みながらウイスキーやお酒について日々学び、知見を増やしています。
熱気に包まれる蒸溜室
山下さんの所属する醸造グループはウイスキーづくりの工程の中で、仕込・発酵・蒸溜を担当する部門です。
山下「醸造グループの仕事の中でも、はじめから蒸溜の仕事に就いたわけではありません。入社時より仕込工程や発酵工程を経験した後に、現在の蒸溜工程の担当になりました。」
水野「仕込や発酵工程の経験で得られた知識は、今の蒸溜の仕事にも活かされていますか?」
山下「はい。例えば、同じ蒸溜釜を使って同じ条件で蒸溜を行っていても、温度経過等に違いが見られることがあります。そんな時に、これまでに培った知識を元に、蒸溜の前工程である仕込や発酵の工程では『どんなことが起きていたのか』と予測し、メンバーと協力して様々な蒸溜条件の調整を行います。安定したウイスキーづくりのためには各工程での経験を活かす必要があるのです。」
このサイトグラスから泡立ちの状況を確認します
水野「蒸溜工程で山下さんがこだわっていることはありますか?」
山下「オペレーションルームでは、常時、直火炉内や釜内の温度を見ながら蒸溜の管理を行っています。出来上がったニューポットについては、ブレンダーから評価コメントをもらいます。ポジティブなコメントが少なかった時ほど、その時の蒸溜の条件をしっかりと振り返り、改善につなげていくことを大切にしています。」
ウイスキーの品質を維持していくためには、少しの変化や違いも見逃さないことが大事だと学ぶことができました。
点検を行う時にはマンホールから釜の中に入ります
今回のインタビューは、ウイスキーづくりを一部休止し、設備のメンテナスを行うオーバーホールの期間に行いました。
山下さんにオーバーホール期間のメンテナンス作業についても聞いてみました。
水野「オーバーホールではどのような作業をしているのですか?」
山下「蒸溜釜のメンテナンスや修繕が必要な部品の交換、釜全体の入れ替えなどを行いました。製造を休止してのメンテナンスなので、釜の外観からだけでなく実際に蒸溜釜の中に入って点検作業を行います。例えば、加熱による内部の焦げつき方をみてラメジャー*形状の設計変更を行ったり、釜のすり減り具合など経年劣化の状況を確認して交換時期を予測するなど、今後のメンテナンス計画を立てたりします。」
*蒸溜釜の内部で回転させて焦げつきを制御する鎖
水野「ウイスキーの品質を維持していくために行う大切な作業なんですね。」
釜の内部で点検を行っている様子
水野「つくり手としての楽しさややりがいを教えてください。」
山下「ウイスキーづくりには時間がかかります。例えば、山崎25年などの高酒齢のウイスキーは、原酒が少なくとも25年以上前に蒸溜されたものです。私は、そういったウイスキー原酒は当時どのような条件や工程でつくられていたのだろうかと想いを巡らすことが好きです。ウイスキーづくりという仕事は、先輩から受け継いだ伝統を守るのと同時に、未来を見据えて革新していく仕事でもあります。自分が入社した当初に仕込んだウイスキーは、まだ世の中に出ていないので、いつかその日が来るのが待ち遠しいです。」
未来を想像しながら、今日もウイスキーづくりを続けています
※写真は撮影時のみマスクをはずして撮影しています
見学が再開したことで、お客さまに蒸溜所を見ていただく機会が増えたのがうれしいと語る山下さん。
日々の業務を行う際にも、一層気が引きしまる想いがするとのことです。
「お客さまにも製造工程での香りや空気を肌で感じていただき、蒸溜釜を見ながら『どんな製品が出来上がるのだろう』など、想像を膨らませてもらえると嬉しい」と最後に話してくれました。
山崎蒸溜所の未来を担う山下さんが携わった製品が世に出る日が楽しみですね♪
オーバーホール期間では蒸溜釜の入替え工事も行われていました。
この蒸溜釜の入替えの様子については、別のつくり手にインタビューしてきましたので今後の更新もお楽しみに!
※国産ウイスキーは、現在大変ご好評をいただいており、私どもの想定を上回る販売状況となっております。また、原酒を熟成させる期間が数年単位で必要なウイスキーは生産数量をすぐに増やすことが難しいため、国産プレミアムウイスキーは充分な数量をご提供することが困難な状況が続いており、皆様にはご迷惑をおかけしております。現在、原酒の増産に努めておりますが、今しばらくはこのような状況が続くものと考えられます。お客様には多大なるご迷惑、ご不便をおかけし心よりお詫び申し上げます。
【お知らせ】工場見学の営業に関する最新情報は、山崎蒸溜所ホームページにてご案内しています。ご来場前に必ず、営業日・時間、予約方法等のご確認をお願いいたします。「山崎蒸溜所ギフトショップ」へのご来場には、「山崎蒸溜所ツアー」または、「山崎ウイスキー館見学」のご予約が必要です。