白州蒸溜所便り
【つくり手散歩】白州蒸溜所で品質にこだわり続けるつくり手をご紹介!~仕込・発酵編~
2021年10月4日
こんにちは、森川ユタカです。
このたび、白州蒸溜所便りに新たな連載「つくり手散歩」が加わります!
森の蒸溜所で働くさまざまな「つくり手」たちはどんな人なのか、どんなこだわりを持って働いているのか。
普段は工場見学の案内係をしている私、森川ユタカが、つくり手と一緒に蒸溜所内を見て回りながら、ウイスキーづくりのこだわりや、つくり手の熱い想いをみなさんにお届けしていきます。
記念すべきシリーズ初回は、白州蒸溜所で仕込・発酵を担当する若手社員の佐藤さんと蒸溜所を歩いてきました。
普段はどんな想いを胸に現場で働いているのか、"つくり手"佐藤さんの人となりに迫ります。
まずは佐藤さんの働く現場の前でパチリ!
幼いころからものづくりに携わりたいと思っていたのか尋ねてみると、「いえ、実は違うんです」と、少し笑いながら答える佐藤さん。
小学生時代は、お花屋さんになりたいと思っていたそうです。
佐藤「ただ今思えば、何かを作ることは好きでしたね。折り紙を折ったり、工作をしたり。自分の手で黙々と完成させていくのが楽しかったです。」
森川「なるほど!そこからウイスキーのつくり手になった現在の佐藤さんに繋がっているのかもしれませんね。」
緑に覆われた小道を通り、佐藤さんの働く醸造棟へと向かいます。これぞまさに、「つくり手散歩」の醍醐味です!
森川「初めて白州を訪れた時の印象はどうでしたか?」
佐藤「『こんな森の中でウイスキーをつくっているの!?』と驚きました。」
森川「工場があるようには見えないですよね。」
佐藤「そう、本当に自然が豊かですよね。それに、周囲の山々が、自分がそれまで見てきた山よりも壮大で、圧倒されてしまいました。」
南アルプスの麓に広がる白州蒸溜所
豊かな森に囲まれた立地条件から"森の蒸溜所"とも呼ばれています。
学生時代に佐藤さんが学んでいたのは、ウイスキーづくりとは全く異なる分野だったとのこと。サントリーに入社して、どんな道のりを歩んできたのでしょうか。
佐藤「入社してすぐは、まず初めて使う機械や工具に慣れるのが大変でした。先輩から教わって、自分でやってみて、四苦八苦しながら覚えました。」
森川「つくり手の方にも私たちと同じように入社時の苦労があったと考えると、なんだか親近感がわきますね!(笑)実際に白州蒸溜所で働き始めて、なにか驚いたことはありましたか?」
佐藤「自分の年齢の倍以上の年月を過ごしてきた機械がたくさんあることです。1973年の蒸溜所開設当初 から今まで、現役で稼働し続けているものもあるんですよ。」
森川「すごいですね!だからこその難しさもあるのでしょうか?」
佐藤「そうですね。毎日稼働しているものだからこそ、メンテナンスも大切な仕事です。創意工夫をしながら、大事に使っています。」
麦汁のサンプルを採る目つきは真剣そのもの
白州蒸溜所のつくりのこだわりの一つが、南アルプスの山々に育まれた仕込水です。
場内にはサントリー天然水南アルプス白州工場も併設されており、この水の良さこそが、創設者の佐治敬三を虜にした魅力の一つでもありました。
森川「水の良さを実感する時、というのはありますか?」
佐藤「そうですね。もちろん、製品となったウイスキーを口に含むと『美味しい!』と感じます。それだけでなく、すっきりとした口当たりや香り立ちなどは、やはり白州の良い水だからこそ生まれる特長だと感じますね。」
麦汁を濾過する際にはじっくりと時間をかけて行うのが大切だ、と語る佐藤さん。透明度の高い麦汁のことを「清澄麦汁」と呼び、香り高いウイスキーを生み出すためにはこれが欠かせないと言います。
佐藤「あせってろ過をすると、麦汁は濁ってしまいます。その時その時、麦芽や麦汁の様子としっかりと向き合って細かな調整を行います。透明度の高い麦汁だと、発酵に進んだ際の泡立ちの様子がまったく違うんですよ。」
今年更新の木桶発酵槽(左)と比べると年季の違いがよくわかる(右)
仕込の現場からくるりと振り向くと、そこはもう発酵の現場です。白州蒸溜所のこだわりである、木桶発酵槽についても教えてもらいました。
森川「ステンレス製のものを使っている蒸溜所が増えているといいますが?」
佐藤「そうですね、世界的にもステンレス製が主流になっているようです。ステンレス製と比べると、この子たちはメンテナンスや温度管理が難しいですね。」
森川「そこをあえて木桶発酵槽のみ使う、というのはどんなこだわりがあるのでしょうか?」
佐藤「木桶発酵槽の方が、より複雑な味わいを生み出してくれるからです。」
森川「なるほど、メンテナンスの大変さはさておき、ゆずれない品質へのこだわりがあるんですね!」
ふつふつと泡立っているのは酵母が活発に活動している証拠
ちなみに酵母は、目指すべきウイスキーの香味に合わせて数種類を使い分けているそうです。
「コントロールルームのモニター上で順調に発酵が進んでいる様子を見ると、『お、頑張ってるな』なんて思ってしまうんです」と、つくり手ならではの感性が垣間見えた一瞬でした。
佐藤さんの「やってみなはれ」とは?
白州蒸溜所のつくりのこだわりをたっぷりと教えてくれた佐藤さん。
「白州蒸溜所で働くには、やはり最初からウイスキーづくりに対する情熱がある人だけが選ばれるのでしょうか?」と尋ねると、「そんなことはないですよ」と笑顔がはじけました。
佐藤「私自身も、入社当初はこだわりや誇りという想いは強くありませんでした。働いていく中で、自分が手掛けた製品が世に出ていく実感が持てるようになりましたね。品質の高いものをつくりたいという思いは、年々強くなっています!」
森川「入社してからの5年間で、ほかにはどんな変化を感じますか?」
佐藤「今、ウイスキーづくりの現場では若手が増えてきているんです。『しっかりと私が引っ張って行かないといけない!』と日々感じています。」
佐藤さんの想いがこもった言葉からは、サントリーウイスキーの品質やものづくりの精神がつくり手一人一人によって体現されている様子が感じられ、胸が熱くなる思いでした。
森川「佐藤さん、今日はありがとうございました。ぜひ読者のみなさんに向けて、メッセージをお願いします!」
佐藤「工場見学が再開したら、実際に足を運んで頂いてこの大自然の中でつくられるフレッシュなウイスキーの味わいを感じてほしいと思います。白州蒸溜所では、安定した高い品質のウイスキーをお届けするため、様々なつくり分けを行っています。サントリーウイスキーをお手に取る際には、製品ひとつひとつに込められた、たくさんのつくり手たちのこだわりに想いを馳せながら愉しんでください!」
ウイスキーづくりへの情熱溢れるインタビューの最後には、今ハマっている愉しみ方も教えてくれました。
佐藤「ぜひおつまみとして試してほしいのが、ウイスキーに漬け込んだ鶏の唐揚げです。ほのかにウイスキーの香りがして、本当においしいんですよ!」
このオリジナル唐揚げと手作りの琉球ガラスのタンブラーで飲むハイボールの組み合わせが、最近のお気に入りなんだとか。
すぐにでも試してみたくなりますよね!
さて、「つくり手散歩」初回は仕込・発酵を担当するつくり手の佐藤さんと蒸溜所を歩き、つくり手の熱い想いやこだわりを伺ってきました。
今後の「つくり手散歩」では蒸溜を担当するつくり手にもインタビューする予定です。どうぞお楽しみに!
蒸溜所便りでは、蒸溜所で働くスタッフに、ウイスキーの愉しみ方を教えてもらう新連載もスタートしています。ぜひこちらもご覧ください!
(こちらの記事にて実施していたアンケートは終了しました。ご協力ありがとうございました。)
【工場見学一時休止のお知らせ】新型コロナウイルスの国内感染拡大を受け、感染防止のため、当面の間、工場見学および場内全施設(ショップを含む)を休止させていただきます。見学・予約再開につきましては、日程が決まり次第、白州蒸溜所ホームページでお知らせ致します。(2021年10月4日現在)