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ウイスキーを片手に読書の秋を楽しみませんか?

2020年10月30日

こんにちは、森川ユタカです。
夕暮れが早くなり秋の訪れを感じるようになりました。
涼やかな秋の夜長は、読書を楽しむのにもぴったりですよね。
今回は「読書の秋」にちなみ、ウイスキー関連の書籍のなかから案内係おすすめの、伊集院静著『琥珀の夢』をご紹介します!


20201030_dokusyonoaki_top.jpg伊集院静著「琥珀の夢」


日本経済新聞に2016年7月から翌9月まで、「琥珀の夢--小説、鳥井信治郎と末裔」と題し連載されていた同書。
2018年には原作を元にテレビドラマ化されたことで、ご存じの方もいるかもしれませんね。
これはサントリーの創業者であり、国内初の本格ウイスキーを生み出した鳥井信治郎の飽くなき挑戦心と執念を感じられる生涯を描いた物語です。


20201030_dokusyonoaki_1.jpgサントリー創業者・鳥井信治郎


鳥井信治郎が生まれたのは1879年。江戸から明治に変わって間もなく、近代化が進んだ激動の時代です。
信治郎の「日本に洋酒文化を根付かせたい」という夢は、彼が丁稚奉公時代に心血を注いだ葡萄酒の製造・販売からスタートしました。
その後独立し、「赤玉ポートワイン(現在の赤玉スイートワイン)」での成功などを経て、やがて彼の情熱は国産ウイスキーづくりへと注がれていきます。

しかし、ウイスキーづくりへの挑戦は決して簡単なものではありませんでした。
当時ウイスキーは貴重なもので、本格的なウイスキーづくりは高い技術があり、気候や風土の適したスコットランドやアイルランド以外の地では不可能だと考えられていたからです。
また、蒸溜所の建設にも莫大な資金がかかります。
さらにウイスキーは仕込みから製品化まで数年を要するため、その間利益は一切ありません。
この当時としては無謀な挑戦ともいえる国産ウイスキーづくりに対し、社員たちは猛反対。
さらにその後起きる関東大震災により、ウイスキーづくりへの道のりはますます困難を極めました。


20201030_dokusyonoaki_2.jpg発売当時の「サントリーウイスキー白札」(左)、「サントリーウイスキー角瓶」(右)


しかし、信治郎が諦めることはありませんでした。
「わてはやる。ウイスキーをつくってみせる。」
その決意とともに巨額の借金をして山崎蒸溜所を建設。
さらに5年後には国産第一号の本格ウイスキー「サントリーウイスキー白札」を発売します。
しかし無情にも「白札」は煙の香りが強いと、当時の評判は芳しくなく、会社の経営は悲鳴を上げることになりました。
それでも彼は諦めることなく、数年に渡って数えきれないほどのブレンドや試行錯誤を重ね、ついに日本人の嗜好に合った「角瓶」が完成。
若き日に見た彼の夢が少しずつ実現していきます。

『琥珀の夢』では上下2巻にわたり、信治郎が人生をかけて一心に追い求めたウイスキーづくりへの想いが描かれています。
この物語の中でたびたび、信治郎が口にする「やってみなはれ」という言葉には、「失敗を恐れずに挑戦しなさい」という意味が込められていて、現在のサントリーのウイスキーづくりにも脈々と息づいています。
実は今も私たちが大切にしている価値観の1つなんですよ。

今回は、読書の秋におすすめの『琥珀の夢』をご紹介しました。
本を読むとさまざまな知識を得られるだけでなく、新たな価値観に触れることもできます。
特に今回ご紹介したような小説では、登場人物に思わず感情移入しながら読み進めることで、本の中の出来事を追体験して刺激を受け、自らの世界観が広がり心も豊かになりますよ。
今年の秋は、時間の流れとともに変化するウイスキーの味わいや香りを愉しみながら、ゆっくりと読書にふけってみてはいかがでしょうか。

・『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎 上/下』
伊集院 静(著/文)
発行:集英社
初版年月日:2017年10月10日

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