水筒の歴史
人間はいつの時代も身近に
水を備える手段を考え、
そのための容器を作ってきました。
では、水を持ち歩く場合は
どうしていたのでしょうか。
水を携帯するための容器「水筒」について、
その歴史を探ってみましょう。
命を支える
道具としての「水筒」
太古の昔から人々は水を貯える容器を作りだしてきました。とりわけ水を持ち歩くための携帯容器には知恵をしぼったに違いありません。水筒は昔も今も「軽くて持ち運びやすい」のが絶対条件です。そこでもっぱら利用されたのが「皮革」「ひょうたん」「竹」といった自然物でした。これらで作った携帯用水入れは、現在も実用にされているものが多いようです。

人類が皮革を利用した歴史は古く、紀元前3000年ごろには、すでになめし技術が発見されていたといいます。中国やヨーロッパでは古くから動物の皮革を縫い合わせて袋にし、液体容器として用いていました。
一方、天然の容器として重宝されたのが、ひょうたんです。ひょうたんの原産地は熱帯アフリカと推定されていますが、古くからタイ、中国、メキシコ、ペルーなど、世界各地で存在しており、日本にも縄文時代前期にはすでに伝播していました。
東アジアでは、もっぱら竹が利用されていました。日本ではひょうたんも使われましたが、竹筒もよく用いられ、現在の水筒の原型となりました。
江戸時代に入ると、それまでの実用主義は一変します。青竹製やひょうたん製も使われましたが、その一方で行楽や芝居見物に用いるための漆塗りや家紋入りなどデザイン重視の華やかな水筒が生まれたのです。
その後、明治30年(1897年)頃アルミ製の水筒が登場します。
命を支える道具から、
生活を潤す道具へ
戦後さらにプラスチック製、ステンレス製などの水筒が続々と登場します。その一方で、高度経済成長の波が押し寄せる昭和30年代になると、家庭の食卓には二重構造からなる「魔法瓶」が普及しはじめ、30年代後半には、一重瓶に断熱材をかぶせた携帯用の保温水筒が発売されました。50年代には、従来のガラス製魔法瓶に加え、日本で開発されたステンレス製魔法瓶が登場し、その後保温・保冷効果を備え、かつ頑丈で割れない携帯用魔法瓶が、それまでの保温水筒に代わって普及していきました。
参考文献
- 『文化人類学辞典』 弘文堂
- 『日本大百科全書』 小学館
- 『世界大百科事典』 平凡社
- 前川久太郎/著 『道具が証言する江戸の暮らし』 小学館
- 日本民具学会/編 『日本民具辞典』 ぎょうせい
- 朝倉治彦 他/編 『事物起源辞典』 東京堂出版
- 『年表で見るモノの歴史事典』 ゆまに書房
- 江坂 輝彌・芹沢長介・坂詰秀一/編 『新日本考古学小辞典』 ニュー・サイエンス社
- 独立行政法人 水資源機構 「水の資料館>水の道具>水筒」(http://www.water.go.jp/honsya/honsya/referenc/siryou/dougu/07.html)
- 国土交通省>土地・水資源局>水資源部(http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/index.html)
- 国際環境NGO FoE Japan>貿易と環境プログラム>「バーチャル・ウォーター」って何?(http://www.foejapan.org/trade/doc/040917.html)
- 東京大学生産技術研究所 沖・鼎研究室 「世界の水危機、日本の水問題」(http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/Info/Press200207/)
- 経済産業省>政策>地域経済産業「工業用水」(http://www.meti.go.jp/policy/local_economy/kougyouyousui/index.html)
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