体の中の水は、ただ体の中に溜まっているわけではありません。血液として体内を駆けめぐっていたり、細胞間を行き来したり、内臓や骨を作ったりして、常に動いています。また、動いているだけでなく、さまざまな方法で体外に出て行っているのです。
まず、私たちが知らない間に失われていく水分があります。私たちは、息を吐くときに、肺から常に水分を出しているのです。ガラスに息を吹きかけると、ガラスがくもりますが、これは肺から息とともに出てきた水分がガラスについて結露したものです。肺や気道は常に湿っていて、この水分が呼吸によって、1日に約400ミリリットルも失われています。
そして、皮膚からも水分は失われます。体内の水分が皮膚表面に達し、1日約600ミリリットルの水分が蒸発するのです。知らないうちに、合わせて1000ミリリットルもの水分が体から失われているのです。また、汗をかくことで水分が失われます。汗をかく量は周辺環境などによって大きく変動し、例えば1時間に1500ミリリットルもの汗をかく場合もあります。
さらに、わかりやすい水分放出として、尿や便の排出があります。健康な人の尿からは約1200ミリリットル、便からは約100ミリリットルの水分が排出されます。つまり、合計すると、少なくとも1日に2300ミリリットルもの水が体外に排出されていることになります。
1日に2300ミリリットル以上もの水が排出されているので、それを補わなければ、体内が水不足に陥ってしまいます。まず、私たちは、食事から水分を取っています。ご飯やサラダ、肉、魚、みそ汁、スープなどなど、ほとんどすべての食事には水分が含まれているので、1日の食事から約600ミリリットルの水を補うことができます。また、私たちは体の中で食べものを分解しエネルギーに変えていますが、そのときの化学反応によって水分ができます。これを「代謝水」または「燃焼水」といいますが、この水が1日に200ミリリットル。このほかに、1500ミリリットルの水を飲めば、失われた水を回収することができ、体内の水バランスが整うのです。ただし、汗をかいた場合はさらに多くの水分を補う必要があります。
とはいえ、きっちりと、排出した量と摂取する量を計算しながら生活しているわけではありませんね。その調整を腎臓がきちんとしてくれます。水分の補給が足りないときは、尿を濃縮して水の排出量を減らしているのです。逆に水分摂取量が多いときには、尿の量を増やして余分な水分を放出し、体内の水バランスを整えてくれています。
食べものには、どれくらいの水分が含まれているのでしょうか。いくつかご紹介します。食べ物にも多くの水が含まれていることが分かります。
【参考文献】
- 奈良昌治/著 『水でやせる』 新講社
- 鈴木宏明/著 『水のはてなQ&A55』 桐書房
- 女子栄養大学栄養科学研究所/編 『水と健康』 女子栄養大学出版部
- 『食材図典』 小学館
- 日本水産株式会社 「ニッスイアカデミー」
(http://www.nissui.co.jp/academy/index.html) - 高橋裕 他/編 『水の百科事典』 丸善 1997