水は、無色無臭で、なにも混ざっていない純粋なもののように考えられがちですが、純粋に水分子だけで構成された本当の「純水」というものは、存在しません。水はものを溶かす能力が大きいために、常に何かが溶けこんでいます。そのため同じ日本の水でも地域によって水質が異なるのです。
水の種類をいくつかの分類法で考えてみます。
飲料水を分類する基準の一つにpH(ピーエイチ)があります。これは水の中に水素イオンがどれだけ含まれているかを示す数字で、pH1は強い酸性、pH14が強いアルカリ性、その中間のpH7は中性ということになります。つまり数字が上がるにつれて酸性度が低くなり、7で中性、その後数字が上がるとアルカリ性度が高くなるのです。
身近なところで例を上げてみます。
・食酢 pH 2~3 酸性
・水道水 pH 5.8~8.6 弱酸性から弱アルカリ性
・石けん pH 7~10 アルカリ性
・人間の体液 pH 7.4 弱アルカリ性
・胃液 pH 1.2~2.5 酸性
水が酸性かアルカリ性かを調べる方法の一つにリトマス試験紙を用いるものがあります。リトマス紙を検水に浸し、青色になればアルカリ性、赤くなれば酸性というように判断できます。
硬水は英語では「hard water」といい、軟水は「soft water」といいます。水の硬度は「水中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量(カルシウムイオンとマグネシウムイオンの量)」を表したもので、「カルシウム量(ミリグラム/リットル)×2.5+マグネシウム量(ミリグラム/リットル)×4.1」で算出された数値で表すのが一般的です。この数値が高ければ硬水、低ければ軟水ということになります(炭酸カルシウム換算)。
硬度を分類する基準には、およそ以下のような目安があります。
・硬度100以下 軟水
・硬度101~300 中硬水
・硬度301~ 硬水
日本の水の硬度はおよそ20~60の間に入り、ほとんどが軟水です。硬水の代表的なものをあげると、フランスのヴォージュ地方の水「コントレックス」は硬度が約1468を超える超硬水、同じくヴォージュ地方から採水しているミネラルウォーター「ヴィッテル」も約315の硬度の硬水です。このように、ヨーロッパや北米などの水には硬度の高いものが多く存在します。
世界の水にさまざまな硬度の差があるのは、その水が流れる大地を形成する地殻物質が異なるからです。
水は、土壌を通って地層へ浸透、その中をゆっくり移動していきますが、この過程で、接触した岩石に水を媒介とした化学的風化作用を起こします。水の中に含まれる容存酸素や土壌を通過する際に吸収した炭酸ガスなどが主に作用し、溶解・酸化・加水分解・水和・炭酸化などの反応がおこり、岩石の化学成分が微粒の懸濁物質となってまたは完全に溶ける形で水に入るのです。石灰岩が岩盤となる地層を流れる水は、カルシウムやマグネシウムを多く含み、硬度が高くなります。一方、カルシウムやマグネシウムの含有率が低い花崗岩や結晶質岩盤の地層を流れる水の硬度は低めになります。
また、ヨーロッパや北米のように大陸の中をゆっくり移動する水は、それだけ地層と接触する時間が長いため、より多くの硬度成分を含む傾向があります。日本のように地形が急峻な国の水は、地層にとどまる時間がたいへん短く、それが日本の水を軟水にしている大きな要因の一つとなっています。
【参考文献】
- 都田昌之/監修 日本産業洗浄協議会/編 『初歩から学ぶ機能水』 工業調査会
- 久保田昌治・野原一子/共著 『わかりやすい浄水・整水・活水の基礎知識』 オーム社
- 谷腰欣司/著 『トコトンやさしい水の本』 日刊工業新聞
- J.Eアンドリューズ P.ブリンゴリム T.D.ジッケルズ P.S.リス B.J.リード/著 渡辺正/訳 『地球環境化学入門』 シュプリンガー・フェアラーク東京
- 榧根勇/著 『地下水の世界』 日本放送出版協会