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水の循環 地球を覆う水は、あらゆるところから蒸発し、雲をつくり、雨となって降り注ぎます。あらゆるものを溶かしていた水は、蒸発することにより清浄になり、降雨として再び地上に降りてくることで、私たちの暮らしを支えているのです。空と陸をめぐる水の循環に目をむけ、水の一生について考えてみましょう。

地球上の水の分布

地球上には13億3800万立方キロメートルの水があります。その内訳をパーセントで表示すると以下の通りになります。

地球の水のほとんどは海です。残りの大部分は氷河や地中深いところにある地下水として閉じ込められています。私たちがすぐ使うことができる川の水や地下水は、地球上にあるすべての水のたった0.01~0.02%ほどだと言われています。

地球上の水の分布
地球上の水の分布

水の一生

水の旅
水の旅
1)蒸発する

海からは常に莫大な量の水が蒸発を続けています。海面から蒸発した水は空気中に水蒸気として分散しており、気流に乗って移動しています。特に太陽からの輻射熱(※1)が強い赤道付近では大量の水蒸気が発生しており、季節によっては、これが台風やハリケーンに成長することもあります。
また、水は海からだけではなく、湖沼、河川、陸地からも常に蒸発しています。

  • ※1:
    輻射熱とは、放射熱とも呼ばれ、熱源から放射された熱が、物体に吸収して生ずる熱のこと。太陽光を始めとする宇宙から発せられた光線が物体の表面温度を上昇させ、その表面から2次的な熱を放射させ、その結果空気や水などの温度が上がる。
2)「雲の粒」の発生

水蒸気は、上昇にともなって上空の冷たい空気に触れて冷やされます。すると、水蒸気の形でいられなくなり、大気中にただよっていた微小な粒子(風に運ばれてきた花粉や、土ぼこり、ススなどのほこりや、海水から出た塩など)のまわりに集まって凝結し、小さなしずくになります。これが「雲の粒」で、雲はこの粒がたくさん集まってできたものなのです。

雲は、形状や高さにより、層状雲と対流雲に分類されており、雲の粒は上空の気温が0~マイナス20度くらいまでは水滴の状態であり、マイナス40度以下になると氷の粒になります。

雲は、このように水滴や氷になった粒が層になって集まってできています。このように、雲は海水や陸水が姿を変えて上空に浮かんでいるものであり、たとえば層状雲の場合、1000立法メートルの中におよそ50~500g、同じ大きさの対流雲の場合は200g~5kgの水を含んでいるのです。 水でできている雲が上空に浮かんでいられるのは、この「雲の粒」がおおよそ0.01ミリメートルと小さく、雲内に上昇気流があるからです。雨一粒(直径約1ミリメートル)をつくるのに、雲の粒はなんと100万個も必要です。

3)雨になって地上へ

雲の粒は、まわりの水滴をくっつけながら次第に大きくなります。上昇気流では浮かんでいられないほど雲粒が大きくなると落下し始め、落下しながらさらに雲の粒とぶつかりながら付着させて成長することを繰り返します。ますます大きくなった粒は速度を増しながら落下を続け、ついに0度以上の暖かい空気の層まで達したところで溶けて水滴になります。これが雨なのです。雨の粒が大きいほど落下速度が速くなるため、激しく降る雨になります。逆に雨の粒が小さいと落下速度が遅くなるため、霧雨になったり、しとしとふる小糠雨(こぬかあめ)になったりします。

氷の結晶としてただよっていた雲の粒が、同様に成長しながら氷の結晶を大きくしながら落下し、下降しても空気の温度が低いために氷のままで落ちてきたのが雪です。

ひょうやあられも、やはり氷の粒が成長してつくられたもの。積乱雲の中でできることが多く、雲の中で落下したところで風に吹き上げられ、雲の中を上下しながら雪だるま式に成長したものです。2~5ミリメートルをあられ、5ミリメートル以上をひょうと呼びますが、ひょうはかなり大きなものもあり、過去にはかぼちゃ大のものも降ったという記録があります。落下速度も速いため注意が必要です。

4)土壌を通って地下へ、流されて川や湖沼へ

地上に降った雨は、さまざまなルートで移動を続けます。

A)土にしみ込んで、ゆっくりと地下水になる

山や大地に降った雨の多くの部分は土壌にしみこんで吸収されます。地上にもっとも近い部分には落ち葉や生物の死骸、微生物などで形成された土の層があり、そこを通ると岩石の微粒でできた層になり、その下にはその土地を形成する母岩の岩盤があります。

地下水は、砂や砂利のような水を通しやすい地層(帯水層)にとどまって蓄えられていたり、地中の岩の間にある空間に蓄えられたりしています。地下水は、地球上の淡水の約30%を占めるほど存在量が多く、地盤を構成する要素にもなっています。

帯水層は地下水で満たされた地層であり、地下水の流れる経路にもなっています。地下水の取水対象となる、重要な地層です。地下水が浸透するスピードは、非常に水をとおしやすい砂礫の層で、およそ1秒間に0.1センチメートル。ごく細かい砂の層では1秒に0.01ミリメートル、更に水を通しにくい粘土の層ではその100分の1のスピードでしか浸透していきません。

また、地下水の流速を決める要素として動水勾配と呼ばれるものがあります。これは単にその地形の勾配を意味するのではなく、ある状態で存在している地下水の密度、圧力、高度などの要因から成るものです。例えば扇状地にある、水の通しやすい砂礫層にある地下水であれば、動水勾配は地表の勾配とほぼ同じとみなせるといいます。それをもとに、この扇状地の勾配を、自転車で登るのがちょっときついくらいの100分の1とすると、この地層を通る地下水の速度は、一年におよそ300mとなります。

このように地下水が地層を通過する時間はたいへん長く、地下に浸透するに従って接触する岩石を溶かし、その土地ならではの水に変化していくのです。

地下水を見る試み「GETFLLOWS(ゲットフローズ)」

サントリーは、様々な専門家と協働で、地下の水の流れを知り、シミュレーションするためのモデリングシステム「GETFLLOWS」の開発を進めています。
夫々の環境における相応しい水の使い方や、どのような森林整備が未来の地下水のためにより良いのかなどを考えるための大きな道標となります。

B)湧水となって地表へ

地下水は地中をゆっくりと移動していきますが、地層のなかで水を通しやすい層(帯水層)を流れていきます。地層は、水を通しやすい層(帯水層)と水を通しにくい層(難透水層)が重層的に重なってできていますが、難透水層と帯水層の境目が地表に出たとき、出口を得た水は湧き出し、湧水となります。湧水の多くは崖の下から湧いていることが多いのですが、これは崖があることで落差が発生し、地下水が出口を求めてそこからあふれたからです。一度ルートと出口ができれば、水は通りやすいところを通って集まるので、より大きな流れが生じていきます。湧水は他にも扇状地の先端や、表層にできたくぼみ、谷戸の発達した丘陵地帯では切り込まれた谷の奥などに湧き出します。

また、林の中をわき水が川のように流れていたり、大木の根の近くからこんこんと水が湧いているような場所がありますが、それも木と水の共生関係がつくり出した風景といえます。

また、地下水は井戸水としてくみあげられることによっても地表へ出てきます。井戸がくみ上げる地下水は不圧地下水・被圧地下水の2種類があります。地表面から最初の難透水層より上にある地下水を不圧地下水といい、それより下に位置し、大気圧以上の圧力を持った地下水を被圧地下水といいます。

C)川や湖沼へ

土壌にしみこんだ水のうち、深い層までおりるものは、やがて地下水脈に合流します。そして地下水脈の流れにのって湖沼や川に流出します。湖沼から流れ出た水は流れをつくり、川になります。また、川の水は一部が再び伏流水として地中へ入ったり、またそれが別の場所で川に合流したりと、さまざまな出入りがあるのです。伏流水は、地中(特に川底の下)を移動する水のことです。「流水」といっても、川のように早く流れているわけではなく、地下水同様一日に1~数メートル、ゆっくりと流れています。

D)地表を流れて、やがて川へ

降った雨の一部は地表を流れてそのまま小さな流れに合流、次第に大きな流れとなって川となります。また、直接湖や沼、川に流入するものもあります。市街地に降った雨は雨水溝や下水溝に流入、やがて川へ合流するのです。

5)再び海へ

川に合流した水は、そのまま旅を続けて海へ出ます。地下水脈に合流した水が、地下を旅して直接海へ出るものもあります。

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【参考文献】

  • 平澤猛男/著 『水は永遠の友』 研成社
  • 小倉義光/著 『一般気象学』 東京大学出版会
  • 左巻健男/著 『水と空気の100不思議』 東京書籍
  • 石原信次/著 『知っておきたい水のすべて』 インデックス・コミュニケーションズ
  • 中川鶴太郎/文 村田道紀/絵 『氷・水・水じょう気』 岩波書店
  • 北野康/著 『新版 水の科学』 日本放送出版協会
  • 榧根勇/著 『地下水の世界』 日本放送出版協会
  • 水みち研究会/著 『井戸と水みち』 北斗出版
  • 和達清夫/監修 『最新気象の事典』 東京堂出版

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