災害が起きると、何より急がれるのがライフラインの確保・復旧です。ライフラインとは、生活に不可欠な水道、電気、ガスなどの供給システムの総称で、その名の通り「生命線」です。水道管がなんらかの形で被害を受ければ、たちまち蛇口の水は断たれ、水のない不自由な生活を強いられることになります。
渇水、水質事故等、断水に至るまでの原因はほかにもありますが、影響が大きいのは災害による水道施設の損壊です(※1)。地震大国である日本では、特に地震に伴う影響が懸念されており、実際にこれまでも各地で大きな被害が出ています。
- ※1:災害・事故等に伴う影響について
- ●地震…………おもに水道施設の破損が原因で発生します。災害が突発的に生じるため、地震の規模によっては被害が広域におよび、その影響が長期化する点がほかの災害と大きく異なります。
- ●台風、豪雨…洪水等による施設の破損・流出、広域的な停電による水供給機能の停止により発生します。
- ●水質事故……有害物質を含んだ汚水の水源への流出、廃棄物の不法投棄や車両事故に伴う水源の汚染等によって発生します。
平成15年に発生した「宮城県北部の地震(7月26日、マグニチュード6.4・震度6)」では、1県8市町村、約1万3700戸が断水し、完全復旧には22日が要されました。翌16年の「新潟県中越地震(10月23日、マグニチュード6.8・震度7)では、県内の45の水道施設が影響を受け、約12 万9800戸が断水しました。
「阪神・淡路大震災(平成7年1月17日、マグニチュード7.3・震度7)」は、大都市における直下型地震だったこともあり、被害はさらに甚大でした。死者6000人以上を出したこの震災では、神戸市のほぼ全世帯を含む、9府県81水道の約130万戸が断水。完全復旧までは3か月もの日数を要し、水が断たれることの深刻さが、改めて浮き彫りになりました。
日常生活において、私たちは1人1日あたりおよそ240リットルの水を使っています。対して阪神淡路大震災の時、震災直後の1週間、給水量は1人1日あたりわずか16リットル。2週間経った時点で、1人23リットル程度を得られたようでしたが、それでもふだんの10分の1にすぎず、被災した人々は、不自由なく水が使える生活の有難さをつくづく感じたと語っています。
では、水が断たれたときにはどうすればよいのでしょうか。災害はいつ、どこにでも起こりうるとして、各自治体でも様々な対策を行っています。
●給水拠点の設置
東京都では緊急時の給水に備え、2キロメートルの距離内に1か所の割合で給水拠点を設置(平成17年10月現在195か所)しています。うち74か所が震災対策用応急給水槽となっており、全体で約102万立方メートルの飲み水が確保されています。これは、都内約1200万人に対し1日3リットルの給水を行うとして、約4週間分の量に相当します。
●災害時応急用の井戸を設置
非常時における生活用水、あるいは飲料水の水源として、最近は井戸が見直され、防災用の井戸を所有している学校や公園もあります。神戸の震災時には民家の井戸水が役に立ったこともあり、地域内の避難場所に新たに井戸を設置し、「災害時応急井戸」として、井戸のある市民に登録を求める自治体も増えています。
●雨水の有効利用
東京ドームは、屋根の約1万6000平方メートルに溜まった雨が、周囲の水路を通って貯水槽に集まるシステムで、最大3000トンの貯蔵が可能です。そのうち消防用水として常に1000トンを確保し、残りは水洗トイレの洗浄用水として使っています(ナゴヤドーム、福岡ドーム、大阪ドームも同様の施設があります)。
地域に給水拠点がない場合や震災直後の混乱時には、各家庭で汲み置きした水が役に立ちます。最低限の飲み水として考えると復旧、救援まで最低3日かかると計算して1人1日3リットルで、1人分9リットルが目安です。ペットボトルの水を備えておくのもよいでしょう。
対策
・水道水を汲み置きする
・ポリタンクに水をためる
・容量の大きい洗濯機(30~50リットル)や浴槽(200~300リットル)に、常に水を張る
・ペットボトルの水を用意する
災害は避けることはできませんがその事態に備えて最低限の準備をすることは大切です。
【参考文献】
- 『平成16年版 日本の水資源』 国土交通省
- 『平成17年度 日本の水資源』 国土交通省
- 国土交通省
(http://www.mlit.go.jp/) - 内閣府防災情報
(http://www.bousai.go.jp/) - 東京都水道局
(http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/) - 総務省消防庁
(http://www.https://.jp/)