自分でいれるお茶やコーヒー、紅茶などのほかに、手軽な飲料として清涼飲料水があります。清涼飲料水とは、乳製品類とアルコール飲料以外の、炭酸飲料、果実飲料、野菜飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、乳性飲料(乳固形分3パーセント未満のもの)、機能性飲料などの総称だと考えてよいでしょう。
近年では消費者の嗜好の多様化に合わせるように、多種多様な清涼飲料水が市販されていますが、清涼飲料水の原料の中でも水は欠かせないものです。製品の特性を損ねないように水の成分を調整するなど、水にこだわりを持ってつくられる製品もあります。
いつでもどこでも手に入るようになった清涼飲料水ですが、それぞれの飲料の特徴を知ったうえで飲用することが大切です。
その手がかりは、容器に記載されている表示にあります。原材料を知りたいときは「原材料名」の表示を確認するとよいでしょう。
原材料は、各種法律で表示方法が細かく決められています。
このほかに、「栄養成分表示」として数種類の栄養素を表示してあるものがあります。
ここにはどんな栄養素がどのくらい含まれているかが書かれています。「カロリーオフ」や「ビタミンC入り」などといった特長を製品に記載する場合には、すべてこの「栄養成分表示」を明記しなければなりません(※1)。
栄養成分表示では「エネルギー」「たんぱく質」「脂質」「炭水化物(※2)」「ナトリウム」の5項目と、特長として記載した栄養成分の含有量(「ビタミンC入り」の場合はビタミンCの含有量)が必須表示となっており、その成分が含まれていない場合も0として表示されます。
- ※1:栄養成分の特長を記載しない場合は「栄養成分表示」を記載しなくてもよいので、すべての飲料水にこの表示が記載されているわけではない。
- ※2:炭水化物の代わりに「糖質」と「食物繊維」で表示されることもある。
健康志向の高まりのなかで、糖分を含まない茶系飲料や健康に有効な成分を添加した機能性飲料の人気が高まっています。
機能性飲料とは、一般的にカテキン、アミノ酸、各種ビタミン等の、健康増進に役立つ機能性素材を含んだ清涼飲料水のことを指しますが、法律上の定義はありません。機能性飲料には、食品衛生法の保健機能食品制度に基づいた保健機能食品のものや、そうでないものもあります。
保健機能食品には、特定保健用食品(※3)と栄養機能食品(※4)とがあります。
- ※3:特定保健用食品は、体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含み、その食品をとることによって保健効果(コレステロール値を正常に保つことを助ける、お腹の調子を整えるのに役立つ、など)が期待できる食品のこと。有効性や安全性等などが審査され、国が個別に許可をする。
- ※4:栄養機能食品は、体の成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分の補給・補完を目的とした食品のこと。対象となる栄養成分は、ミネラル5種類とビタミン類12種類(2008年12月現在)。栄養成分の含まれる量が基準の範囲内で、定められた表示方法に従っていれば個別に許可を受ける必要はない。
ここでは機能性飲料などで注目されている栄養成分のうち、カテキン、アミノ酸、ビタミンCの働きを紹介します。
1)カテキン
緑茶に含まれるポリフェノールの一種で、茶の渋み成分です。カテキンは体脂肪率の増加を抑制する効果が確認されています。また、さまざまな病気や老化の原因といわれる活性酸素を除去する抗酸化作用も認められています。
2)アミノ酸
私たちの体の中には約10万種類のたんぱく質があり、そのすべてが20種類のアミノ酸から構成されています。私たちが肉や魚を食べると、そのたんぱく質はいったんアミノ酸に分解されてから再びたんぱく質に組み換えられます。アミノ酸には「必須アミノ酸」「準必須アミノ酸」「非必須アミノ酸」があり、「必須アミノ酸」は体の中で作ることができないので食事からとる必要があります。
準必須アミノ酸も、特に成長の早い乳幼児期で、体内での合成量が十分でなく不足しやすいので食事等から摂取する必要があります。定義によって異なりますが、トリプトファン、リシン(リジン)、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシンの8種類を必須アミノ酸、アルギニン、システイン、チロシン、ヒスチジンの4種類を準必須アミノ酸、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、グルコサミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリンの8種類を非必須アミノ酸と区分することができます。
20種類のアミノ酸はたんぱく質を構成する働きのほかに、それぞれが重要な役割を果たしており、たとえば運動をするときのエネルギー源になるものなどがあります。
3)ビタミンC
体の組織細胞、血管、皮膚、粘膜、骨などの成長と傷の修復に大切な、コラーゲンの生成を促進する働きがあると言われています。また、免疫力を高め、かぜをひきにくくするなどの効果もあるとされています。
ビタミンCはくだものや野菜に多く含まれているため、それらを原料とする果実飲料や野菜飲料にも含まれています。またこれは緑茶の主要成分のひとつでもあります。
飲料の「おいしさ」の要素のひとつに「甘み」があります。「甘み」を加えるためには砂糖などの糖分を使いますが、砂糖などの糖分はカロリーと密接な関係があります。含まれる糖分の量が多ければカロリーが高く、少なければカロリーは低くなります。
カロリーとはエネルギー(熱量)の単位のことです。たんぱく質・脂質・炭水化物(糖質)の3大栄養素はどれもエネルギーになり、カロリーが発生します。飲料水におけるカロリーのほとんどは糖分によりますが、食品や飲料のパッケージに「砂糖不使用」と表示されていても、脂質が含まれていたり、砂糖の代わりに別の糖分を使用していたりすると、カロリーがゼロということにはなりません。こうしたことを確認するためにも、原材料表示や栄養成分表示を正しく理解し利用することが大切です。
【参考文献】
- 厚生労働省
(http://www.mhlw.go.jp/) - 社団法人 全国清涼飲料工業会 「のみもの情報館」
(http://www.j-sda.or.jp/index03.htm) - 味の素株式会社 「アミノ酸大百科」
(http://www.ajinomoto.co.jp/amino/index.html??top3=aminoIndex2) - 『清涼飲料の常識』 社団法人全国清涼飲料工業会
- 社団法人全国清涼飲料工業会/著 『清涼飲料関係統計資料』 社団法人全国清涼飲料工業会
- 食べもの文化編集部/編 『清涼飲料上手な飲み方選び方』 芽ばえ社
- 大森正司/監修 『からだにいいお茶のすべて 日本茶・紅茶・中国茶・健康茶』 日本文芸社
- 辻村卓/監修 『ビタミン&ミネラルバイブル』 女子栄養大学出版部