貴重な水資源を守るために、水を汚さないための工夫も必要です。
水環境の主要な汚染源の一つに各家庭から出る排水があります。生活雑排水も水質汚染において無視できない存在となっています。屎尿と異なり、生活雑排水(※1)からの汚染負荷は工夫すれば減らすこともできます。
浄化槽や下水処理場の処理能力には限界があるので、家庭からの負荷を減らすことも大切です。
生活雑排水は台所、洗濯、風呂などから排出される水をいいますが、なかでも特に水を汚しているのが台所の排水です。台所排水には、食品の食べ残しや残りかすが含まれ(有機物)、水中の微生物はこの有機物を餌にしてエネルギーを得ています。その際、水中の酸素が使われるため、有機物が多いほど、酸素使用量も増えることになります。場合によっては水中の酸素が欠乏し、魚などの生物が棲めない状態になってしまいます。
この有機物による汚染の程度を示す指標として、生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand: BOD)(※2)などが用いられます(水の汚れが大きいほど、BOD値は高くなる)。
コイやフナなどの魚が棲める水質のBOD値は5ミリグラム/リットル以下、ヤマメやイワナなどの魚が棲める水質のBOD値は2ミリグラム/リットル以下とされています。これに対し、たとえばラーメン汁のBOD値は約27000ミリグラム/リットル、みそ汁のBODは約39000ミリグラム/リットルです。もし、汚れた水をそのまま川に流した場合、魚が棲める水質になるまで薄めるには、膨大な量の水が必要になります。
<台所から出る汚水別・魚が棲める水質に戻すために必要な水量>
みそ汁1杯(200ミリリットル) | 1600リットル(浴槽8杯分) |
---|---|
牛乳コップ1杯(180ミリリットル) | 2800リットル(浴槽14杯分) |
天ぷら油(500ミリリットル) | 150000リットル(浴槽750杯分) |
ラーメンの汁(300ミリリットル) | 1600リットル(浴槽8杯分) |
生活排水による水質汚濁を防止し、水源をきれいに保つためには、私たち1人ひとりの日々の心がけが不可欠であることは、いうまでもありません。
東京都では、家庭で実践できる生活排水対策として、「雑排水の汚濁負荷削減指針」を挙げています(以下に引用)。生活排水によるBOD負荷量は、一人ひとりの心がけしだいで、大きく減らすことも可能です。
<雑排水の汚濁負荷削減指針>
1)台所からの汚濁負荷の削減
-
(1)調理くずや食べ残しは、(くずとりネットなどで)回収して流さないように努めること。
-
(2)食器や鍋等のひどい汚れや油は、紙等で拭いてから洗うように努めること。
-
(3)味噌汁やめん汁等は、残して捨てることのない量を作るように努めること。
-
(4)使えなくなった油は、流しに流さないように努めること。
-
(5)台所から出るゴミを粉砕して水に流すディスポーザーを使用しないこと。
2)洗濯からの汚濁負荷の削減
-
(1)洗濯は生分解性の高い石けんや無リン洗剤を適量使うよう努めること。
-
(2)洗濯は、糸くずを取る糸くずフィルターを付けるよう努めること。
3)側溝からの汚濁負荷の削減
-
(1)家の前の側溝には、ゴミを捨てないこと。
-
(2)側溝の清掃をするよう努めること。
4)河川への汚濁負荷の削減
-
(1)河川には、家庭から出る廃液やゴミを捨てないこと。
【参考文献】
- 『平成17年度 日本の水資源』 国土交通省
- 国土交通省ホームページ(http://www.mlit.go.jp/)
- 東京都水道局ホームページ(http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/)
- 東京都環境局ホームページ(http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/)
- 国土交通省関東地方整備局(http://www.ktr.mlit.go.jp/index.htm)
- 都築俊文・伊藤八十男・上田祥久/共著 『水と水質汚染』 三共出版
- 山本忠煕/著 『不思議な水の科学と生活』 文芸社
- 北野大/監修 『知っているようで知らない「水」の不思議』 大和書房
- 『環境問題総合データブック2004年版』 生活情報センター
- 『女性の暮らしと生活意識データ集2005年版』 生活情報センター
- 東京都水道局ホームページ~PR情報~パンフレット~節水の習慣:上手に使って大切な水
(http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/water/pp/syuukan/index.html)