2025年4月11日
#952 チェスリン コルビ 『だからここにいます』
勝利に繋がる2戦連続のトライを決めたコルビ選手。弾むような、楽しそうなプレーに、今後へのさらなる期待が高まります。(取材日:2025年4月上旬)
◆一貫性を出せている
――三重ホンダヒート戦のトライはカッコよかったですね
まずトライが取れて良かったです。このようなシチュエーションになって、チームに貢献できて良かったです。チームに貢献することが、大事なことだと思っています。
――トライに繋がるキックも上手くいったんですね
結果的には良かったです。そんなに強く蹴るつもりはありませんでした。蹴った瞬間はデッドボールラインを出ちゃうと思ったんですけれど、ラグビーボールのバウンドでトライゾーンに残ってくれて良かったです。
――あのプレーを見ていて、ボールもどこにバウンドするか分からない、コルビ選手もどこに行くか分からなくて、ラグビーボールのようにプレーしていると感じました
少しあるかもしれないですね(笑)。ポジションはどこでもそうですが、自分自身でもビックリする時があります。
――昨シーズンはまだ100%出せていないと言っていましたが、今シーズンはどうですか?
不思議な感じというか、昨シーズンは怪我もありましたが、今シーズンは一貫性を持って、毎週チームに貢献したいと思っています。シーズンのスタートの時はあまり良い感じではなく、1週間、2週間と怪我で出られない時もありましたが、フォーカスしているところは、コンディションを整えて、チームが成功しようとしていることに貢献するということです。
具体的にはリハビリをしてすぐ戻ること、自分のベストのフィジカルで、メンタルも維持していくこと。ここ4試合で一貫性を出せているのは、良い状態だと思っています。ここから成長して、シーズン毎に上げていければと思っています。
――トライの数はすでに昨シーズンを超えていますね
全員がトライをしたいという気持ち、チャンスが来たらトライをするという気持ちがあると思いますが、個人的にはそういう考えではなくて、トライをしなくてもパフォーマンスが悪いというわけではありませんし、自分がトライしなくても、違う方法でワンチームに貢献することにフォーカスしています。チャンスが来れば、もちろんトライをしたいですけれど。
◆このゲームの美しさ
――今の状態はかなり調子が良い状態ですか?
良いメンタルで、良いフィットネスで、良い状態だと思います。ここ数週間はチームとしても良い状態だと思います。今は大事な時期ですし、今シーズンの負けから学ぶこともありました。学べているからこそ、成長できている部分もあると思います。ただ、勝利に対して謙虚にやるということ、そして次の週に向けても、ずっと成長していかなければいけないということは変わりません。
――具体的に学んだことはどんなことですか?
まず、言葉ですね(笑)。それを学べれば、全てが簡単になります。フランスで7年、そして南アフリカから日本に来て、フォワードとバックスのワークレートの素晴らしさ、激しさ、昨シーズンの段階で、自分の中でそれらの部分をステップアップしていかなければいけないと思いました。そういう中でやってきたことは、きっとインターナショナルでも通用すると思いますし、フィットネスはインターナショナルに行っても心配していない部分です。それらが間違いなく上がったと思います。
――プレーオフ進出へ向けて、いま感じるチームの勢いはどうですか?
今の状態を見ていれば、間違いなく進めると思います。ただ、プレーオフ進出だけでなく、リーグで優勝することが目標です。それがこのクラブでの成功だと思っています。このシーズンで負けた回数については誰もが慣れていないと思いますが、それがラグビーですし、次の週にまたチャンスが来るということが、このゲームの美しさだと思います。そこで自分たちを証明していくことが必要です。プレーオフに進むことは間違いないですが、あまり先のことまで考えずに、まずは今週クボタとの大きな試合があるので、それに対しで準備をしていくこと。プレーオフはその先にあると思います。
◆ダディー、ダディー
――いまご家族は南アフリカに帰っているということで、精神的にはどうですか?
妻と子どもたちが遠く離れているのは、影響はありますね。妻も仕事があり、子どもたちも学校があります。昨シーズンと比べると、今シーズンは5週やったら1週のバイウィークがあるので、そのバイウィークで南アフリカに帰ることができます。昨シーズンは、クリスマスと1月の最初にしか会えなくて、次に会えるのは5月というスケジュールだったのが、今シーズンは定期的にバイウィークが入ってきています。タフなシーズンであり、近くで子どもの成長を見届けられないことは残念ですが、このチームにいられて嬉しいですし、チームのためにフォーカスすることは変わりありません。
――南アフリカに帰ると、やはり気持ちが落ち着きますか?
ホームという感じがしますね。自分の母国ですし、家族や友だちがいて、長い間帰る時は特別ですね。妻や子どもたち、両親と会えるので良いですね。
――以前息子さんはラグビーをやるかもしれないと言っていましたが、どうですか?
プレーして欲しいですが、やりたいことをやらせようと思っています。ラグビーはフィジカルなスポーツなので、どういう環境に自分が置かれるのかを理解しないといけないと思います。やりたいことをサポートしたいと思っています。チャンスとして、息子が成長した時に多くのチャンスがある環境をつくるということが、自分の責任だと思っています。いま息子は2歳半で、車が好きですね。もしかしたらF1に行くかもしれません(笑)。
――コルビ選手がラグビーをしているということは理解していますか?
はい、家に帰れば週末はラグビーを見ているので、パッと見た時にラグビーが映っているので理解していると思いますし、サンゴリアスの黄色いジャージとかスプリングボクス(南アフリカ代表)のジャージを見ると「ダディー、ダディー」と言うので、理解していると思います。
◆誇りを持ってもらえるように
――サンゴリアスというチームもホームに感じてきていますか?
はい。でなければ、ここにいません(笑)。良いクラブですし、パフォーマンスだけじゃなくて、いろいろなことを大切にしてくれていると感じます。家族が良ければ自分も良くて、パフォーマンスに繋がると思います。良い人たちと一緒にいることも大事なことですし、外国人だけでまとまっているチームもありますが、このチームは関係なく仲良くやっているので、良いと思っています。
――今シーズンも残りわずか、いまの目標は何ですか?
まず今週に向けて準備をして、クボタ戦のメンバーに選ばれればしっかりと準備をして、その次のバイウィークを楽しみたいと思います(笑)。ラグビーについて言うと、自分たちのタスク、目標、チームと会社の目標にフォーカスして、ジャージを誇りに思う、OBの方たちにも誇りに思ってもらえるように、東京でも大阪でも場所は関係なく、誇りを持ってもらえるようにパフォーマンスすること。あとは全てにコミットして、最善を尽くす、ベストを尽くす。そして成功に対して、ハングリーにやっていくことです。
――それをやるためにいちばん大事にしていることは何ですか?
ハードワークですね。練習でのハードワーク、週を通してのハードワーク。それをゲームに繋げることです。まずは週をかけてハードワークして、試合で出すことです。
――楽しそうに見えますね
はい、楽しいです。怪我がない時は楽しいですね(笑)。健康でいる時にはすべてが簡単で、チャレンジとしては怪我をした時ですね。勝つと雰囲気やムードが良くなって、今シーズンは両方あったと思いますが、負けた時の味も分かったと思いますし、勝った時の味も分かったと思うので、確実にいまは楽しいラグビーをやっています。それは大事なことです。だからここにいます。
(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:石森大雄)
[写真:長尾亜紀]