2025年3月28日
#950 尾﨑 晟也 『勝つために泥臭くひた向きに』
よもやの3連敗。チームがいちばん苦しい中で、中心選手のひとりである尾﨑晟也選手に、自身とチームの現状を聞きました。(取材日:2025年3月下旬)
◆インディビジュアルのタックル
――コベルコ神戸スティーラーズ戦の最後の逆転負けのインパクトは?
正直な気持ちとしては、本当にとても落ち込みましたし、とっても悔しい気持ちでした。
――負けず嫌いとしては悔しいですね
そうですね。今シーズンは負けが続いていますけれど、負けるということ自体が僕自身とても嫌で、誰でもそうだと思いますけれど、そこはとても悔しい気持ちでいっぱいです。
――点は取るけど取られるという状況が続いていますね
やっぱり失点数を見ても、かなり点を取られていると思いますし、インディビジュアルのタックルのところで抜かれているシーンが、今シーズンはとても多いと思います。タックルの成功率がめちゃくちゃ低いかと言われたら、低くない試合もあるんですけれど、大事な場面、勝負を決めるような局面などのシーンで簡単に抜かれてしまっていたり、粘り強さがなかったりしています。それが今の自分たちの現状なので、それをもっと深刻に受け止めなければいけませんし、本当にひとりひとりがインディビジュアルのタックルの成功率を上げることに対して、もっと必死にならないといけないと思います。
――選手のみんなも同じように感じているのでしょうか?
試合の後もそうですけれど、雰囲気的にも精神的にも苦しいシーズンだとは感じています。でもシーズンが終わったわけではないですし、自分たちとしては神戸戦終了後の円陣でも、康介(堀越)が「終わり方を自分たちで決める」と言っていましたし、ここからどうするかが大事なので、本当に目の前のことをひとつひとつクリアしていく、やっていくということが大事になってくると思います。
――そこは練習でも感じるところですか?
そうですね。今週のレヴズ戦に勝つためにどうやるかということを、みんなが考えて練習していたと思います。そういう雰囲気はありました。
◆フォーカスを自分に向ける
――その一方で、"相手がどうであれ、これが俺たちのラグビーだ"という方向性はありますか?
やっぱり"アグレッシブ・アタッキング・ラグビー"がうちのチームの根底にあるものだと思うので、それを出すために、プレシーズンからずっといろいろな準備をしてきた中で、それを「100%出せているか」と言われたら、そうではないのかなと自分の中で感じる試合もあります。けれど、そこのマインドセット、「自分たちのラグビーはこうだ」というところは、ブレてはいけないところだと思うので、そこで全員が同じ絵を見られるように、毎回準備しなければいけないと思います。
――全員が同じ絵を見ることが出来ていますか?
全体的には見ることが出来ていると思いますし、ゲームのプランや細かいところは、1週間かけて準備しています。そこのコミュニケーションはありますし、自分たちのプランを信じて遂行するというところは、出来てきていると思います。
――大変な状況ですが、長い目で見た時に今、自分たちはどの辺にいると思いますか?どういう試練を与えられていると思いますか?
僕自身、サンゴリアスに入団して初めての経験というか、こんなに負けたこともなかったですし、上手くいっていないというシーズンが初めてで、もがいて苦しんでいる状況ですし、自分自身のパフォーマンスも納得のいくものじゃないです。自分が経験したサンゴリアスの中ではいちばんキツいシーズンかなと思いますが、自分自身も含めて選手は全員必死にやっていると思います。
――ここで大切なことは何ですか?
やっぱり"フォーカスを自分に向ける"ことだと思うので、矢印をひとりひとりが自分に向けて、本当に自分に足りないものをちゃんと受け止めて、そこに対しての努力、それをしっかりとやらないと、このチームの成長はないと思います。勝って当たり前というマインドを持っていたわけではないですが、本当にリーグワン全体のレベルも上がっていますし、そこをもう一度ちゃんと受け入れて、勝つためにもっと必死にならないといけないと、自分自身も含めてですけれど、とても感じます。
◆勝つための準備
――コベルコ神戸スティーラーズ戦ではトライやトライに繋がるラストパスがあって、ようやく"らしさ"が出てきたのではないかと思いますが
今シーズンは自分自身のパフォーマンスに、ぜんぜん納得がいっていなくて、いろいろな原因や要素はあるんですけれど、自分のパフォーマンスを上げることにもっとフォーカスして行きたいと思います。そこがひとりひとり上がってくれば、本当に強いチームになってくると思いますし、でもそれが出来ていないのが現状だと思います。ゲームに出る以上は、ゲームに出ている選手のパフォーマンスがもっと伸びてこないといけないと思いますし、それが今の自分たちの実力なので、今までとパフォーマンスが違うところのギャップを、しっかりと埋めていかないといけないと思います。
ひとつひとつの判断、試合中の「ここはパス」「ここはキャリー」という判断が、自分もそうですけれど上手くいっていなかったとシーズン序盤は感じていました。そこはコミュニケーションもひとつの原因で、ゲームに対する準備の段階でもっと合わせることが出来たと思います。
――そこは改善しつつありますか?
はい、そこの改善は毎週しています。けれど、もっと合わせなければいけませんし、それが勝つための準備だと思っています。もういつも通りの感じでいって勝てるようなチームじゃないですし、そこをもっと自分たちで追及しないといけないところかなと思います。
――「ウイングとしてゲームを支配する役割」についてはどうですか?
それはコミュニケーションだったり、どういうところにスペースがあるかを把握するという話ですけれど、そこは変わらないですし、ただそれを上手く伝えられなかったり、空いているスペースに上手くアタック出来なかったりしました。そういったところが自分に上手くボールが回ってこないという原因にも繋がっているので、もっともっとやらなければいけないと思っています。
◆圧倒的に引っ張っていけるようなパフォーマンス
――いま話したことはチームに共有している課題ですか?
チームとしては、同じ絵を見てアタックするということはレビューでも挙がっていますし、自分たちのスタイルはこうだというミーティングもしているので、そこは課題としてあります。
――ディフェンスについて今チームとしてはどんな課題が出ているんですか?
ゲームのシチュエーションによリます。1対1のタックルの部分で、いくらシステムを組んでもひとりのタックルミスでラインブレイクされたり、そういう状況で変わってきます。結果として、「そのタックルで止めていればこのシステムは上手く行っていたよね」という話になってきます。そこは難しいんですけれど、両方の精度をもっと高めていくことが大事だと思いますし、あとは勝負の綾というか、そういったところの勝負強さなのか、今は競った場面で負けるシーンが多かったり、勝負所で相手に転がっている部分があるので、そういったところで「ここだ」というところをチーム全体で理解しなければいけないですし、どういうプレーをしなければいけないかということを、やっていかないといけないと思っています。
――そういう時にリーダーシップを発揮すべき選手のひとりでもありますよね
そうですね。ゲーム中はゲームリーダーがいて、やることを明確にしてくれるので、自分はどちらかと言うと、プレーで引っ張って見せていかなければいけないという立場になります。もっと圧倒的に引っ張っていけるようなパフォーマンスを自分が出さなければいけないと思っています。今はそこで自分もモヤモヤしている部分もあります。
――改めて自分の課題、そしてそれがクリアになった時のイメージはどんなものですか?
アタックではもっとクリアなコールというか、内側の選手を助けるようなクリアなコールを出してあげるというところと、自分のボールタッチの回数とかボールキャリアの質をもっと高めていく。ディフェンスについては、今はアウトサイドにボールが集まるラグビーをどこもしてきますし、それに対してのディフェンスの粘り強さ。ウイングがコントロールして、ウイングに対してのタックルが重要になるので、そこのパフォーマンスをもっと上げていかなければいけないと思っています。
◆速くなっています
――今年の7月で30歳になりますね
あまり特には意識していませんが(笑)、もう30歳かという感じですね。
――身体的には全く問題はありませんか?
全く問題ないですね。まだまだ成長していると思います。
――足は速くなっていますか?
速くなっていますし、筋力的にもとても数値が伸びていたりしているので、30歳になったからどう、ということはないですね。
――この後の目標、イメージは?どんなことを描いていますか?
個人としてはもっと圧倒的なパフォーマンスを、自分自身に求めていきたいと思っていますし、それはアタックでもディフェンスでもチームを引っ張れるようなプレーをどんどんやっていきたいと思っています。チームとしては、本当に目の前の1試合1試合を勝つために、1日1日の練習を泥臭くひた向きに取り組む。本当に目の前のことにこだわってやることが大事だと思うので、先のことは考えられませんが、ひとつひとつにフォーカスして、そこに対して100%でチームとして臨んでいくことが大事かなと思います。
――今日の練習ではそれが出来ましたか?
はい、出来ました。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]