2025年2月 7日
#943 タマティ イオアネ 『突き抜ける』
出場する度にその溢れるパワーを発揮するイオアネ選手。「日本でいちばんフィジカルが強い選手になる」という目標に、どのくらい近づいたでしょうか。(取材日:2025年2月上旬)
◆ハッピーとサプライズ
――今シーズン2勝目おめでとうございます。静岡戦での逆転トライは特にチームに勢いをつけたと思いますが、自分ではどうですか?
ありがとうございます。トライのシーンはエッジにいて、ボールをもらいましたが、真ん中にいたフォワードがハードワークしてくれたので、私はボールを取って2mくらい走ったという感じです。
――ボールをもらうと必ずゲインしていて、相当調子が良く見えますが
ハッピーとサプライズがあります。プレシーズンから1試合で40分以上はプレーをしていなかったので、スタートから出場して、全体的にはハッピーなパフォーマンスだったと思います。
――静岡戦は61分のプレー時間で、もっとプレーが出来そうに見えましたがどうでしたか?
感覚は良かったです。週の初めに足に少しタイトな部分があって、マネジメントをして対応して、週末に長い時間プレーが出来たと思います。60分のところで足が少し気になって、まだ長いシーズンが続くので、そこで無理をする必要はないかなと思いました。次にまたプレー出来るチャンスがあれば、もっと長い時間プレーが出来るようになればと思っています。
――プレーがとてもシンプルに見えました。動きに無駄がなく、難しいことをやらない。それは意識してやっていたんですか?
コーチ陣からは、"ゲインラインを超える"という課題のみ与えられていました。ボールタッチを増やして、シンプルにプレーしました。ハードキャリーして、ハードタックルするということが自分の仕事です。小さい頃からそのスタイルでラグビーをやっています。
◆コンタクトが好き
――以前オフ・ザ・ボールの動きが課題だと言っていましたが、そこは改善されましたか?
まだ一貫性はないかなと思います。でも良くはなっています。静岡戦でも良くなっていたと願っています。
――なぜゲイン出来るんですか?
週を通して練習しているところです。ジムでトレーニングして、個人練習をして、それを試合で出す、という感じです。
――身体面とテクニック面は、その練習で鍛えているということですか?
そうですね。個人練習をして、チーム練習の時にはシミュレーションを出来るだけやるという感じです。
――メンタル面はどうでしょう?強いハートを持っていないと、あれだけゲインは出来ないと思いますが
正直、分からないです。そんなに考えずに臨んでいると思います。
――ゲインするということは相手をドミネートしなければいけないわけで、そこに対する気持ちの持ちようはどうですか?
突き抜けるイメージです。コンタクトが好きです。
――日本でいちばんフィジカルが強い選手になりたいと言っていましたが、そろそろそうなっているんじゃないですか?
まだだと思います。他のチームには、まだまだフィジカルが強い選手がいると思います。それを達成できるように頑張っています。
――それを達成するためには、心・技・体がすべて大切だと思いますが、いちばん強くなるためには更に何が必要ですか?
コンタクト後のレッグドライブとセパレーションです。セパレーションは当たった後に相手と間を作るということです。あとは倒れないで立ち続けることです。
◆いつも元気
――ヘッドキャップがトレードマークですね
小さい頃は、ときどきつけていました。アゴを怪我した時にかぶった方が良いかなと思って、それからつけています。子どもの頃につけたことが無ければ、今もつけていなかったと思います。アゴを怪我して来週でちょうど1年が経ちます。
――アゴはもう大丈夫ですか?
問題ありません。
――ゲームで青いヘッドキャップをつけていますが、それに意味はありますか?
コバさん(小林航)からもらいました。青はサモア代表のジャージの色ですし、代表している意味合いもあります(※サモアで生まれ、ニュージーランドで育つ)。青いヘッドキャップは試合用で、別の練習用のものもあります。
――プンバ(※愛犬)は元気ですか?
いつも元気です(笑)。けれどすぐに疲れるので、その両方が私と一緒ですね(笑)。
――日本語はどのくらい覚えましたか?
良くはなっています。喋ることよりも聞くことの方が理解できます。練習で使う日本語は理解できますが、グラウンドを離れると難しいところもあります。
――日本語が喋れるようになると更に面白くなるんじゃないですか?
そうですね。学べる良いスキルだと思います。通訳を呼ばなくてもよくなったら、いいですね。
◆ハードラン
――個人の調子は良いと思いますが、チームとして上手くいかなかった時には、どんなことを考えていましたか?
少しイライラする部分はありましたけれど、新しいコンビネーションがあり、慣れなきゃいけない部分があって、そこがだんだん上手く行き始めて、やっと上向いてきたかなと思います。シーズンの始まりは理想的ではありませんでしたが、良い方向には向かっていると思います。
――今後、益々良くなっていく感触ですか?
そうですね。そこは疑いなく。
――この後のシーズンの目標は?
チームの全員がそう思っていると思いますが、チャンピオンシップで勝つことです。
――そのための自分の役割は何ですか?
ハードランして、チームのために勢いを生み出すことです。それが出来ると自分の仕事も簡単になるので、それがチームに貢献できる部分だと思います。
――冒頭でイオアネ選手のプレーがシンプルに見えると言いましたが、そこは意識している部分ですか?
意識はしています。そこはコーチ陣からも要求されている部分です。他の要求が無ければ変えないと思います。
――改めて、ラグビーをやっている楽しさは何ですか?
負けていた時もラグビーは楽しかったですし、もちろん勝つことの方が気持ちは良いです。相手をドミネートしている時も良いですが、他の選手とラグビーをやっていること、仲間と一緒にラグビーをしている時が、いちばん楽しいですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:石森大雄)
[写真:長尾亜紀]