SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2024年12月18日

#935 サム ケイン 『自分のゲームを磨いて、楽しむこと、自分を信じてやること』

1年目の昨シーズンは前半6試合の出場にとどまったケイン選手。オールブラックスを引退し、サンゴリアスに懸ける今シーズンの意気込みを聞きました。(取材日:2024年12月中旬)

Cane_01.JPG

◆すべてを懸けて恩返し

――昨シーズン、チームに来てすぐにフィットしたのではないでしょうか?

ニュージーランドでこれまで、チーフスとオールブラックス、どちらも同じチームでずっと長い期間できたことは良かったと思います。新しいチームでやるということが、新しい環境、新しいチームメイト、新しいコーチ、新しい街でやって、理解し始めるまでに4試合くらいかかりました。

――その中での手ごたえは?

前半は楽しくプレーが出来ましたが、その後、怪我をしてしまいました。大丈夫だと思ったんですけれど、そうではなく、そこでクラブがサポートしてくれたことが嬉しいことでしたが、それをチームにフィールド上で還元できなかったことは残念でした。

――出場した試合でのプレーは?

OKくらいですね。怪我が影響し始めていました。練習への参加も、試合に出るということに関しても、怪我の影響がありました。

――そうして2年目の今シーズンを迎えます

今は怪我も完治したので、オールブラックスでも試合に出られましたし、それをサントリーでも継続できればと思っています。戻ってくることができて、チームにコミットできることはとても嬉しいですし、すべてを懸けて恩返しが出来ればと思っています。

今シーズンはチームのことも知っていますし、環境も分かった上でやるので、過ごしやすくなっています。生活スタイルが戻るまでに時間もかかりませんでしたし、ラグビーの面でも自分のベストのところに戻せることができればと思っています。

Cane_02.JPG

◆誇りに思う瞬間

――オールブラックスで100キャップを獲得しましたが、史上13人目だそうですね

自分もそうですが、家族にとっても誇りに思う瞬間でした。100キャップ目のテストマッチがニュージーランドであったことも幸運でしたし、友人や家族の前でプレー出来ましたし、その試合で勝つことも出来たので、とても良い瞬間でした。

――代表の活動はこれからも続けますか?

もう終わりです。ニュージーランドラグビーのルールとして、海外の選手からセレクションに入ることはありません。昨シーズンまではまだニュージーランド協会との契約があったので違いましたが、サントリーとの契約にコミットしたので、オールブラックスではもう出られないと思います。

――ご家族も日本に移ってきますか?

はい、全員日本にいます。昨シーズンも日本にいましたが、妻の妊娠による体調不良とクロスボーダーの期間、10日間だけニュージーランドに帰りました。その2週間後に背中の怪我があり、手術するためにまたニュージーランドに帰って、6週間後に日本に戻ってきてリハビリをしていました。

――お子さんにとって日本の環境はどうですか?

2人息子がいて、2歳半と4ヶ月です。新しい家に入ってまだ1週間ですが、クラブハウスに近いので、チームの練習がない時にクラブハウスに来てボールを蹴ったり、家の裏庭じゃないですけれど、そういった感じになれば良いなと思っています。近くには公園もたくさんありますし、保育園に入れれば、妻も子どもから離れられるので、時間が作れるようになると思います。安全な国ですし、人も優しいですね。

Cane_03.JPG

◆自分の経験をチームに還元していきたい

――体調が万全になって2シーズン目となる今シーズンの課題は何ですか?

オンフィールドでチームのパフォーマンスに貢献することです。経験は豊富だと自負しているので、自分の経験をチームに還元していきたいと思っています。2シーズン目ということもあり、自信を持って出来ると思いますし、長期間ここにいることが分かっています。昨シーズンはシーズン自体が短かったですし、あまり出しゃばりたくなかったのですが、みんなとの関係性という意味でも築けたと思うので、今シーズンは環境としても自分の意見を言いやすくなっていると思います。

――出場した試合では、チームがいて欲しいところにいるように見えました。それはどういうところに気をつけていたら出来ることなんですか?

そう見えていたら良いですね。ハードワークが基本になっているので、そこで自分でコントロール出来る部分、例えばすぐ立ち上がるとか、すぐポジショニングに入るとか、ゲームの流れを見て良いポジションに入るということですね。ハードワークしてポジショニングに入って、そこから自分のラグビーのセンス、正しい判断をするということを信じでやるだけです。

Cane_04.JPG

――正しい判断はキャリアで掴んだものですか?

そうだと思います。自分を信じる、試合に出た時に自分の能力、経験を信じることです。でも、それはハードワークした上でのことです。

――自信を持てるようになったのは、プロになってしばらくしてからですか?

時間をかけて、その中でエラーもして、試合でひとつのことにフォーカスし過ぎて他のところで効果的になれないこともありました。時間をかけてハードワークして、自分のゲームを磨いて、試合の時に楽しむこと、自分を信じてやること、そこで判断していくようになりました。

――その自信の持つ方法を若手選手にも伝えて欲しいですね

それは最善を尽くしてやりたいと思います。

Cane_05.JPG

◆ベストになりたい

――優しそうに見えるんですが、自分としても優しいと思いますか?

ハハハ(笑)。優しくなりたいとは思っています。他の人と接する時には、相手が接したいと思うような接し方をしたいです。自分は自分という考え方もありますけれど、勝ちたいという気持ちと、たまに言いたくないことも言わなければいけないこともあります。それは思いやりの上で言っています。そこにはベストになりたいという思いが必ずあります。

――ずっとキャプテンをやってきましたが、キャプテンをやった上で得たものはありますか?

スーパーラグビーのキャプテンとオールブラックスのキャプテンは全く別でした。プレッシャーもそうですし、気に掛けなければいけないことも多かったですね。ただ、キャプテンにはサポートが必要だということを理解しているので、キャプテンのホリ(堀越康介)へのサポートをしなければいけないと思っています。

Cane_06.JPG

――ケイン選手もいろいろとサポートされたんですか?

そうですね。それが大きな手助けになります。キャプテンは孤独に感じることもあるので、他に頼ることも必要です。

――孤独を感じた時にはどうしたんですか?

完全に孤独ということはありませんでしたが、責任という重荷がありました。

――それが逆にやりがいでもありますよね

そこでチームのためにとか、結果を求めるためにとか、そこが上手くいかないと、結果が出ないと倍のプレッシャーを感じますけれど、結果が出た時には満足度が倍になります。

――キャプテンをサポートしつつ、今シーズン達成したい目標は?

チームとしては優勝。トロフィーを掲げることです。個人としては身体には気をつけて、フィールド上でビッグゲームの時にちゃんとパフォーマンスが出せる、チームに貢献できるようになることです。

(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:石森大雄)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ