2024年12月 6日
#933 流 大 『いちばんの選手になりたい』
すっかりベテランの領域に入ってきた流選手。元気にチームメイトを鼓舞する姿とそのプレーは必見で、今シーズンに向けて「ファンの皆さんはなるべく僕の姿を見ておいた方が良いですよ」と語ってくれました。(取材日:2024年11月下旬)
◆グラウンドに立つことがいちばん
――昨シーズンは満足のいくシーズンでしたか?
満足はいかなかったです。パフォーマンス自体は好調だったとは思うんですけれど、結果的に怪我をしてしまって、最後にグラウンドに立てませんでした。グラウンドに立つことがいちばんだと思っていたので、その点において、とても残念でした。
――いちばん楽しみにしているところが出来なかったということですか?
プレーオフからチームを勝利に導きたかったという思いが強かったので、その場に立てなかった。自分としては、情けない終わり方だったかなと思います。
――あのタイミングで試合に出られないほどの怪我をするということも珍しいですよね
ラグビー人生の中でも復帰するまでに最も長い怪我でした。怪我をした当初はプレーオフに間に合うように、メディカルスタッフがいろいろと手を施してくれましたけれど、結果的には間に合わなくて、自分の実力不足だったと思います。
――試合に出られない状況でもいろいろな役割があったと思いますが、どんなことを意識していたんですか?
ひとつはリハビリだったので、同じく怪我をしている選手たちとリハビリをする中で、朝から誰よりもエナジーを持って取り組む、誰よりも元気な姿を見せるということを意識してやっていました。あとは特別に何かをしたというわけではありませんが、怪我人としてでも、チームにエナジーをもたらそうと思ってやっていました。
――それはチームにも伝わっていたと思いますが、手応えはどうでしたか?
それは周りが決めることで、僕としては当たり前のことをやっていただけです。だから、特に周りのことは気にしていませんでした。
◆過去最高のもの
――怪我をするまでは好調なシーズンだったということですが、その要因は何ですか?
ワールドカップでもちょっと怪我をしてしまって、このシーズンは怪我をせずにグラウンドに立ち続けることをターゲットに置いてやっていた中で、自分自身のコンディションを上げることに重きを置いて、身体の調子も本当に良かったです。GPSの数値とか、自分のフィットネスレベルも過去最高のものが出来上がっていました。それがまずひとつの要因だと思います。
あとは、僕の強みである、コーチ陣が考えている戦術だったり、チームの文化ということに対して、しっかりとコミット出来ていました。コミュニケーションがしっかりと取れていた、ということだと思います。
――昨シーズンの監督は選手時代スクラムハーフでしたが、その辺は分かりやすかったんですか?
そこもそうですし、コスさん(小野晃征)もそうですし、特にキヨさん(田中澄憲)からは、ここ数年は若手のリーダーを育てるとか、チーム全体のマネジメントをするということに少し重きを置いていたところ、言い方は違うかもしれないですが、「昔の流に戻って欲しい。ひとりの選手として貪欲に自分のプレーと、自分のライバルに対してチャレンジする姿。チームのことを考えるんじゃなくて、自分のことを考えて欲しい」と言っていただいた時期がありました。そう思っていただけるんだったら、持っていなかったわけじゃないですけれど、もう一度ハングリーな気持ちを、前面に出していこうと思ってやっていました。
――ほぼスタメンで出場しましたね
はい、多く出させていただいたと思います。
――そこは調子が良かったということに繋がっていますか?
いやいや、そこは、僕はずっと言っていますが、スタメン、リザーブ関係なく、いちばんの選手になりたいと常に思っているので、スタメンだったから調子が良かったとか、そういう評価は自分の中ではしていなくて、実際のパフォーマンスの中で、自分の評価も周りからの評価も感じています。
◆短い期間でやり切る
――日本代表には行かないと言っていますが、もう一度、日本代表になっても良さそうですね
いやいや、それは絶対にないです。けれど、僕が思っているのは、日本代表じゃなかろうが、日本でいちばんのスクラムハーフでいたいと思っているので、日本代表の試合は欠かさず見ますし、他のスクラムハーフに対しても絶対に負けたくない気持ちがあります。今のサンゴリアス内の競争もそうですし、日本にいるインターナショナルなスクラムハーフもそうですし、日本代表で頑張っているスクラムハーフにも、僕個人的には負けていないと思っているので、パフォーマンスで勝負したいと思っています。
――それだけ良いと、引退はまだ先になりそうですね
それもないです(笑)。何年とかどれだけの期間とかは言えないですけれど、本当に短い期間でやり切ると決めているので、ファンの皆さんはなるべく僕の姿を見ておいた方が良いですよと、このインタビューを通じて伝えたいですね(笑)。
――自分の中で集中してやる期間を定めている?
はい、僕は自分の人生を自分で決めていきたくて、周りの状況とか、周りに左右されるのが嫌なんです。自分でしっかりと決めていきたい。ただ、僕はこのチーム、このクラブに対して感謝があるので、長らく優勝できていないというところで、絶対に最後に優勝して終わりたいと常に思っています。なので、今シーズンも覚悟を持ってやっています。
――今シーズンで優勝を目指すということだと思いますが、優勝できなければ、また次のシーズンで優勝を目指すということですか?
そうやって先延ばしにしていてもキリがないと思っているので、まずは今シーズンだけを考えています。
◆絶対に負けない気持ち
――今の調子はどうですか?
やっと怪我した個所も完治した状態になって、プレシーズンマッチでも復帰が出来る状態になっているので、あとは監督が選んでくれたら、そこでパフォーマンスを出すだけです。あとはかなり久しぶりにプレシーズンからサンゴリアスに合流していて、若いメンバーとか、今シーズンに関しては亮土さん(中村)、まっちゃん(松島幸太朗)とか、普段は代表に行っていたメンバーもプレシーズンからサンゴリアスで活動が出来ているので、個人的にも良い感覚は持っています。
――同じポジションの齋藤選手が抜けて福田選手が入りました。齋藤選手に対しては思い入れもあったと思います。その辺はどうですか?
フランスでも頑張っていますし、なかなか結果が出ない日本代表の中でも、この前はキャプテンとしてチームを鼓舞して引っ張っていた姿を見ているので、頑張っているなと思って見ています。
健太(福田)に関しては、ワールドカップで初めて一緒のチームで活動しました。そこでポテンシャルの素晴らしさを感じたので、また一緒にプレー出来るのはとても楽しみです。
――福田選手は流選手がいるからサンゴリアスを選んだと言っていましたね
どこまで本当か分からないですけれど(笑)。僕はもともと彼はセンスやポテンシャルだけでやっているのかなと外から見ていたんですけれど、ワールドカップ期間中も実際にはラグビーに対してとても真面目だし、キツいトレーニングに対しても妥協せずに出来るタイプで、ラグビーに対する意欲も素晴らしくて、質問などもかなりしてくる選手でした。ワールドカップイヤーの最初の頃に、とても努力をしているんだなと感じましたね。
それでワールドカップ期間中も一緒にコミュニケーションを取りながら過ごすこともあったので、また一緒にやることができて嬉しいですけれど、同じポジションなので、絶対に負けない気持ちは持っています。
◆自分を高めないといけない
――今のリーグワンは、そんな簡単には勝てませんか?
言い方が難しいですけれど、昔のトップリーグの時とかは、多少メンバーを変えて、若い選手を試しても勝てる試合はありました。今はどの試合もないですね。毎回、ベストメンバーで戦わなければいけない試合が多くて、ただそうは言っても、試合数は多くなって、全試合フルで出ることはなかなか難しい状況です。なので、ローテーションという意味でも、選手が変わった時にも力を発揮しないといけません。
だから選手層はとても大切ですし、昨シーズンもサンゴリアスはブルーズ戦も含めれば、47名くらいが試合に出ているんですけれど、今シーズンも56名の選手がいて、この前チームで話させてもらったことは「全員に試合に出るチャンスがあるし、試合に出た時には同じパフォーマンスをしなければいけないから、日頃からコンペティションをしっかりして、自分を高めないといけない」ということを伝えました。それくらいタフなリーグになってきているので、若い選手、ベテラン、日本人、外国籍選手関係なく、パフォーマンスを出さないと勝って行けないと思います。
――本当に全員で勝ち取らないといけない感じですね
どこのチームにもインターナショナルプレーヤーがいて、カテゴリーAのルールも少し変更され、外国人選手の割合が増えるチームもいるので、フィジカル的にもとてもタフなリーグになると思います。それでもサンゴリアスはサンゴリアスのDNAを忘れることなく、戦っていきたいと思っています。
――シーズンの目標をお願いします
優勝です。それと昨シーズンに達成できなかった、グラウンドに立ち続ける。長年、このチームでやってきて、このチームに対する想いは誰よりも持っているつもりなので、グラウンドに立ち続けて、そこで勝つということに貢献するということが、僕が目指している最大のことです。まずはグラウンドに立ち続けることが、それがいちばんの目標です。
――体力的にはまだまだ問題ないですか?
ぜんぜんです。なんなら、昨シーズンが過去最高だったんですけれど、今の方がより良いと思います。サンゴリアスのS&Cスタッフに聞いてくれたら分かると思います。
◆ストレッチは大事
――そういう状態でいると、よりラグビーが面白いんじゃないですか?
面白いですよ。メンバーも変わりますし、監督も変わって、ラグビーも少し変化するので楽しいですし、だからこそグラウンドに立ち続けるためにも、本当に恥ずかしいですけれど、32歳になって、ほぼ初めてと言っていいくらい、ストレッチをやるようになりました。今までそういうことはやっていなくても、なんなくプレー出来ていたんですけれど、家でもストレッチをやるようになったら身体の調子が良くなったので、ストレッチは大事だよと、子どもたちにも伝えたいですね(笑)。
――それは何かきっかけがあったんですか?
怪我がこの1、2年で続いていたので、何かを変えないといけないですし、疲労が取れにくくなっていたところもありました。ただ、年齢を言い訳にしたくはなくて、年齢が高くて経験があるということは、良さでもあるんですけれど、慢心や驕りに繋がってしまうこともあるので、練習でもフルでトレーニングが出来るように、自分の準備をしっかりしようと思いました。
――ストレッチの楽しさを子どもたちに伝えてください
ぜんぜん楽しくはないですよ(笑)。テレビを見ながらとか、ラグビーの試合を見ながらやっています。
――ルーティンにはなっているんですね
そうですね。基本的には毎日やっていますし、グラウンドに出る前の準備も、以前よりも長い時間をかけるようになりました。
――子どもたちも、やった方が良いということですね
長くラグビーをやりたいんだったら、やった方が良いと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]