SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2024年11月15日

#930 飯野 晃司 『僕の中の普通のこと』

ベテランの域に入ったことを自覚している飯野選手。その飯野選手の"普通のこと"とは何なのか?をいろいろな角度から聞いてみました。(取材日:2024年10月下旬)

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◆サッカーでキーパーをやっていた名残かも

――呉選手へのインタビューで、ラインアウトについて飯野選手の言っていることが詳しすぎて分からないということを言っていました。飯野選手からすると、それはどんなことですか?

選手の中でベテランの域に入ってきて、更にフォワードとなると、上の人はもっと少なくなります。ですのでチームとしてやりたいことを、僕が全部理解した上でやろうとしています。若手や新加入選手が多くなってきているので、教えられることや「もっとこうした方が良いんじゃない」というところは、サポート出来ればと思っています。

――全部理解していると、もっとこうした方が良いんじゃないかと考えることもありますか?

それはコーチにも言ったりします。コーチが思っていることと僕が思っていることが違ったら、その差を埋める作業が必要になります。僕はフランクに誰とでも喋れるところがあるので、コーチや新しく入った人とか関係なく、疑問を持ったことには答えをもらえるようにしています。

――その根源は、より良いプレーをしたいということなのか、考えることが好きなのか?

何なんですかね。知識として身につけるのは嫌いじゃないですし、もちろん上手くなりたいということもあると思いますが、それが普通だと思いながらやっています。

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――子どもの頃からいろいろ考えながらやったり、みんなとコミュニケーションを取ったりするといった特徴があったんですか?

もともとはサッカーでキーパーをやっていたので、その辺の名残はあるのかもしれません。サッカーはキーパーがいちばん後ろにいていろいろなところを見ることができるから、いちばん見ることができる人がいろいろな情報を発信することが大事だと思います。

――なぜゴールキーパーを選んだんですか?

それは身体が大きかったからかもしれませんが、ぜんぜん嫌じゃなかったですよ。

――キーパーが合っていたんですね

合っていたんだと思います。

――そういう資質がって、今のラグビーでの働き方があるんですね

そういうのはあるのかもしれないですね。

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◆腑に落ちないことはやりません

――以前のインタビューで、面白いと思ってやっている感じはないと言っていました。どういうつもりでやっているんですか?

それが当たり前のことなんですよ。

――コミュニケーションを取ることが下手な選手もいるわけで、それが当たり前に出来るのはなぜですか?

僕の中では無理をしてやっているわけでもありませんし、めちゃくちゃ面白いからやっているというわけでもないんです。僕の中の普通のことというか、分からなければ聞くし、ちゃんと分かろうとしますし、自分の中で腑に落ちないことはやりません。

――仕事でもそうなんですか?

仕事でも周りに聞くことが出来る方だと思います。もちろん悩むことも大事だと思うんですが、悩んで分からないことを考えて10分使うか、周りに聞いて1分で終わらせるかだったら、周りに聞いて答えをもらった方が他のことにも時間を使えますし、プラスαのことも出来ると思います。だから聞くことを恥ずかしいとは思っていません。

――それをさらに周りに伝えるんですね?

僕が新しく知った情報を、仕事面でもラグビー面でも共有できるようにしています。だから、それが僕の中で普通なんですよ。

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――今後、教える方など、どんな役割、仕事が合っていると思いますか?

コーチや監督はどうですかね。もちろん理解していることはあるので、引き出しは多いと思います。サントリーの仕事も好きで、仕事をやる上でもいろいろな知識を持った上でやった方が良いと思っています。別に勉強は得意じゃないのですが、興味を持ったことに対しては、ちゃんとやるという感じですね。

――ちゃんとやることに対しては、かなりメモなどを取ったりするんですか?

大事なことはメモを取りますが、メモを取ると、メモを取ることが目的になったりします。もちろん要所の部分やキーワードは書いたりしますが、「こういう流れだからこうなんだろうな」と頭で考えていたりします。

――それも普通なことなんですね

まあ、普通というか、「これをやらなきゃ」という感じではないですね。

――チームの中を見ても自分と同じタイプの選手はあまりいないんじゃないですか?

どうなんですかね。帝京大学の先輩方は、「これはどうなんですか?」と質問したら、大体答えを持っている人が多いと思います。僕が困っている時に、もちろんコーチにも聞きますけれど、選手間であれば、帝京の先輩たちに「僕はこう思っているんですけれど、どうなんですか?」と聞いたりします。

――それは帝京大学ラグビーのカルチャーなんでしょうか

そうかもしれないですね。そこを気にしなさ過ぎて、自分の中では答えがないですね。逆にやらなければと思っていたら、その答えがあったのかもしれませんが、僕の中では普通なんですよね。

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◆サンゴリアスはこういうものだよ

――昨シーズンは2試合の出場でした。それについてはどうですか?

ブルーズ戦で怪我をして、結構長い怪我になって、2~3ヶ月リハビリをしていました。僕はシーズン中に怪我をするのが初めてくらいで、そこは上手くコンディションが調整できなかったのかなと思っています。

――怪我はもう大丈夫ですか?

今はもう大丈夫です。オフシーズン中は、いつもだったら体重を増やしたりしていたんですけれど、今回は下半身を重点的に鍛えて、ボディバランスなどを考えながらやるようにしました。いつまでも若くはなく、今年で30歳なので、ハードにやらなければいけないところはハードにやりますけれど、しっかりとバランスは意識するようになりました。

――30歳になってみて、どんな気持ちでしたか?

難しい質問ですね(笑)。僕の場合は、20代だからこう、30代だからこう、ということはなくて、チームの中で、サンゴリアスで8年目とかになって、上の世代の選手があまりいないので、そこに対しては新しく入ってきた選手には「サンゴリアスはこういうものだよ」と教えなければいけないなと思っています。

――いま目指しているところは?

何試合に出る、とかはないですけれど、コーチがやりたいこと、チームでやりたいことをしっかりと理解したら、自ずとチャンスは回ってくると思っています。しっかりと自分の中でコンディションを整えて、やるべきことをずっとやっていれば、試合に出るチャンスは増えてくるのかなと思います。

――昨シーズン経験した結果、コンディションは今まで以上に気にしていますか?

もともと気にしてはいたんですけれど、よりもっとという感じはあります。

――それに加え、プレーでは何を強化したいですか?

ブレイクダウンに対しての働きかけは、もうちょっといろいろと出来るのではないかと思っています。ここから足が速くなるとか、めちゃくちゃパワーが強くなるということは難しいと思うんですけれど、細かいテクニックとかはもっと出来るのかなと思っています。

――ブレイクダウンに対する働きかけは、チームとしてはどうですか?

出来る選手は出来ますし、カッキーさん(垣永真之介)は試合中にジャッカルでボールを取ってきますし、オケ(桶谷宗汰)も速いですし、そういったところはコミュニケーションを取りながら、「もっとこうした方が良いんじゃない」とかは日々やっていますね。

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◆"WIN THE ONE"

――今シーズンの目標は?

チームとしてはリーグワンになってから優勝していませんし、僕が2年目の時以来、優勝をしていないので、サンゴリアスは優勝できるチームというか、優勝に関わるチームだと思っているので、そこはチームとしてしっかりとやっていきたいと思います。
あと僕自身は、1試合でも多く試合に出るということはもちろんなんですけれど、チーム全体を見ながら、良い影響を及ぼすことができるような役割を担っていきたいと思っています。

――具体的にどう良い影響ですか?

ナレッジとかはあると思うので、そこに対して若手が悩んでいることがあれば、それに対してアプローチしていきますし、自分自身に足りないことがあるんだったら、しっかりとプレーで見せていかなければいけないと思っています。そこは今までと何ら変わりなく、やっていこうと思っています。

――2年目の時に優勝を経験していて、こうしたら優勝できるという感触はあるものですか?

無いと思います。一戦一戦で全力を出し切って、最後まで勝ち続ければ、待っているのが優勝だと思います。先を考えて「こうなったからこう」とかは無いと思いますし、今はどのチームも強化してきていてどのチームも強いので、目の前の一戦にどれだけフォーカス出来るかがキーだと思います。"WIN THE ONE"と言うことだと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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