2024年10月 4日
#924 細木 康太郎 『大好きだったボールキャリーの強み』
期待のプロップ細木選手。3年目のシーズンを迎えるにあたり、現状そして目指すラグビーを聞きました。(取材日:2024年9月下旬)
◆とても悔しい気持ち
――昨シーズンは4試合出場、自分自身、出来はどうでしたか?
あまり良かったとは言い切れないシーズンでした。
――一昨年のシーズンは終盤に出場を重ねていたので、その勢いからすると伸び悩んだシーズンだったのでは?
この歳になって実力が上がっていく感覚があるんですけれど、昨シーズンに4試合しか出られなかった原因としては、コンディション不良がいちばん大きな理由かと思います。コンディションが良ければ、メンバー選考に毎回食い込んでいけるような立ち位置にいたという自負があるので、練習をしていれば必ずチャンスが回ってくると感じています。
――怪我は何度かあったんですか?
はい、昨シーズンは自分のラグビー人生の中でも怪我が多かったと思います。復帰して1週間で静岡戦になりました。静岡はスクラムを強みにしているチームですし、自分の強みもスクラムだったので、監督だったキヨさん(田中澄憲/現ゼネラルマネージャー)とアオさん(青木佑輔/アシスタントコーチ)とミーティングをして、そこをターゲットにして復帰することが出来ました。
その結果、試合に出ればパフォーマンスを出せるということが自信にもなりました。日本代表の合宿もあるので、コンデイションを100%良くすることよりも、試合に出続けてパフォーマンスを上げて、日本代表の合宿に呼ばれるようなシーズンにしていきたいと考えていました。そういう焦りから、コンデイションが良ければ試合には出していただける可能性があるのに、と自分の中でストレスになっていました。自分の身体とメンタル面の両方で、とても悔しい気持ちを持ったシーズンでした。
◆当時よりコンディションが良い
――コンデイションには十分気をつけていたと思いますが、防ぎにくいものだったんですね
100%防げるかと言われたら、そうではないんですけれど、もっと自分の身体を知ることが大事だと思いました。どのくらい疲れているのかとか、今の疲労度でどこまで負荷を与えると怪我に繋がるとか、正直、あまり分かっていませんでした。無我夢中にパフォーマンスを発揮することや、コーチ陣にアピールすることを目指して、一生懸命にラグビーをやること、全力でやることしか頭にありませんでした。
昨シーズンを経て、今シーズンはS&C(ストレングス&コンディショニング)の平松さんや見山さん、三上さんと話しながら、強度を変えたり、ボリュームをコントロールして頂き、トレーニングをやっています。そうすると、当時よりも自分の身体のコンディションが良いなと感じています。
――無我夢中でやるその先には何を見ていたんですか?
日本代表に選ばれたい、日本代表に選ばれるためにはサンゴリアスで試合に出ないといけないという思いがあって、頭では怪我をすることでどういう評価をされるかと分かっていたんですが、自分の目標のところに目が行ってしまって、前に進むことしか出来ませんでした。
シーズン中にコンディション不良を繰り返してしまうのは初めてでしたが、コンデイションが悪くて試合に出られないストレスへの耐性は、他の人よりもあると思っていました。ですが自分もこんなにダメージがあるんだなと感じて、それに対しての耐性はつきましたし、こうしたらいけないんだなという勉強になりました。
――今の体調はどうですか?
今はスタッフの皆さんに気を遣ってもらっていると感じていますが、GPSや自分のコンディションの数値を見てコントロールしてくれたり、数値と自分の感覚が違う時も自分の言葉を聞いてくれて、数値だけじゃなく自分の感覚も理解してくれながら、トレーニングやストレッチ、ケアのところも一緒にやってもらっています。今までとは違って、闇雲にトレーニングをするのではない、柔軟なラグビー人生が送れている感じです。
――自分の感覚は全体的なものですか?それとも身体のいろいろな部分に対しての感覚ですか?
日によっては身体が重いとか、腰が痛いとかあるんですが、自分の中ではもうちょっと具体的にしないと伝わらないと分かっているので、自分が違和感のある部位のところを、「どこどこがこういうふうに張っている」とか、「固い感じがある」とか、細かく伝えるようにしています。
――そういう時のトレーニングは、どういうトレーニングになるんですか?
ボリュームをコントロールしてもらい、ベストなコンディションになるようコーチ陣と調整しながらトレーニングしています。自分のラグビープレーヤーとしての質を高めるために考えながらやっていこう、と思ってやっています。
◆100%以上のパフォーマンスを出せる身体
――今は成長を感じていますか?
成長を感じています。最近は不安感を無くすトレーニングを入れたりしていて、徐々に徐々に「自分が全力で走っても大丈夫だな」「相手に思い切りコンタクトしても大丈夫だな」と思えるようになってきました。コンディションは少しずつ良くなっているので、試合になった時に100%以上のパフォーマンスを出せる身体を作ることができている、という感覚があります。
――どちらかと言うと完璧を求めるタイプだと思うんですが、この経験では良い開き直りが出来ているのでは?
やっぱり自分の軸の中では、勝たなければいけませんし、人と同じことをやっても勝てないと思っていますし、そういう信念はあるんですけれど、まずはその土俵に立てないと話にならないと思っています。怪我をしていたら意味がないので、今までの積み重ねがあるからこそ、コントロールしてトレーニングが出来ていると感じています。
開き直りは、確かにあると思います。過去の自分が大丈夫な筋力や身体のベースを作り上げられたからこそ、周りとは違うトレーニングをしても、大丈夫だと考えています。そういう意味では、自分の過去を誇らしく思います。
◆全試合をスタメンで出場
――そうすると今シーズンは楽しみですね
楽しみです。個人的にもそうですけれど、コスさん(小野晃征)が監督になって、今やっている練習の中でアグレッシブ・アタッキング・ラグビーを体現しようとしています。合宿でもたとえばボールキャリーでは、目に見えてという感じでその部分が見えるかなと思いますし、チームとして大きく見えてきているなと感じています。
そうやって以前自分が好きだったボールキャリーのところにフォーカスしていている、といま感じているんですが、自分はスクラムでは絶対に負けないというキャラクターですし、そういう思いももちろんあるんですけれど、ラグビーを始めた頃に大好きだったボールキャリーの強みを、またもう一回伸ばして、そういうところでも楽しさを見い出すことができるんじゃないかなと思っています。
――昨シーズンのチームは、得点も失点も多かったと思いますが、ディフェンスについては?
今の段階ではまだ、ディフェンスはシステムとして大きくはやっていないので、今後どうなって行くのかなということはあるんですけれど、いろいろなコーチからいろいろなディフェンスの見方や、いろいろなディフェンスのシステム、ディフェンスの仕方を教えてもらえるということで、とても楽しみです。合宿からも少しずつタックルや細かいスキルのトレーニングも始まっているので、これからだと思っています。ディフェンスについても楽しみです。
――このまま行ったら開幕後にはどんな自分を想像していますか?
昨シーズンみたいにはならない、ということが大きいですね。目標は毎年言っていますが、全試合をスタメンで出場ということに変わりはありません。そしてサンゴリアスはスクラムが強いと言われるようなスクラムを組みたいですし、ボールキャリーのところでも「あいつはスクラムだけじゃない」と思われたいと思っています。
――ファンの皆さんにメッセージをお願いします
いつも応援ありがとうございます。菅平の合宿にもファンの方々が来られていて、練習が終わってファンの皆さんの顔を見ることができて嬉しかったです。ファンの皆さんが一番楽しみにしていることは、試合で結果を出すこと、一緒に喜ぶことだと思うので、今シーズンこそは勝利して、優勝を皆さんと分かち合いたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]