SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2024年9月20日

#922 堀越 康介 『タフな泥臭いところを象徴していける選手に』

新しいチームでもキャプテンを務めることになった堀越選手。新チームのキックオフミーティングの直後に話を聞きました。(取材日:2024年9月上旬)

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◆もう一度チャレンジ

――ヘッドコーチが代わりましたが、キャプテン3年目を迎えますね

キャプテンやるかどうかは別にして、昨シーズンが終わった時から、より一層、「このチームで優勝したい」「勝ちたい」という気持ちが強くなっています。たとえキャプテンじゃなくなったとしても、チームをどう良くしていきたいかを考えていました。その中でキャプテンという話をもらって、光栄なことですし、そこでもう一度チャレンジしたいと思いました。

――キャプテンじゃない場合でも、チームをどうしていくか、どうチームに貢献していくかを考えていたんですか?

そうです。いち選手として、チームに属する選手として、このチームで優勝したいと思いました。

――元々キャプテンをやりたいと言っていましたが、実際に2シーズンやってみてどうでしたか?

思っていた頃の感情と、キャプテンをやってみての感情はもちろん違います。このチームは勝たなければいけない集団ですし、優勝以外はあり得ないとみんなが思っていますし、周りからも思われています。負けが続いた時のプレッシャーとかストレスを、キャプテンになってより感じるようになりました。

――試合に出られなかったシーズンもありましたが、昨シーズンは全試合出場、その場合も違いますか?

ぜんぜん違う感情だと思います。チーム内でのコンペティションで出られなかったシーズン、キャプテンになってコンスタントに試合に出られるシーズン、それぞれ難しさもぜんぜん違うと思います。その中でひとつの部分で一致しているのは、「このチームが大好き」「このチームで勝ちたい」という気持ちで、それは両方のシーズンにありました。その根底の部分は変わらないと思います。

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◆いちばんは個人

――サンゴリアスに入ってまだ優勝を経験していませんが、こうすれば優勝できるというような感覚はありますか?

自分の中ではあります。

――「100%の準備を80分間出し切る」(前回のインタビューのタイトル)と言うことですか?

似たようなところですね。勝てるメンバーがいる、優勝できる人材が揃っている中で勝てていないというのは、組織としてもそうですけれど、いちばんは個人だと思っています。個人個人のチームの中での役割と、チームがどうやったら良くなるかという責任、その責任を果たすことをどれだけ毎日やり続けられるか。それが出来るチームが、勝てるチーム、優勝するべきチームだと思っています。僕はそれがサンゴリアスだと思っています。そしてそこはもっと良くなるんじゃないかなと思っています。

――個々が自分の役割をもっと明確にするべきだと思いますか?

役割はみんなが分かっていると思います。ただ、それを毎回やり切れているのかどうか。1日1日、毎日毎日、やれていないことをフィードバックして、次の日にはやれているのかどうか。たぶんそういうところに来ていると思います。

――それをヘッドコーチが指導したり、キャプテンが示唆したりということは、とても難しいことですね

難しいと思います。僕の中でひとつ方法があるとするならば、「役割を100%やり切れているよね?」「やっているよね?」という関係性で、お互いに100%信頼し合ってチームを作っていくこと。それがいちばんの近道というか、とても良いチームになる道なんじゃないかなと思います。

――100%役割をやっているというのは、本人の自覚ですか?周りから見ていて分かるものですか?

どっちもじゃないですかね。自分がやれていると思っていても、周りからやれていないと言われたら、それはやれていないと思います。

――やれていない選手にはどうするんですか?

もちろん厳しく言います。それはキックオフミーティングでも言いました。

――キックオフミーティングではどんなことを話したんですか?

まずは個人個人がチームに対しての役割と責任を果たして、毎日をやり切ることが優勝という道に繋がるということと、その中でお互いに役割があって、グラウンド内でも外でも厳しいことを言い合うことが絶対に出てくると思います。そういうところで、気づくかどうかだと思います。周りからこう見られていて、出来ていないんだから、もっと頑張ろうということを言い合う。

僕もそうなんですけれど、みんなもそうだと思います。100%やったなと思っていても、周りからは「あいつは手を抜いているんじゃないか」「今日は元気がなかったな」とか、「本来のあいつじゃなかったな」とか、そう思われていたら違うと思いますし、そこは厳しくお互いに言い合うべきだと思います。

試合ではお互いを100%信頼しなければいけないので、そういう関係を全員で作っていけたら、それがサンゴリアスだと思っています。僕が見てきたサンゴリアスってそういうチームで、シンプルですけれど、それをやってきたいと思っています。

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◆サンゴリアスのラグビーって何だ

――バイスキャプテンやリーダーグループはどうなっていますか?

バイスキャプテンは、いないんですよ。響(ひびき)グループというのが新しく出来て、ユタカさん(流大)、ケイノ(サム・ケイン)、幹也(髙本)、ホッコ(ハリー・ホッキングス)の5人のリーダーグループでやっていきます。

――そのグループでの意思の疎通はイメージしていますか?

頼るところはしっかりと頼ろうかなと思います。絶対に僕ひとりでは出来ませんし、自分のキャパも分かっていますし、そこは絶対に無理せずに、僕とは別のアングルでリーダーシップを取れる選手が響グループにいるので、そういう人たちに託そうと思います。僕はやっぱり「サンゴリアスのラグビーって何だ」というところ、タフなところ、泥臭いところを象徴していけるような選手になっていきたいですし、そこは自分自身に自問自答しながら今シーズンをやっていきたいと思います。

――昨シーズン見ていて、そこは厳しくやっているように見えました。自分自身ではどうでしたか?

自分の中では厳しくやっていました。自分を律して、普段はこういう考えだったなというところを、全く違う考え方にして過ごしていました。

――例えばどんなところですか?

弱気になりそうな時、考えすぎてしまうところを、「違う」と言って、一本線を引けるようになりました。

――そのコツは何ですか?

他者からの目線、期待、プレッシャーとかじゃないですか。「このままじゃダメだ」「この考えじゃ絶対にチームは上手くいかない」と気づいて、自分の中でそうやって納得してやっていました。

――ネガティブに引き込まれそうな時に、どうやれば戻って来られるんですか?

ラグビーってとても楽しいですし、このメンバーでやれていることがとても幸せです。このチームで勝ちたいという気持ちは誰よりも強いと思っています。その原点に立ち戻るということですね。

――ネガティブを消していくということもあるんですか?

別に消してはいないです。それ以上に、やってきたし、「絶対に結果を残せる」と思いながらやっていました。

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◆選手も全員、考えている

――キャプテンになってその気持ちは強くなっていると思いますが、これまでの2シーズンでは、勝つということに対して、最終的にはどこが足りなかったと思いますか?

そこはまだ分からないですね。根底の部分は、まだ見えていないかもしれません。

――自分のイメージとして、こうすれば見えるということはありますか?

最初に言った通り、タレントは揃っていて、素晴らしい選手がいますし、良いコーチもいて、コスさん(小野晃征)もいて、その中でどれだけ自分が毎日毎日、コツコツコツコツ、チームのために出来たのか、チームが成功するために出来たのか、自分自身のレベルアップも出来たのか、と思えるかどうかじゃないですかね。

――それはいつ考えるんですか?

ふっと思いますね。何でこんなにチームのことを考えているんだろうと思う時もあるんですけれど、自分だけじゃない、僕よりも何倍も時間をかけて考えてくれているチームスタッフがいて、それをサポートする周りのコーティングスタッフがいて、それをやるのは自分で、「何でこんなことを思っているんだろう」と思いました。選手も全員、考えていると思います。

――キャプテンはヘッドコーチからの指名だと思いますが、ヘッドコーチとの相性はどうですか?

良いと思います。

――昨シーズンはアシスタントコーチをしていた小野ヘッドコーチですが、さすがと思うところはありますか?

日本語と英語のどちらも喋れて、ミーティングでも日本語と英語を織り交ぜて話すので、全員が熱量を持って、前のめりになって話しを聞くような感じになります。

――今シーズンのスローガンは"WIN THE ONE"ですが、どうですか?

「これだ」と思いました(笑)。

――先ほどの100%の話に繋がりますね

そうですね。目の前のことを100%やって、それが出来たらWINということだと思います。

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◆もっと見せられる

――楽しみがたくさんありそうですね

めちゃくちゃ楽しみです。2シーズン、キャプテンをやってきて、優勝するためにはリーダーシップもブラッシュアップしていかなければいけないと思いますし、もっとこうしていきたいというレビューもありました。キャプテンをやることになったので、それもかけ合わせながらやっていきたいと思います。だから楽しみです。

――選手としても伸び盛りだと思いますが、それについてはどうですか?

そこがとっても楽しみで、僕のリーダーシップって、グラウンドに立ち続けて、誰よりも身体を張って、タフに引っ張っていくリーダーシップだと思っていて、そこはもっと出来ると思っています。もっと見せられると思います。

――それぞれをレベルアップさせていくんですね

僕のパフォーマンス、イコール、リーダーシップ、みたいな感じに思っています。

――それは自分にプレッシャーをかけていませんか?

ぜんぜん大丈夫です。それだけやってきています。

――そこまで言ったらトライ王宣言はありませんか?

無いです(笑)。まったく考えていません。

――トライを取ることもやるべきことのひとつですよね

そうです。結果的にそうなったらいいですよね。昨シーズンにトライを取れたのも、全員でボールを前に持って行って、シーズン前から「もっとボールをもらいたい」と思って取り組んでいて、それでたまたま良いパスが来てトライが取れました。言ってしまえば、ほぼ"ごっつぁんトライ"なので、本当にチームのトライだと思います。僕がトライを取れるということは、チームが機能しているということでもあると思うので、結果としてそうなれば良いですね。

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◆逃げない選手

――昨シーズンは攻めながらも、なかなかトライまで行かないシーンもありました。そこでトライが取れていたのは、気持ちやテクニック、周りの見え方とか、成長を感じる部分もありましたか?

予測するところ、変に力を入れずに「ここで取り切れるな」と動きながらやったら取り切れていたので、そこは成長したと思います。

――取り切れない時はどんな感じなんですか?

取り切れないのは、その前のブレイクダウンがどうなのか、プレッシャーを受けているのか、全体的にもチームの流れとしてタックルを差し込まれていて、スローボールになっているのか。そういう時は、あまり取れると感じないですね。

――目指すキャプテン像は?

チームでいちばん身体を張る選手ですね。

――それは怪我と裏腹ですよね

だいぶ裏腹ですね(笑)。

――そこへの向き合い方は?

もちろん怪我をしないようなテクニック、タックルテクニック、倒れ方とかがあると思いますが、そこはプロ選手なので練習していきますし、身体を張るというより、逃げない選手ということですね。

――常に逃げないためには何が大切ですか?

アグレッシブ・アタッキング・マインドです。

――もう少し紐解くと、何ですか?

アグレッシブ・アタッキング・マインド、すなわち身体を張る、逃げないです(笑)。いちフッカーというポジションの中での役割と責任は、そこだと思っています。やっぱりいちばんキツイ時にスクラムを組まなければいけませんし、フォワードが走らないとバックスにボールが回りませんし、そこじゃないですかね。

――サンゴリアスのラグビーをキャプテンとして体現しているということですね

もっと体現していきたいです。昨シーズンは僕なりにこだわってやっていたんですけれど、振り返った時に「もっと行けるんじゃないか」と感じたので、自分にワクワクしています。

――自分の上り調子を体感している感じですか?

それもありますし、日本代表に選ばれなくて、「やってやるぞ」という気持ちだけです。

――逆に選ばれていたらわからなかったですよね

本当に人生だなと思います。全部は上手くいかないけれど、結果として上手くいくみたいな。

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◆土台を厚くするために

――ファイナルラグビーのチームを想像すると、どんな状態になっていると思いますか?

そこはまだぜんぜん考えていません。ひとつずつWIN THE ONEですね。来年6月1日に決勝を国立でやる、優勝する、そこに全員が同じ方向を向いていると思いますが、コスさんも言っていたんですけれど、そこばかりを見ていたら、いちばん広く厚くなければならない土台が薄っぺらくなって、ぜんぜん届かないと思います。その土台を厚くするために、個人個人が大事だと思いますし、最初に言った通り、個人がどれだけやれるか、もっとやれるとなれるかだと思います。

――個人の底上げがいちばん大事?

そこがまずプレシーズンでは大事だと思います。シーズンに入ったら試合数も多くなって、怪我人も出てくると思うので、総力戦になると思います。だから、個人個人が大事になってくると思います。

――そうするとプレシーズンがとても大事ですね

大事だと思います。だけれど、それ以上にシーズンは大事です。

――キャプテンをやっていて面白いですか?

昨シーズン中は辛いこともありましたが、シーズンが終わったら、またキャプテンをやりたいと思っていました。シーズンが終わった後に振り返った時に、「もっとやれる」と思ったんだと思います。シーズンが終わって7月くらいに、それまで書いていたノートを見返したんです。それを見返していて、この時に何を考えていたんだろうとか、何で思ったことを言わなかったんだろうとか、その時のチーム状況やミーティングの内容とかもあったと思いますが、言っても良かったと思っちゃったんです。やり切れていないんだと思って、次のシーズンにキャプテンだろうとなかろうと、それはやり切ろうと思ったんです。

リーダーになってもならなくても、このチームで勝ちたい、このチームで成功したい、優勝したいという気持ちさえあれば関係ないと思って、それはやり切ろうと思ったんです。自分が感じたことを言って、そこで反発もあると思いますが、それがチームだと思いました。お互いを信頼しているから、言い合えると思います。

――目標は?

優勝です。

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◆ファンがどう思っているのかは大事

――あまりプライベートなことは聞いていませんでしたが、家族は?

先日半年になった子どもと、犬がいます。昨シーズン中に生まれましたが、女の子です。

――女の子のお父さんは優しい顔になると言いますよね

僕はどうですか?

――シーズン中より優しい顔だと思います

余裕があるんだと思います(笑)。けれど、今シーズン中は厳しいことをいろいろ言うと思います。

――キャプテンとしてファンに向けてメッセージをお願いします

いつも応援ありがとうございます。サンゴリアスの試合は誰が見ても面白いと思いますし、その中で皆さんと勝ちを共有できるように精一杯頑張るので、今シーズンも熱い応援をお願いします。

――ファンからの厳しい声は要りませんか?

いや、欲しいです。ファンがどう思っているのかは、大事だと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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