SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2024年9月 6日

#920 小野 晃征 『WIN THE ONE』

先日就任が発表された小野ヘッドコーチ。サンゴリアス第15代監督/HCの新ヘッドコーチに、早速インタビューしました。(取材日:2024年8月下旬)

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◆目の前のひとつずつに勝っていく

――ヘッドコーチ就任、おめでとうございます。選手の時、コーチの時と、いろいろな期待感があったと思いますが、ヘッドコーチになってどんな期待感がありますか?

本当にワクワクしています。このチームのポテンシャルにはまだまだ引き出せるものがたくさんあると思いますし、今いるスタッフ、選手を組み合わせたら、もっと良いサンゴリアスのラグビーが出来ると思うので、そこを引き出すことを楽しみにしていますし、ワクワクしています。

――そのためのスローガンは?

チームのスローガンは「WIN THE ONE」です。チームとして求められている結果はひとつしかないと思うので、それに向かって目の前のひとつずつに勝っていくことが大事だと思います。個人的には、ここだけに集中して、このインタビューにしっかりと勝つ。次のチームミーティングでは、良いチームミーティングを行って、グラウンドでは良い練習して、選手もスタッフも同じページ、同じラグビーが出来るように作っていきたいと思っています。"WIN THE ONE"は、目の前のことをひとつずつ積み重ねて勝っていくということです。

――自分との戦いにも勝つということですか?

まず自分が成長しないと、周りへの影響力は無いと思いますし、周りにも成長して欲しいと求めているのであれば、自分も成長しないとダメだと思うので、まずは自分にフォーカスしてから、どうやってチームを良くしていくかだと思います。選手だけではなく、コーチ、スタッフもひとつずつ勝っていけば、最終的なゴールは一緒だと思うので、みんなの力を使いながら同じ方向を向いて、ひとつのことに勝っていくことにフォーカスしていきたいと思います。

――ひとつひとつに勝っていくことは難しいことだと思いますが、それをやるために必要なことは?

このクラブでは、ファイティング・スピリッツ、プライド、リスペクト、ネバー・ギブ・アップは、ひとりひとりが持っているものだと思うので、そこをどう引き出していくか。日々、目の前のことを勝つことにフォーカスし、みんなのファイティング・スピリッツを合わせて、ひとりだけでは出来ないゴールに向かって、やっていくしかないと思います。

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◆自分も進化していく

――段階を経て、選手からコーチ、コーチからヘッドコーチになりましたが、コーチをやってみて、選手時代といちばん違うところはどこですか?

まず似ているところは、みんなが違う方向を向くと、良いものは出来ないということです。10番の司令塔としてみんながひとつのプレーにコミットする、コーチになってみんながひとつの練習にコミットする、というところを意識してやっています。コーチになって、改めていろんな人の力が必要だと思っています。

アシスタントコーチだけじゃなく、メディカルもS&C(ストレングス&コンディショニング)も運営グループも、グラウンドを整備してくれる人、食事を用意してくれる方々、いろいろな人が準備をした上で、チームがグラウンドに立てていると思っています。そこの方向性を間違えずに、みんなが良いアグレッシブ・アタッキング・ラグビーが出来るように、ひとつの方向に向けることが大事だと思っています。

――選手個々をより見ていくのか、コーチたちを見ていくのか、どんなコミュニケーションを取っていきますか?

それはその時のタイミングだと思っています。今回、新しいコーチングスタッフも集まっているので、まずはそこをドライブしないといけないと思っています。そこをドライブしてそこをセイムページすることによって、およそ55名いる選手たちとひとりずつコミュニケーションは取れないので、S&Cにしてもメディカルにしても、ラグビーコーチにしても、いろいろな人が選手とコミュニケーションを取っていきます。

そういう中で様々な情報を引き上げて、選手にアプローチするのか、スタッフにアプローチするのか、日々考えながらバランスを取ってやっていこうと思います。ゴールは、その選手がベストなパフォーマンスを出せるようにすることなので、やり方はその都度考えながら進めています。

――ワクワクしているという話でしたが、今の時点で大変だと思うところはありますか?

自分が選んでやっていることですし、大変なことはありません。自分で振り返って、ここはもうちょっと変えた方が良かったなとか、次に日にどうやって変えていくか、ちょっとずつ自分も進化してやっていく、そういう引き出しを持てるような人になりたいと思っています。

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◆その人がいたからこそ今がある

――ヘッドコーチになったタイミングはイメージしていた通りですか?

タイミングは選べないと思うので、選手の時もそうだったんですが、選ぶ人は自分の上にもいると思いますし、今回もいろいろなことがあって、この立場になりました。今は悔いが無いように100%やることが大事かなと思います。

――長い間選手をやっていて、こういう監督、ヘッドコーチが良いなと思う人はいましたか?

選手時代も様々なプレッシャーの中でやってきたので、良い悪いはたくさんあると思います(笑)。良いなとか悪いなとかは、最終的に振り返ってしか出て来ないことで、当時はいろいろな気持ちがありました。タイミング、年齢、パフォーマンス、チーム、そしてその環境などもあって、そういう気持ちがあったと思います。

たくさんのコーチに出会って、様々なアプローチをされましたが、実際にこの立場になって、「あ、あの時はこういうことで声をかけてくれたんだ」とか、「あの時、こうやってプレッシャーをかけられたんだ」とか、良い意味でも悪い意味でも、その人は僕のためにやってくれていたんだなと思います。その時に感じた良い悪いの判断とは関係なく、その人がいたからこそ今があるなという気持ちです。

――楽しみなことは何ですか?

ラグビーはひとりで戦えるスポーツではないので、お互いに日々信頼して、自分のため、チームメイトのため、このクラブのためという思いが高まっていっていることが楽しいと思うことですね。それがチームスポーツと個人スポーツの違いでもあると思います。

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◆どれだけ自分を知ることが出来るのか

――自分のため、チームメイトのため、クラブのため、そう思ってもらうためにしていることは?

最終的に自分に矢印を向けて、自分が成長することが、自分のためチームのためだと思っているので、いろいろなアプローチはしていますが、これをしているということはないです。

――自分自身の成長の余地はどこにあると思いますか?

チームの方向性の持って行き方、そこは日々学んでいっているところです。どこまで自分の屋根が広がっているか分かりませんし、自分がどれだけ自分を知ることが出来るのかのチャレンジがいちばんかなと思います。

気づきのタイミングがいろいろあると思うんですが、自分で気づくこともあれば周りから言われたり、フィードバックもらったり、選手の表情を見たり、大事なことは自分に矢印を向けて振り返ることだと思います。

――その時間はグラウンドを離れてから持つようにしているんですか?

いろいろなタイミングであります。常に悔いがないようにやることが大事だと思うので、100%でこのチームのためとやって、振り返って、もうちょっと改善したり、工夫したり、もっと良いアイディアがあれば、そっちを試してみますし、それがひとつ成功したら、次はより良くするためにどうやるかを考えてやっていきます。

ハイパフォーマンスの世界、リーグワンというトップチームが並んでいる中では、勝ち負けは本当に細かい瞬間で決まると思います。そこまでチームを持って行くことがひとつですし、そこで悔いがないように100%やって戦うということがいちばん大事だと思います。

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◆成長できるチャンスが目の前にある

――プレシーズンあるいはシーズンが始まって、例えば最初に上手くいかなかったり、負けが続くこともあるかもしれません。そういう場合はあまり慌てたりしないと思いますか?

コントロール出来ることは "WIN THE ONE" だと思います。もちろん人間だし、勝ちたい、このチームは勝たなければいけないということはベースとしてあります。勝たなければいけないのであれば、目の前にあることは何なのかと考えて、それに対して100%やることが大事だと思います。

――ひとつひとつの試合で勝つためのベストメンバーで臨んで、勝つためのベストな選択をして試合をしていくという感じですか?

メンバー選考はタイミングなどもあると思いますが、選手たちも手を挙げていかないといけないと思いますし、選手たちが持っているものを引き出していかないといけないと思います。毎試合毎試合、その週のベストメンバー、戦えるメンバー、ファイティング・スピリッツを見せられるメンバーを選んでいきたいと思います。

――ヘッドコーチとしての楽しさは、選手ともコーチとも違うと思いますが、ヘッドコーチとしてラグビーのここが良いと思うところはどこですか?

選手の時も引退してコーチになった時も、日々、自分も成長できるし、チームも成長できるチャンスが目の前にあることが、いちばんやりがいがあるかなと思います。

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――目標をお願いします

優勝です。"WIN THE ONE"をしっかりやれば、最後は求められている結果に繋がると思います。"WIN THE ONE" はチームのスローガンで、個人にもチームにも当てはまります。それが集まった時には、このクラブのアグレッシブ・アタッキング・ラグビーが生まれると思うので、そこはみんなに見て欲しいなと思います。

――アグレッシブ・アタッキング・ラグビーじゃないとなった時には?

そこは修正して、次の"WIN THE ONE"、次のプレーで直して、自分たちらしさを出していかなければいけないと思います。

――勝つ方法はヘッドコーチが示すということですね

方向性を決めるのは自分ですし、そこで責任を取るもの自分です。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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