2024年8月 2日
#915 松島 幸太朗 『もっと大胆に』
年々、進化している松島選手。昨シーズンについてそして新シーズンに向けての心境を聞きました。(取材日:2024年7月中旬)
◆リフレッシュ
――オフ期間中ですが、どんなことをして過ごしていますか?
最初の1ヶ月は何もしていないですね。家族と旅行にちょっと行ったくらいです。国内で、あまり遠出はしていなくて、近場で行きました。先週から少しずつ動き始めてウエイトなどでスタートしています。
――良い休みでしたか?
そうですね。久しぶりの長いオフという感じでした。
――そんなオフを過ごして、気持ちはリフレッシュしましたか?
割とリフレッシュ出来て、自分の身体を見つめ直す時期だと思うので、ゆっくりとまた身体作りが出来るかなと思います。
――身体自体は若い頃と変わりませんか?
そんなに感じないですね。あからさまに何か変わったということもありません。
◆難しいシーズン
――2023-24シーズン、3位決定戦で勝った場内インタビューで、これで次のシーズンへのモチベーションが保てたというニュアンスのコメントがありました。その時の心境はどうでしたか?
言いましたっけ(笑)。僕自身、身体が疲れているなとか、ワールドカップの疲れとかが抜けきれずに、昔だったら大丈夫だったんですけれど、気持ち的な面でワールドカップが不完全燃焼だったので、それを引きずりながらも頑張ろうとはしていました。チームとしても後半戦で勝てなかったりすることも続いていたので、いろいろと難しいシーズンだったと思います。
――いちばん難しかったところはどこですか?
足がかなり痛くて、リーグ戦最後の試合に出られないくらい痛すぎて、その痛みは2ヶ月くらい続いていて、ぜんぜん思うように走れないことが続いていました。個人的にはそこが結構苦しかったですね。
――足が痛むことは珍しいことですか?
大体疲労が溜まっていたりするとなるんですけれど、ここまで痛くなるのは初めてでした。だから不安はありました。
◆チーム全体の意思統一
――チームとしては、点を取るけれど点も取られるという戦い方でしたが、それについては?
全員の意思統一が出来ていないというか、こっちが何フェーズも重ねてトライを取っても、簡単にトライを取られるシーンが多かったと思います。そういう展開はゲーム中にメンタルに来るので、そういうことが多くて、だんだんみんなが迷い始めて、何が正解なんだとか、そういうことがひとりひとりあったと思います。それがシーズンを通して出ていたかなと思います。
――統率というフルバックの役割でも苦しかったですか?
割と、この試合はこうやって攻めていくことがシステム化されていたので、その通りに動かなければいけません。誰かひとりが疲れてポジショニングが出来ていなかったりすると、すぐに崩れてしまったりしていました。本当にひとりひとりが臨機応変に対応できるようにしていかなければいけないかなと思います。
誰かが崩れたとしても、キャリーでしっかりと前に出て行ったり、迷ってプレーするのではなくて、自分の位置をしっかりと持ちながら、システムがこうだからじゃなくて、しっかりと自分の意思で動き出せると良いのかなと思います。
――そこが次のシーズンでの課題だと思うんですが、みんなで話し合って共通意識を持ってやらないと難しいですね
そうですね。このプレシーズンでなぜ出来なかったのかを話していくと思うんですけれど、誰が出ても良いように、チーム全体の意思統一が大事だと思います。
◆ぜんぜん大丈夫
――個人的なプレーでは、ボールを持ったら絶対に前に出ていたと思いますが、あれは精神力ですか?それとも技術ですか?
気持ちの方が今シーズンは先行していたかなと思います。例年よりは身体は弱かったかなと思っていたので、強さがちょっとなかったかなと思うのと、スピードについては足の影響が大きくて、痛くない走り方で走っていたので、本来の姿では走れていませんでした。そのふたつの自分の強みが出せていませんでした。
――痛いことを庇うことで他の個所が痛くなる可能性があるのではないですか?
他のところを怪我しないようにケアをしていました。それでも、庇って他を痛めてしまうんじゃないかという怖さもありました。
――身体の強さはシーズン前の課題でもありましたが、そこについては来シーズンも課題になりますか?
来シーズンに向けての課題にも取り組んでいて、自分の強かった時のメニューを少しずつやりだしているので、ゆっくり時間をかけて作っていきたいと思います。
――身体の強さはどこの強さですか?
単純に背中とか足腰が重要なので、シーズン中もやってはいたんですが、大きい筋肉のところしかやれていなかったり、あまり時間をかけられずにいました。代表の合宿では身体を作るという次元ではない疲れだったので、シーズン中にやっていてもあまり手応えは無かったですし、改めて自分の身体を作りたいと思ったシーズンでした。
――休んだら足はだいぶ良くなりましたか?
足はぜんぜん大丈夫ですね。
――パスとキックについてはどうでしたか?
良くなってきていると思います。キックについては更に意識して取り組んでシーズンでしたし、裏の空いているスペースにキックして相手にプレッシャーをかけるというプランも多かったです。全体練習が終わってからキックの取り組みもやっていましたが、キックはとても良かったんじゃないかなと思います。
◆モチベーションが高くなっています
――来シーズンへのモチベーションについてはどうですか?
今は自分の足りていなかったところに取り組んでいるんですが、そこが強くなっている実感はあるので、そういうこともモチベーションに繋がっていますし、上手くやれているという感覚があるので、モチベーションが高くなっていますし、今の代表戦を毎週見ていますけれど、若い選手が出てきたりして、面白いなと思いながらモチベーションを高めています。
――自分が代表に行っても上手く出来るというイメージはありますか?
いま自分の身体を作るとうい責任感があるので、モチベーションは下がっていないです。
――最終的には日本代表を目指したいと思っていますか?
そうですね。まずはサンゴリアスで自分のスタンダードを上げて、良いプレーをしていればまた選ばれる可能性は出てくると思うので、先を見すぎず、まずはサンゴリアスでの試合が、毎試合日本代表の選考という感じでやっていきたいと思っています。
◆ランを多く
――苦労したシーズンながら、やっぱりラグビーって面白いって感じたところはありますか?
毎試合、例えばキックを使うとか、ランを多めに攻めていくとか、そういうプランがありますが、やっぱり自分たちがランを多くするというプランの時はみんなが生き生きしてやっている感じはあったので、そこは自分たちの強みなんだなと思いました。
プランがあるとうい前提で戦っているので、プランを遂行しなければいけないということはありますが、このプレシーズンで更に自分たちのアタッキング・ラグビーをもっと深めていきたいと思っています。
――以前のインタビュー記事に「目標は紙に書いている」とありましたが、今でもやっているんですか?
今は紙じゃなく、iPadに書いています。長い文章ではなくて、今年のシーズンの目標であったり、自分でここを見せるというところだったり、シンプルなことですね。
――来シーズンの目標を、いま書くとすると何と書きますか?
今だったら、昨シーズンはランが出来なかったという思いがあるので、そのランが出来る身体を作っているので、次のシーズンは「ランで魅せたい」と思っています。
――サンゴリアスは長いこと優勝できていませんが観客動員ではいちばんでした。ファンに対してメッセージをお願いします
それだけ期待してもらっているということだと思うので、毎年期待に応えたいという思いでやっています。本当に細かいところで負けていると思うので、その細かいところが結果的に大きくなっていると思います。それをしっかりと見つめ直して、もっと大胆に、次のシーズンはサンゴリアスのアタッキング・ラグビーを見せたいと思っています。引き続き応援をお願いしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]