2024年6月28日
#910 髙本 幹也 『10番として大事なこと』
新人ながら全試合に出場したサンゴリアスの新しい10番・高本選手。シーズンオフの個人トレーニング後にインタビューしました。(取材日:2024年6月中旬)
◆どっちかが勝つ
――3位決定戦が終わってグラウンドに座っていましたね。みんなから声をかけられ、なかなか立ち上がれずにいましたが、あの時はどんな状態でしたか?
初めての痛みの感覚で、終わって検査をしたら少し痛めていました。今はぜんぜん大丈夫ですけれど、試合の70分くらいの時は右の脇腹辺りが痛かったですね。
――どこかのプレーで痛めたんですか?
はい、タックルに入られて。その時も痛かったんですけれど、あと10分だったので頑張りました。
――痛い時に逆転のゴールキックの場面が回ってきましたが、あの時は?
いま冷静に考えたら、チェス(チェスリン・コルビ)に変わってもらえば良かったと思います。あの時は入れてやろうと思ったんですけれど、外れちゃいましたね(笑)。
――あまり言い訳をしないようですが、痛さもあったんですか?
痛かったんですけれど、あの場面は決めなければいけない場面でした。
――外した時はどんな気持ちでしたか?
外して同点のままでしたよね。けれど、同点だったので、気持ち的には焦っていませんでしたし、同点で終わることは無くて、どっちかが勝つとは思っていました。最後に江見さんがトライして、独走したあたりから僕は「無理だ」と思って座り込みました。江見さんがトライしてくれて本当に良かったです。
◆言う時もあれば言えなかった時もあった
――本当に勝って良かったですよね。シーズン終盤は勝ちがない試合が続きましたが、司令塔として、いろいろなことを考えましたか?
そうですね。シーズンを通して良い試合もあれば、悪い試合もあったんですけれど、良い試合も悪い試合も絶対に10番が関係していると思うので、一貫してチームが持っている力を100%出し切ることは10番として大事なことなんだなと、最後の方に感じました。
――最初のうちは最後に逆転して勝つという試合がいくつかあって、何とか勝利を収めていましたが、終盤になってそれが逆に逆転されることが続きました。司令塔として何か違いはありましたか?
やっぱり少しの甘さを、試合をやりながら感じました。気が緩んでるとか、タックルが高いとか、試合中に感じたんですけれど、10番としてそういうところも言っていかなければいけないと思います。次のシーズンはチームがどういう状況なのかを見て、いい声掛けをしていければいいかなと思います。
――今シーズンはあまり出来ませんでしたか?
いや、していたんですけれど、自分のパフォーマンスにも納得していなかったので、言う時もあれば、言えなかった時もあったかなと思います。
◆自分がボールを持って何かをする練習
――自分のパフォーマンスで納得していなかった部分はどこですか?
やっぱりアタックが良いチームなので、そこでもっと引っ張っていきたかったということがあるんですけれど、良い部分で言ったらキック、そしてゲームプランをしっかりと遂行するところは出来たと思います。自分の持ち味で、ボールを持って何かをするということがあまり出来なかったので、そこは課題ですし、僕がそういうところをもっともっと出来れば、チームはもっと勢いづくのかなと思います。
――ピンポイントを狙ったキックは正確でしたね
キックは割と自信がある方なので、キックの練習量は多かったですし、今後も減らすつもりはないんですけれど、もっと自分がボールを持って何かをするということを練習に取り入れていった方が良いのかなと思います。
――キックにはリスクもあると思いますが、あれだけ正確に蹴れるコツは何ですか?
ひとつは練習量じゃないですかね。僕としては練習をすればするだけ上手くなると思っているので。それに加え、16試合プラス2試合に出させてもらって、最初の方がどちらかと言えば保守的になっていたんですけれど、途中からは攻められるようになっていましたし、もっともっと攻めていきたいと思っています。
――保守的になっていたのはキック以外も?
キック、そしていろいろな意味で保守的になっていました。
――それはなぜですか?
やっぱり気を遣っていたとは別だと思いますが、チャレンジするんですけれど、怖がっていたのかビビッていたのかは分かりません。けれど、デビュー戦が終わって、次の試合ではいけていました。
◆試合の前に不安な要素を作らない
――まるで新人とは思えない落ち着きとプレーぶりで全試合に出場しましたが、初出場する前には自分が出た時のイメージが出来ていたんですか?
目標はしっかりと掲げていて、全試合スタメンで出るということを目標にしていました。それに加え、サンゴリアスで優勝することを目標に掲げていたので、そのためにプレシーズンの時から練習に取り組むことを頑張っていました。1戦目のクボタ戦で、僕のパフォーマンスがぜんぜん良くなければ、そのチャンスを逃した僕が良くなかったと思うので、逆にチャンスを掴めたことが良かったかなと思いますし、そのチャンスでしっかりと自信がついて、18試合に出られるまで行けたのかなと思います。
――第1戦ではイメージ通りプレー出来ましたか?
そうですね。チームのプランもあって、チームに対して良い仕事が出来たかなと思います。
――なぜ出来たのでしょうか?
試合の前に不安な要素を作らないようにしているので、準備の段階でクリアにして、試合になれば後はやるだけ、試合で起きたことは試合中に判断するということが、僕としては大事なことなんじゃないかなと思っているので、あの時は試合前に不安な要素はありませんでした。
――準備にはコミュニケーションが含まれていると思いますが、そこも意識して取り組んだんですか?
9番の選手もそうですし、15番、センターの選手、バックスの選手とはひと通りコミュニケーションを取って、あとはキャプテンのホリさん(堀越康介)とか、ラインアウトリーダーのホッコ(ハリー・ホッキングス)とコミュニケーションを取って、試合前に良い準備が出来たと思います。
――そこで成功したということは、その後もそのやり方を続けていったんですか?
はい。シーズンを通して、準備のところはとても良かったかなと思うんですけれど、試合中に起きたことに対してどうやって行くのかという部分が、僕も含めて、課題のところじゃないかなと思います。
◆フィットネスを上げてもっとボールに触りたい
――コンバージョンキックについては、決まらない時には決まりませんでしたね
風が強い時には、たくさん失敗しました。修正しようと思っていたんですけれど、なかなか修正できなくて、風が強い時にはちょっと悩みましたね。
――その後の練習などで対応策が取れましたか?
対応策を取ったんですけれど、失敗した後にはいつも通りのキックに戻すことを心掛けていました。
――失敗した時には何か変えていたんですか?
疲労とか試合のコンディションとかで身体の状態も変わってくるので、いかに練習通りに蹴ることが出来るかが、試合でも大事になってきます。試合が終わって2日後くらいには、いつも通りのキックに戻すように練習していました。
――これだけ試合に出たということは、体力的な自信はあるんですか?
普通に80分間やれる体力はあると思っていますが、もっともっとボールに触れて、もっとプレーに参加したいと思ったので、フィットネスを上げてもっとボールに触りたいと思いました。
――そこがオフシーズンのトレーニングテーマでしょうか?
フィットネスはそうですね。シーズン中はフィットネスのトレーニングがなかなか出来なくて、シーズンがどんな感じかも分かりませんでした。けれど1シーズンやり切れたので、シーズン中もボリュームを上げて、フィットネスが上がるメニューをやろうと考えています。
◆成功率を上げる方が良い
――シーズンをやり切って、いちばん印象的な試合は何ですか?
プレーオフ準決勝の東芝戦じゃないですかね。それまで2敗していましたし、本当にみんなが優勝したいと思っていましたし、しかもめちゃくちゃ良い準備も出来ましたし、それで最後に負けてしまって、やっぱりそこで悔しかったですね。あの試合で負けて悔しかったので、いちばん印象に残っています。負けたら終わりの試合でしたからね。
――準決勝での負けを乗り越えて3位決定戦では勝ちましたね
負けに行く試合は無いと思っているので、みんなが勝ちたいと思っていました。前半から後半の最初の方がぜんぜん良くなかったんですけれど、途中からスイッチが入りました。サンゴリアスのメンバーは分かっていると思うんですけれど、しっかりと力を出し切れば勝てるので、どこからか力を出せていないわけです。それが僕たちが原因なのか、相手が原因なのかは分かりませんが、勝ち切れたのは大きかったですね。
――得点ランキングは3位でしたが、来シーズンは狙いますか?
僕としては成功率を上げる方が良いと思っていますし、もう少しトライを取ってチームに貢献できたらいいなと思っています。得点王はそんなに意識していなくて、全試合に出られたら、それなりの得点にはなるかなと思っています。
――新人王についてはどうですか?
まあ、嬉しいなくらいですね。
◆優勝して恩返し
――来シーズンに向けた課題をまとめると?
フィットネスの部分と、アタックでもっと引っ張っていくこと、そのふたつじゃないですかね。ディフェンスは今シーズンだいぶ練習したので、これからも練習はしますが、アタックのところを強化していきたいと思っています。
――シーズンを通して応援してくれたファンの皆さんにメッセージをお願いします
1年間、応援ありがとうございました。ホストゲームの時もビジターゲームの時も、黄色い服を着た人たちがたくさん応援に来てくれていたので、とても力になりましたし、声を出して応援してくださる方もたくさんいたので、とても嬉しかったです。来シーズンは絶対に優勝して、恩返ししたいと思います。
――客席から「たかもとー」という声は聞こえるんですか?
そこまでは聞こえないですね(笑)。けれど、自分の名前が入ったタオルがあると、それは分かります。試合中は気にしてはいられないですけれど、試合終わりとかにタオルを掲げてくれたら、有難いですし、とても力になっています。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]