SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2024年6月 4日

#906 江見 翔太 『声をかけてくれる姿にグッとくるものがありました』

3位決定戦で勝利のトライを決めた江見選手。どんなことを考え、どんな気持ちでプレーしていたのでしょうか。(取材日:2024年5月下旬)

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◆試合を決めるのは俺らだぜ

――3位決定戦での勝利のトライ!あの時はどんな気持ちでしたか?

出場するタイミングが、展開的にだいぶ遅くなったというか、もともと呼ばれたのがラスト10分くらいだったんですが、敵陣でのプレーが続いて、「あのプレーが切れないと、入れないよ」と言われていました。「時間が過ぎてっちゃうよ」って思いながら(笑)、結局は敦輝(山本)とたっちゃん(宮崎達也)と同じタイミングで入ることになりました。「試合を決めるのは俺らだぜ」と。敦輝はファーストキャップだったので「楽しんでいこうぜ」と声をかけて、あまり気負わずに入りました。

――気合は相当入っていましたか?

気合は前半からずっと入っていました。僕はリザーブに入って、ずっとベンチに座っていることはないです。先発メンバーは試合の序盤は息が上がって苦しかったりして、中盤くらいから慣れて動けるようになるという感じなんですが、後半から入るリザーブメンバーって難しいんです。リザーブメンバーはフレッシュレッグと言われて入りますけれど、入ったすぐは息が上がって苦しいんです。僕はそれを避けるために、出来るだけベンチにいる時から動いて心拍数を上げて、それを10分おきくらいにやっている感じです。

――ボールが転がってきた時には「来たぞ!」という感じでしたか?

あの瞬間はどうですかね。アタックしたいという思いはありましたが、ディフェンスから始まって、なかなかアタックには展開されないとは思っていました。ディフェンスでチャンスがあればしっかりとヒットして、タックルミスだけはしないようにしたいと思っていました。

僕がボールを拾う前は、アマナキ・レレイマフィが内側に走ってきて、僕のサイドの方がちょっと手薄になって、僕の内側が山本敦輝になって、「ゲインラインを切られるかもな」と思ってディフェンスしていました。相手がミスするとは思っていませんでしたが、どこかでラインを上げて止めなきゃと思っていたところでボールが転がってきたので、それに上手く反応できて良かったです。

――狙っていたわけではないんですね

結果的に転んだ選手が自分の方へ回ってきたんですけれど、その選手にタックルに行くか、そこを流して外側でディフェンスするかを迷っていました。少しラインを上げてはいたんですが、パスと同時にラインを上げたタイミングでボールが転がったので、そのまま拾って走りました。

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◆次に繋がる勝利

――走り始めてどうでしたか?

アップの場所も狭い場所でやっていて、長い距離を走っていなかったので、最初は少し足がもつれました(笑)。低いボールを拾ったので、そこから態勢を立て直すのに、「やべー、足が絡まった」って(笑)。「追いつかれるかも」と思いながら走っていて、結果的に追いつかれなくて良かったです。

――田中監督も「追いつかれるかと思った」と言っていましたね

僕はウイングのタイプとしては、あのような場面で走り切るタイプのウイングではないというか、スピードを強みにしている選手ではないというか。ただ、あのようなシチュエーションでは取り切らなければという思いがあったので、必死ではありました。

――トライをした瞬間は「やった!」という感じですか?

そうですね。トライを取る前から泰雅(尾﨑)が横でサポートしてくれていて、めちゃくちゃ喜んでくれたので、僕も嬉しかったです。

――みんなが大喜びしていましたね

そうですね。あの瞬間は正直、よく分からなくて「トライして良いんだよね?」っていう感じでした(笑)。チームとして勝って終われたということで、その決勝点を取れたということは、とても有難いですし、嬉しいです。
3位決定戦という、チームが求めていた舞台ではありませんでしたが、次に繋がる勝利として、次は国立競技場で、東芝とパナソニックがやったような試合、あの舞台で今回僕がやったようなプレーが出来れば、いちばん嬉しいですね。

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◆穴を埋める

――今シーズンは3トライという結果でしたが、シーズン全体としてはどうでしたか?

ウイングとしてもっとトライを取りたい部分はありましたけれど、トライだけじゃない部分でもチームに貢献しようと思っていました。ディフェンスだったり、ラインブレイクで勢いをつけたり、フィジカルのところがチームからは求められていたと思うので、そういう部分でコミットしようと思っていました。

――シーズン序盤からメンバーに入って、途中メンバー外になりましたが、また終盤にはメンバーに入りましたね

大きな怪我じゃなくて、練習にはずっと入っていたんですけれど、ハムストリングに多少の違和感があって、コーチ陣やスタッフ陣がケアしてくれていました。自分の準備不足もあったと思うので、そこは学びになったと言うか、しっかりとケアしなければいけなかったと思います。

――後半戦で出続けたということは上手くいったということですね

怪我があって僕がリザーブに入ったり、チェス(チェスリン・コルビ)が怪我をしてメンバーに入ったりして、その穴を埋めるところがありました。チームとして自分の役割は果たせたのかなと思います。

――デビューしたての頃はたくさんトライを取っていましたが、あの頃と比べて今のレベルはどうですか?

上がっているとは思います。ただ、勢いは当時の方があったのかなと思います。今の方が身体は大きくてフィジカル面は上がっていると思いますが、ワークレートという部分では当時の方が走れていたのかなと思います。

――スピードはどちらが速いんですか?

当時の方が体重が軽かったので速かったかもしれませんが、当時の映像などを見ると、細いという印象を受けますね。

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◆自分のサイドでトライを取られたら自分の責任

――ウイングとしてはどこがいちばん伸びたと思いますか?

ディフェンスの部分でいやらしく守るというか、まだまだですけれど、その部分は当時より出来るようになったのかなと思います。あとはブレイクダウンを遅らせたり、ファイトしたりする部分は出来るようになったと思います。

――今の課題は何ですか?

ディフェンスで江見がいたら安心できるというチームからの信頼感を、もう少し得られたら良いなと思います。例えば、アタックではチェスやマツ(松島幸太朗)に渡せば何かしてくれるというチームからの期待感、信頼感があると思うんですが、ディフェンスは1ヶ所でもほころびがあると崩されてしまうので、自分のサイドでトライを取られたら、自分の責任だと思っています。それは長友ヤスさん(泰憲/普及兼プロモーション)からの教えなんですが、そこでトライをされないようにするためにはどうすればいいかを考えた時に、細かいコミュニケーションで防げたりするので、それが出来たらもっとチームから信頼されると思っています。

――体力的にはまだまだ大丈夫ですか?

疲れることは疲れますけれど、みんなから劣っているとは感じていません。フィットネスが上がっているわけではありませんが、現状維持は出来ているのかなと思います。

――目指しているところはどこですか?

今回、晟也(尾﨑)がベスト・フィフティーンに選ばれていますし、マツやチェスがいて、今回はたまたまリザーブで選んでもらいましたが、試合に出ていない仁熊や河瀬、雲山がいて、もちろんヅルさん(中靏隆彰)もいて、ウイングは常に競争が激しいポジションです。スタメンを取りに行く気持ちはありますけれど、チームとしての成長という部分で、若手にもっとプレッシャーをかけたり、教えたり、上手くやりながら、チームとして成長できればと思っています。

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◆ブレイクダウンの攻防

――チームとしては前半節では接戦で勝ち、後半節ではなかなか勝てない時期が続いた時がありました。どのチームも強くなっていますか?

リーグとしてレベルが上がっていると思います。フィジカルもナレッジもフィットネスもそうですし、2連覇した時のサンゴリアスの強みって、他のチームよりも後半に走り切れる、ラスト20分でもエンジンをかけ直してフィットネスで上回れるということがあったと思います。今はその差が無くなってきていて、リーグ全体としてフィジカルが上がってきていて、そこから目を背けちゃいけない部分があると思います。

あとはブレイクダウンの攻防は、アグレッシブ・アタッキング・ラグビーの生命線なので、そこの部分で後半戦はやられてしまったかなと思います。

ブルーズとの試合で負けた時に、「サンゴリアスのプライドは何だ?」「THIS IS SUNGOLIATHとは何だ?」ということについてチームで話し合った時期がありました。そこで取り戻せて、リコーには完封勝利したりもしましたが、またギリギリの試合が続いたり、終盤では負けてしまったりしていました。

最後、やり切ろうと思って3位決定戦に臨んで、チームのフラッグにそれぞれの気持ちを書いて一旦は気持ちがまとまったんですけれど、全体を見て深掘りしていくと、それぞれの解釈の違いがあるのかなと感じる部分はありました。

――来シーズンに向けた大きな課題ですね

プレーオフで決勝に行った2チームは、一貫してやってきたことを続けてきたチームだと思います。サンゴリアスが相手チームによって戦術を変えたりするということは、相手からするととても分析がしにくいと思います。それは土台があった上でやった方がよくて、土台の部分がもう少ししっかりとしていれば良かったかなと思います。

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◆東芝にしっかりとリベンジ

――日本代表についてはどうですか?

現役のうちは求めていますけれど、年齢的な部分は否めないですかね。日本代表監督がエディー(ジョーンズ)さんになって、サンゴリアスに携わって来られて方なので、僕らのことはよく理解してくれていると思いますが、エディーさんは4年後を見据えていると思いますし、更にもっと先を見据えていると思うので、代表に入る入らないということにはそこまでこだわっていないですね。

どちらかと言うと、チームに対して、サンゴリアスに対して、自分がどうコミット出来るか、よりサンゴリアスを強く、愛されるチームになるために、このオフの期間の過ごし方だったり、普及活動だったりに積極的に参加したいなと思っています。

――ファンから愛されるチームとは、やはり強さが必要ですか?

もちろん強いチームの方がテレビで取り上げられると思いますし、プレーオフに出られるチームは4チームしかいなくて、その分、人目に触れる機会も多くなると思います。ファンが応援したくなるチームが、強いチームなのかなと思います。

準決勝の東芝戦に負けた時に、黄色い服を着て応援してくれた方が多くて、負けた後に肩を落としましたが、ファンにはしっかり挨拶しようと思ってグラウンドを回りました。思ったよりもお客さんが残ってくれていて、「3位決定戦も頑張って」とか、声をかけてくれる姿を見て、そこにグッとくるものがありました。負けても応援してくれるファンの人たちがいて幸せだなと思ったので、今までやってきた普及活動やホストゲームでも取り組みは間違っていなくて、根付いてくれているのかなと感じています。だから決して強いだけ、勝ち続けることだけが、応援されるんじゃないんだなと、初めて感じたかもしれません。

――お子さんはラグビーを認識し始めましたか?

上の子は今年5歳になるんですけれど、認識しているんじゃないですかね。僕は今年で33歳になりますが、「5歳の時、覚えている?」と言われたら覚えてないですよね(笑)。写真を見たり、断片的な記憶はあるかもしれませんが、「これは5歳の時の記憶だ」なんて、なかなか覚えていないと思います。小学生くらいになれば記憶もしっかりとしてくると思うので、そのくらいまでは頑張りたいと思います。

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――今シーズン、応援してくれたファンに向けてメッセージをお願いします

結果は求めていた結果じゃないですし、3位決定戦という求めていた舞台でもありませんでしたが、一時は19点差があった中からチームで盛り返して勝ち切れたというのは、次のシーズンに必ず繋がると思うので、それは来シーズンに必ず活かして、またプレーオフに出て、東芝にしっかりとリベンジしたいと思います。優勝したチームですし、同じ府中を拠点とするチームなので、誇らしいことではあるんですけれど、今度は府中に優勝杯を持ち帰るのはサンゴリアスであると信じているので、皆さんも引き続き応援をお願いいたします。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

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