2024年5月24日
#905 尾﨑 晟也 『自分たちのプライドを取り戻すために』
リーグ戦でラインブレイク数トップの副将・尾﨑選手。3位決定戦へ向けての意気込みを聞きました。(取材日:2024年5月下旬)
◆一瞬一瞬のプレーの勝負どころ
――プレーオフトーナメント準決勝は残念な結果でした
率直な気持ちは、悔しい。プレーオフ準決勝に向けて2週間という準備の中で、チームとして本当に良い準備をしてきたと思いますし、自信もありました。やるべきことが全てクリアでした。だからこそ、余計に悔しい気持ちがあります。
――試合の入り方がとても良かったと思いますが、結果としては突き放せず逆転されました。突き放せないのは、今シーズンの後半の傾向ですね
ぜんぶがぜんぶ、同じ形ではないとは思いますが、試合を振り返ってみたら、一瞬一瞬のプレーの勝負どころで負けていたり、本当に細かいところがポイントだったと思います。そこで自分たちに流れを引き寄せられなかったという局面がずっと続いてしまって、後半にもつれたゲームや負けに繋がったゲームが多かったと思います。
――流れを引き寄せられなかった要因は?
プレーオフ準決勝で言えば、前半の最初は良いプランで相手の敵陣に行けましたし、本当に点を取られるような展開ではなかったと思います。その後自分たちが攻めていた中で、ひとつのミスで自陣まで攻め込まれて、そこから上手くいかずに相手の強みを引き出してしまい、スコアまで持って行かれたシーンがありました。あそこで自分たちが細かいことを丁寧にやってスコアまで持って行けていたら、ゲームの流れは変わっていただろうと思います。本当に小さなことだと思うんですけれど、そういうところが我慢しきれなかったところであり、スコアまで結びつかなかったところだと思います。
――それはシーズンが深まるにつれての課題だったと思いますが、そこを引っ張っていかなければいけないリーダー陣の一人として、どんな思いがありますか?
チーム全体でやろうとする意識とか、やっちゃいけないプレーの選択とか、そういう部分の理解がだんだん深まってきたことはあっても、試合ではどうしても起きてしまうシーンがあります。その中で、次の選択をどうしていくか。そこのところを今シーズン、リーダーとして提示するというところは成長したと思うと同時に、チームが出来なかった時のもどかしさはありました。
――今シーズンはチームとして得点は多いですが失点も多いかと思います
ディフェンスのところはいろいろな原因があると思うんですけれど、いちばんは自分たちが低くタックルに行けなかった時とか、ターンオーバーが起きた時のリアクションの悪さとか、そういったところで相手に一瞬でトライを取られてしまうシーンが多かったと思います。まだ3位決定戦は残っていますが、そこは来シーズンの課題にしていかなければいけないと思います。攻撃面では上手くいっていた部分もあったので、ディフェンスのところを強化する、ディフェンスが強いチームがチャンピオンチームになれると思うので、そこはチームとしての課題だと思います。
◆ボールを持ったら何かをしよう
――個人的にはさらにまた飛躍したシーズンだと思いますがいかがでしょう?
シーズンの前半戦は、正直、あまり調子が上がっていない感じはあって、コンディション的にも万全ではありませんでした。プレシーズンでの怪我が長引いたりして、上手く準備が出来ていませんでした。試合を重ねる毎に、徐々にコンディションが上がってきましたし、キックを上手く使ったりして、プレーの幅はとても広がったと思います。
――尾﨑選手にボールが行くと、必ず何かをやってくれるという信頼感、期待感があります
もちろんボールを持ったら、ゲインやトライなど、何かをしようという気持ちはありますし、それが結果に結びついたことも多かったと思います。そこは結果としては良かったと自分では思います。
――昨シーズンと比べて、どこが良くなったと思いますか?
ベーシックなスキル、キッキングスキルを磨いたということもありますが、判断の早さが良かったと自分の中では思っています。キックを蹴るのか、ランで行くのか、ボールを次に活かすのか、そういう一瞬一瞬の判断が早くなったと感じています。
――相手に詰められても抜け出すシーンが多かったのではないでしょうか
1対1のところはもともと得意だったので、迷いが消えてそこに行きつくまでの判断が早くなったことで、より仕掛け方が良くなったと思います。
――判断が早くなったのはキャリアを積んだからですか?
チームとしてのプランの中での自分の役割がとてもクリアだということと、自分がこのエリアではどういう判断をしなければいけないのかということを、練習の中から常にイメージ出来ていたということが、判断の早さに繋がっていると思います。
――選択肢が絞られている中で判断をしていくということですか?
そうですね。選択肢を絞ることが出来ているところも、成長したところだと思います。
◆ゲームを支配する
――2シーズン連続のトライ王を目指していましたが、もう少しのところでしたね
あと1トライでしたね。最後にもう1つトライを取っていたら、でしたね。悔しいのは悔しいですね。
――次のシーズンもチャレンジしますか?
そうですね。ウイングである以上はトライを取るという仕事があるので、そこを目指したい気持ちはありますが、今シーズンはトライだけじゃなくて、ラインブレイクの個人タイトルを取ったり、いろいろなところに顔を出して、ボールタッチを増やしたり、チームのチャンスメイクをしたり、そういったところも自分の中では出来たと思っているので、あまりトライに固執しないようにはしています。結果としてタイトルが取れれば良いなとは思っています。
――ラインブレイク数がトップだったのは、先ほどの良くなった部分が要因ですか?
個人的にはそこが良くなったということもありますが、チームとして上手く僕のところにボールが回っているということが、アタックが上手くいっている証拠だと思うので、そこまでの運び方とか、アタックの持っていき方が良かったのかなと思います。それに加えて、個人の判断が早くなったことが、この賞に繋がったかなと思います。
――ウイングというポジションをどこまで極めたいですか?
ウイングとしての仕事はたくさんありますし、ウイングとしての課題もたくさんあって、それをひとつひとつ改善していくことを、いま目標としています。それに加えて、ゲームを支配すること。アタックだったらチームのメインになれるし、9番や10番などゲームをコントロールしている選手がいる中で、それを手助けするのもウイングの仕事だと思っています。
全体を見て、ゲームの流れを見るのもウイングは出来ると思うので、9番、10番がゲームを支配するだけじゃなくて、ウイングとしてそれが出来るチームは強いと思いますし、ウイングとしてそういう選手を目指していいきたいと思っています。アタックはもちろん、ディフェンスでもウイングの判断でコントロールしている部分があるので、それが出来るようになったら、チームはもっと強くなると思いますし、それを目指していいきたいと思います。
――いちばん大外で見ていると、相当見えますか?
見えますね。もちろん中の選手よりプレッシャーも薄いですし、余裕はあると思うので、ゲーム全体、どこで何が起きているかは見えます。どこでどう、外から中に入って行くかの判断も、出来るようになっていると思います。
◆競りに行ってマイボールを獲得する
――課題は何ですか?
ウイングとしてのスキルで言えば、まだまだハイボールのところ、いま世界のラグビーはハイボールキックなどが中心になっているので、そこのキャッチじゃなくて、ボールを追う部分でプレッシャーをかけられるような練習をもっとやっていかなければいけないですし、ずっと課題であるディフェンスはレベルアップしないといけないと思っています。
――自陣から蹴った時にキャッチするのはかなり難しいと思いますが、キャッチが出来そうな時には狙いに行っているんですか?
もちろん毎回狙いに行っていますし、プランによってはキャッチした相手にタックルに行くこともありますが、競りに行ってマイボールを獲得するということは大きな戦術でもありますし、それが出来るとチームは変わると思います。
――相手が蹴ってきた場合は取ることが必須ですよね
もちろん、キャッチするのは当然だと思います。
――今シーズンは弟(尾﨑泰雅)も飛躍しましたね
弟だからとかじゃなくて、チームメイトとしてとても頼りになる存在になってきていると思いますし、ただ、もっともっと出来ると思うので、彼にはもっと期待しています。今シーズンはプレーもそうですけれど、精神的にも余裕が出来てきたというか、自分がどういうプレーをしていくかということを、考えられるようになったと思うので、そこが成長した部分なのかなと思います。
――やんちゃな弟キャラはまだ残っていますか?
そこはあると思います(笑)。やんちゃと言うか肝が据わっているというか、そこは良い部分だと思うので、それにコントロールする部分が身についてきて、プレーの安定感も出てきているんじゃないかなと思います。
◆3位決定戦で自分たちが何を見せるか
――さて、3位決定戦は昨シーズンと同じ対決になりました
目指してきたところには届かなかったんですけれど、この3位決定戦で自分たちが何を見せるかが大事だと思いますし、自分たちのラグビーを本当に最後、そこで見せるということが大事だと思います。
――ファンの皆さんに見てもらいたいところは?
自分たちのプライドを取り戻すために、自分たちのラグビーを体現する。ひた向きさであったり、泥臭さという部分をグラウンドの中でやり続ける。相手よりも走り回って、身体をぶつけて、そういうラグビーのシンプルなところ、いちばん勝負になるところを、全面に出していきたいと思うので、最後まで80分間、諦めずにやり続けたいと思います。
――トライ王に足りなかった分もトライを獲ってください
はい、獲ります!
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]