2024年5月17日
#904 堀越 康介 『100%の準備を80分間出し切る』
今シーズンもいよいよプレーオフ、キャプテン堀越選手に意気込みを聞きました。(取材日:2024年5月上旬)
◆みんなで勝ち取ったプレーオフ
――レギュラーシーズン3位でプレーオフ進出、今の気持ちは?
勝ちも負けもあって、その中でもみんなで課題を見つけて成長しようとするシーズンでした。みんなで勝ち取ったプレーオフだと思うので、そこは素直に嬉しいですね。
――シーズン序盤に考えていたことと比べ、上手くいっている部分と上手くいっていない部分はどこでしょう?
上手くいった時は、準備していたことを100%グラウンドで遂行できた時で、勝てている試合が多いと思います。負けた試合はやはりその60~70%しか出来ていないと、このパーセンテージでは今のリーグワンでは負けてしまいます。これからプレーオフに向けては、いかに100%の状態で誰も迷わずに自信を持ってグラウンドでプレー出来るか、がキーになってくると思っています。
――100%と60%の違いはどこで出てくるんですか?
ひとつはプレーの精度が疎かになると、どうしてもやろうとしていることが出来なくなってしまいます。そこの精度の部分です。あとは、プランの理解という部分も、より深くしていくことによってミスが減ってくると思いますし、そういうところが大事になると思っています。
◆悪い時間帯をいかに早く切り上げるか
――ふたつ目の話は、コミュニケーションが大事になるのではと思いますが?
コミュニケーションもそうですね。あとは毎日の中でどれだけ良い準備が出来るか、それによってプレーの選択も変わってくると思いますし、そういうところだと思います。
――ギリギリ勝つ試合もあれば、ギリギリ負けてしまう試合もありました。チームの成長度合いという意味ではどうでしたか?
先ほど言った通りのことだと思います。前半40分でプランを遂行できたとしても、後半の40分や20分で自分たちの精度が疎かになったり、プランがぜんぜん遂行できなかったりすると、試合は80分間なので、逆転される試合が多くなってくると思います。
そういうところで、シーズン終盤は出来ていなかったんだと思います。良い時間帯もあれば悪い時間帯もあって、その悪い時間帯をいかに早く切り上げるか、そこが自分たちの課題です。ただ、そこはすぐに良くなると思います。
――それはなぜですか?
次の東芝戦に向けて、変わると思います。いま準備している段階ですが、僕は絶対に変わると思っています。
◆我慢してボールを繋ぐことによってスコアに繋がる
――シーズンの最初に「チームはどんどん成長していかなければいけない」と話していましたが、成長の手応えはどうですか?
成長はしていると思います。まずフェーズを重ねてトライ出来ること。これがサントリーのラグビーだという我慢強さが、後半戦に行くにつれて出来るようになってきたんじゃないかなと思います。厳しいトレーニングを積んできたので、みんなのキャパシティも広がっていますし、我慢してボールを繋ぐことによってスコアに繋がるという自信を持っているので、そういうところはシーズンを通して成長してきたと思います。
――さらにそこの精度を上げるということですね
そうですね。そこと、あとはオプションにもよると思いますが、3フェーズくらいで取り切れることもあると思います。我慢して泥臭いプレーをずっと続けていくこともサンゴリアスのラグビーだと思っているので、そういう部分は成長してきたんじゃないかなと思います。
――「見ている人がワクワクするようなゲームをしたい」とも言っていて、確かにワクワクするラグビーでしたが、ドキドキもありましたね
そうですね(笑)。見ている人は楽しかったんじゃないですか。僕らはヒーヒー言いながらやっていました(笑)。
◆ワークレートは良くなっている
――個人としての成長の手応えは?
今シーズンは自分のプレーが成長したように感じます。
――どの辺にいちばん手応えを感じていますか?
ワークレートですね。走る距離もそうですし、タックル回数、ボールキャリアー、ブレイクダウンのサポートなど、今までのシーズンではなかった数値を出しているので、そこは良くなっているんじゃないかなと思います。あと聞いた話ですが、リーグワンでのラインアウトの成功しているスロワーランキング1位だったみたいです。それも嬉しかったですね。
――ワークレートが高いということはコンディショニングが上手くいったということですか?
そうですね。怪我もしなかったので、16試合に出場できたということは、キャプテンとしてはとても大事なことだと思っていたので、良かったですね。全試合出場は初めてで、ここまではやり切れていると思います。
――相手をドミネートして倒すというタックルが課題だと言っていましたが
そこはこれからも課題だと思っています。個人のタックル練習はやっていますし、ワークレートが高くてもいちばん大事なことはひとつひとつの質だと思うので、その質については今シーズンここまでは、それほど良くなかったと思っています。
――それはタックルに限らず?
タックルだけじゃなくて、ですね。その質をこれから上げていく、プレーオフでも上げていくことが、僕にとってもチャレンジかなと思います。
――走れているけれども、それに加えて質を上げていくということですね
そうですね。質の高いプレーを続けていく、一貫性のあるプレーをしていくということが僕の課題ですね。もっと良いプレーをするための大事な要素だと思います。
◆22mの中に入ったら自分の強みが出るゾーン
――今シーズンはトライも多く取っていますね
22mの中に入ったらボールタッチを増やしていこうと思っていて、そこは自分の強みが出るゾーンだと思っていました。結果としてトライを取ることが多かったので、そこは良かったと思っています。
――それは来シーズンも続けていくテーマですか?
そうですね。ゴール前で取り切る力は自分の強みでもあると思うので、続けていきたいです。
――フォワード全体としては、まだ課題はありますか?
ありますね。やはりセットピースをどれだけ安定して、良いボールをバックスに提供できるかが、このチームのキーポイントだと思っています。セットピースはフォワードの責任なので、そこはプレーオフに向けてもっともっとレベルアップしていけると思っています。あとはフォワードでどんどん前に出るプレーが必要かなと思います。
――セットピースの中で、特にスクラムですか?
スクラムもそうですが、最近はラインアウトですかね。ここ3試合くらいはラインアウトの獲得が悪いですからね。
――ラインアウトではメンタルセットが大事だと言っていましたが、そこが重要ですか?
個人としてはスロワーなので、メンタルが重要です。フォワードとしてはドリルをどれだけ100%で出来るかだと思います。いちばん良いスローイング、いちばん良いリフト、いちばん良いジャンプ、ムーブスピードなど、そういう細かいところをどれだけ丁寧にいちばん良い状態で出来るか、がキーになると思います。
――すべてが100%で出来たら気持ち良いのでは?
そうですね。そこを目指しています。
◆キツい中でも予測する
――ゲームを予測する力、そして見えていたけれど動けなかったところが、今シーズンは動けるようになったという部分は、シーズンを通して自分のものにしましたか?
そうですね。そこはこれまでのラグビー人生の中で、いちばん伸びた部分かと思います。そこは意識していやっていたので、出来ていていると思う反面、まだまだと思うところもあります。そこももっと伸ばしていきたいとです。
――段階を一段上げて、更にレベルアップしている途中という感じですね
そうですね。レベルアップしているとは思っていないんですけれど、そういうプレーが今後は大事になってくると思っています。チームが勝つために必要なことだと思います。
――見えて動ける瞬間というのはきっと面白いでしょうね
面白いですね。試合中に本当にキツい中でも予測するので、頭を使います。なので、キツくても動けるんですよね。
――動きながら頭を使うことは、相当疲れますよね
疲れますね。ある程度は試合前に相手の分析とかコミュニケーションを取る中で、「ここに来そうだよね」とか、「ここにアタックしてきそうだな」とか、そういうことが事前に頭に入っているので、試合中のキツい中でも動けるんじゃないかなと思います。
◆黄色いジャージがグラウンド中を駆け回っている姿
――このチームのキャプテンで良かったと思うことは?
勝った時は思いますね。本当に喜んでいるチームメイト、ファンの方たちの姿を見ると、このチームのキャプテンで本当に良かったなと思います。来場者数も増えていて、リーグワンの中で、ホストゲームではいちばんお客さんが入ったと思います。
――今シーズンはなかなか試合に出られない選手も多かったと思いますが
僕が変にケアをするというよりかは、ノンメンバーの中でもチームを引っ張ってくれる選手がいるので、そういう選手とコミュニケーションを取りながらやっていました。
――いよいよセミファイナル、リーグ戦で2回負けている東芝ブレイブルーパス東京と戦いますが、意気込みは?
まず府中ダービーということで、お互いに熱も入りますし、ましてやプレーオフという最高の舞台で3度目のリベンジが出来るということに対して、とても興奮しています。絶対に盛り上がると思いますし、激しい戦いになることは分かりきっているので、楽しみです。
――特にフォワードの戦いは重要ですよね
間違いないと思います。先ほど話したセットピースのところ、ブレイクダウン、接点での戦いは避けられません。そこに東芝は強みを持っていて、そこで戦ってくると思うので、大事な局面になるんじゃないかなと思います。
――どの辺りを見ていて欲しいですか?
僕らが勝つ姿ですね。黄色いジャージがグラウンドをいちばん走っているし、全員が寝ていないで立っていて、誰かのためにみんなが走っている、黄色いジャージがグラウンド中を駆け回っている姿を見て欲しいです。
――その結果、勝つ、と言うことですね
そうですね。サントリーのラグビーは、特に今シーズンはそうなんですが、泥臭いんですよ。スター選手もいて、見た目は華やかなチームと見られると思いますが、よく見ると本当に泥臭くて、しんどいところに自分から行くタフなチョイスをするチームなんです。それがサンゴリアスのラグビーだと思います。そこを見て欲しいです。
――見出しの言葉は何が良いですか?
難しいですね(笑)。個人的なことで言うと、「質の高いプレーをやり続けたい」とか。そこを見て欲しいので、そこじゃないですかね。「100%の準備を80分間出し切る」はどうですか。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]