2024年5月10日
#903 下川 甲嗣 『1対1の勝負でひとりひとりが勝つ』
リーグ戦全試合出場の下川選手。黙々と役割をこなしながら一段とレベルアップした下川選手に、セミファイナル前の心境を聞きました。(取材日:2024年5月上旬)
◆ボクシング
――リーグ戦全試合出場で準決勝を迎えることになりましたが、リーグ戦16試合はいかがでしたか?
シーズンを通して自分の良さを出せた試合も出せなかった試合もあったんですけれど、ここまで怪我なく戦って来られたことは良かったと思います。前のシーズンもその前のシーズンも、怪我などで離脱する期間があったので、そういった点で今シーズンは、ずっとプレーが出来る状態でここまで来られたので、ここまでは良かったと思っています。
――コンディショニングに対して対策をしたんですか?
試合に出ると、どうしても疲労は蓄積していくものなので、リカバリーのところは、昨シーズンまではやっていなかった交替浴やストレッチをしたり、中日のオフの日にはボクシングなどして逆にアクティブに休息を取ったりして、身体を極端に休ませるんじゃなくて、リカバリーの中でも身体を動かすことを、昨シーズンから変えました。それが良かったかは分かりませんが、今シーズンはそれが良かったかなと思っています。
――昨シーズンよりも身体が大きくなっていますね?
そうですね。シーズン中の体重は1~2kgくらいは増えていると思います。シーズンが始まる時の体重は、昨シーズンも今シーズンもそれほど変わらなかったと思うんですけれど、もともとシーズンを重ねていくうちに、体重が減っていってしまう方です。そこを減らさないように、クラブハウスでの食事もそうですし、自分でしっかりと間食を入れたり、小まめに体重を気にするようにしました。
◆ワークレートで勝負
――昨シーズンはプレーにムラがあったと反省していましたが、今シーズンはずっと安定して良いプレーをしているのではないでしょうか?
昨シーズンよりは良いと思うんですけれど、今シーズンも自分の良さを出せている試合と出せていない試合があって、ワークレートを自分の強みにしていますが、ワークレートの数値が良くない試合があったりしていたので、いつも良かったとは言えません。
――ワークレートが良い時、良くない時はどんな時ですか?
ワークレートが良くない時はあまりボールに絡めていなくて、自分のポジショニングのところもそうだと思いますし、そういう時があまり良くない時かなと思います。
――それは予測が外れることが多いということですか?
予測もそうですし、振り返ってみたらもっとボールを要求できる時もあったかなと思う時もあったので、自分からもっとボールに絡みに行くこともそうだと思います。この前の静岡ブルーレヴズ戦でもそうでしたが、そこが良くなかったかなと思います。試合の後に分析の須藤さんとミーティングをして、他のチームの6番の選手や海外のチームの6番の選手がどういったところを狙っているかとか、動画を見ながら確認して、自分にもこういうチャンスがあるなと感じました。その次の試合からは実践して、単純にもっとボールに絡みに行こうとしました。チーム内の役割の中で、もっとボールに絡んでいけるところは行こうとしました。
――クボタスピアーズ戦はボールがあるところに極端に言えば必ずいるように感じました
自分も勝ちたかったですし、チームが勝つためにワークレートで勝負したかったですし、ボールキャリーでも一歩でも前に出たいと思ってプレーしました。そこがプレーで出せたかなと思います。
――静岡ブルーレヴズ戦を経て、だんだんと良くなって来た感じですか?
そうですね。静岡戦で学んだというか、これじゃワークレートが強みとは言えないような数値だったので、自分的にも危機感を感じました。早急に改善しなければいけないと思って、その後の試合はプレーしていました。
――ボールキャリーとブレイクダウンの集散のところでしっかりと働く、という目標に関してはどのくらい出来ていますか?
ブレイクダウンのところは、悪くないかなと思います。ボールキャリーのところはすぐに良くなるところではないのですが、シンプルに身体のフィジカルの部分もそうですし、身体を当てて一歩でも1cmでも前に出るところは、まだまだだと思っています。
◆自分が満足するレベルも上がってきている
――ボールキャリーの時の動きが鋭くなったという評判もありますが、自分ではどうですか?
今シーズンはあまり良いイメージでボールキャリーが出来ていないので、まだまだ良くなると思っています。
――表情を見ると、あまりスッキリしていないようですね
いや、個人としてもチームとしても、まだまだ出来るなと思っています。
――一方でたいぶ出来るようになってきたという喜びや嬉しさは?
出来てきたというスタンダードは、少し上がったかなと思います。それに伴い、自分が満足するレベルも上がってきていると思います。
――満足しないことが永遠に続きそうですね
これだというプレーが、一貫性を持って、再現性を持って続けられるかだと思うんですけれど、それは大事だと思っています。100%完璧に出すことは無理だと思うので、80%くらいのクオリティ高いプレーを、いかに再現性を持って出来るかが、ムラがないことに繋がると思いますし、そこですかね。良い時は良い、悪い時は悪いということが良くないと思うので、それを減らしていきたいと思っています。
◆勝って初めて嬉しい
――リーグ戦に全試合出場して、ここが楽しいという部分はありますか?
楽しいと思うことが、あまりないかもしれないですね(笑)。やっぱり楽しいと思うのは勝った時じゃないですかね。試合に勝って初めて、準備が良かったから勝てた、嬉しいと思うかもしれません。
――ギリギリ勝つ試合が続いたりギリギリ負ける試合がありましたね
前半節はギリギリ勝つ試合がありましたね。
――今シーズンは各チームが強くなっているということですか?
間違いなく相手も強くなっていると思います。
――サンゴリアスとしてはどうでしたか?
勝っている試合では、よくボールが動いていたと思いますし、全員が攻める方向だったり、セイムページという言葉がありますが、全員が同じ方向を向いてプレー出来ている時が良い時だと思います。その中でフォワードであれば、早く立ち上がって早くセットして、ダイレクトに当たるのかバックスに展開するのか、全員が早くポジショニングして攻撃の準備が出来ている時が良い時で、上手くいっていない時にはポジショニングが遅いし、相手がやりたいテンポに自分たちが入ってしまっているというか、そういう感覚があります。
――そこを改善する方法は見えていますか?
いろいろな要因があると思いますが、僕としては、セットプレーだったら、最初の3フェーズで、自分だけの判断でオフロードしたり、簡単なミスをしたり、相手にボールを渡してしまったりすることがあると思うので、より小さいコミュニケーションをどんどん増やしていくことが大事だと思います。そこが良くなれば、アタックのところは良くなるかなと思います。
◆プレーで引っ張る、言葉で引っ張る
――大学時代はバイスキャプテンをやっていましたし、そろそろ中堅の年齢になってきますが、リーダーシップについてはどう考えていますか?
自分でももう若手じゃないと思っていますし、中堅としてプレーしなければいけないという自覚はあります。リーダーシップのところも、チーム内にリーダーグループというものがありますが、リーダーだけがチームを引っ張るということではないと思うので、練習の時からそういうことを出していかなければいけないと思っています。
――プレーや態度で引っ張ることもそうですし、話したりもしますか?
話すことはあまり上手くないんですけれど、まずはプレーで引っ張るということと、次のフェーズとしては言葉で引っ張ることもやっていかなければいけないと思っています。
――言葉が少ない方が、より言葉が響くケースもありますよね
どうですかね(笑)。そうなれば良いなと思います。
◆まずフィジカルで優位に
――プレーオフ準決勝東芝ブレイブルーパス東京戦に向けての意気込みは?
やるしかないという感じです。2度負けていますし、優勝という目標はありますけれど、今の感覚としては優勝を目指すというよりも、準決勝で勝つという感覚、目の前の相手をひとつひとつ倒していくというマインドです。
当然、東芝はフィジカルが強いですし、それは分かっています。いつも府中ダービーはまずフィジカルで優位に立った方が試合のテンポを上手く持って行けますし、自分たちのテンポで出来るので、フィジカルのところでは逃げられません。そこは全員が分かっていると思います。
あからさまに突っ込んでくる選手が分かればディフェンスもしやすいと思うので、全員がオプションになって攻撃することで、1対1が作れると思います。1対2の状況ではディフェンスの方が有利になるので、特に東芝相手には、しっかりと1対1を作って、1対1の勝負ではひとりひとりが勝つということをやっていかなければいけないと思います。そこが勝敗を分けると思います。そこだけじゃないと思いますが、フォワードとしてはそこでやられている部分もあるので、次はやってやりたいですね。
――そこをファンの皆さんには見ていて欲しいですね
はい。サンゴリアスのアタックに大事なのはテンポなので、そのためにフォワードがそこを頑張るということです。そこで相手にプレッシャーをかけられて、なかなかテンポが上がらなければ、サンゴリアスの速いテンポは出せないので、フォワードとしてはそこで頑張れるかどうかです。そこでフォワードが頑張ったあと、バックスのテンポの良いアタックを見て欲しいです。
もう一回、チームがひとつになって、目の前の1勝をもぎ取りに行きたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]