2024年5月 3日
#902 宮﨑 達也 『ナイス・フォワード!』
「他の人よりも考えてプレーする」努力を続けてきたという宮﨑選手。宮﨑選手が語る「考える」そして「実行する」方法には、さまざまな体格や特徴を持つアスリートへのヒントが詰まっているのではないでしょうか。 (取材日:2024年4月下旬)
◆身長を逆に活かせている
――東芝ブレイブルーパス東京戦、初トライ、おめでとうございます
ありがとうございます。フォワードがモールを組めて、いい感じで押せていたので、僕のトライですけれどフォワードのトライという感じでした。「ナイス・フォワード!」っていう感じです。
――しばらく経ってみて、また別の感覚はありませんか?
映像で見たら、距離も5m弱ぐらいあって、出るタイミングが結構良かったなという感じでした。あと、相手があまり僕のことを気づいてなかったので、いいタイミングで出たなと思いました。
――後半20分に出てからスクラムも良かったですね?
入ってファーストプレーがスクラムだったんですけれど、そこで組んで「あ、行けるな」という感じがしたので、小林(賢太)と幹(中野)と先週から合わせていたので、「行ける」という自信もありました。1本目のスクラムで、「これはプレッシャーをかけることが出来るな」というのは、フロントローを始めフォワード全員で思えたのではないかと思います。
――タックルも良かったですね
そうですか、タックルは相手が嫌なんじゃないですかね、低すぎて(笑)。背が低いので、他の人が苦労して低くタックルへ行かなくちゃいけないところが、僕にとっては普通のことなので。そういう面では、身長を逆に活かせているかなと思います。
――外国人選手もやりにくいかもしれないですね
はい、しかも今ハイタックルに厳しいので、逆に僕がボールキャリーするにしても、海外ではこんなに小さい選手はいないと思うので、やりづらさは向こう側の方があるかなと思います。
――逆に膝蹴りが来そうな怖さはないですか?
それはもう、高校、大学から対戦相手は全員デカいので、慣れています。ぶつかることに関しては、怖さは無いです。外国人選手はボールキャリーとか意外と高いので、逆に懐に入りやすいということもあります。
――頑丈なんですか?
そうですね、大きい怪我はしたことないので、そういう意味では頑丈かもしれないです。
◆意識していたプレー、得意なプレーは出せた
――ラインアウトにはちょっと苦労していたみたいですね
そうですね、正直、僕の球も低かったですし、相手のリアクションスピードも結構速かったです。こっちの動き出しに対しての相手の動き出しがめっちゃ速かったんですが、それはリーグワンのトップチームと試合しないと出来ない経験なので、今回の試合ではダメでしたけれど、これは次に活かせるいい学びに出来るところかなと思います。
――良かったところも反省点も出てきましたが、全体的には先週の試合は良かったですか?
トータルで言ったら、そうですね。それからリーグワンの試合メンバーに入って、これまで20分もプレーすることがなかったので、自分としては巡ってきたチャンスに、自分の中では自分が意識していたプレーとか、得意なプレーとかは出せたのではないかと思います。
――パスも良かったですね
はい、結構自分の中では強みにしているところなので、そこを出すことが出来て良かったです。
――次に向けての課題は?
ラインアウトの成功率がとても悪く、自分の球が低かったことが多かったので、そこが課題です。セットプレー全体が課題であり、タックルでも相手を向こう側に倒すタックルをしていかなければと思います。
◆味方を活かすプレー
――今シーズン11戦目のリーグワン初キャップを含め3試合出ましたが、それまでの試合に出られない間はどんなことを考えていましたか?
出ることが出来ない時間が長く続いた中で、自分としては去年と違って、明らかにレベルアップしているなという今シーズンでした。「チャンスが絶対に回ってくるから、チャンスが来た時に常にベストを出せるようにしておけ」という言葉を、何人かの先輩からいただいたのが僕の中では大きく、それもあって、腐らずに頑張ることが出来ていたと思います。
――先輩から可愛がられるタイプなんですね?
まぁ、そう言っていただけることは多いです(笑)。いじられることが多いですね。
――レベルアップしたと自分で感じたのは、いつ、どこで、ですか?
フォワードって例えば「ボールキャリーが好き」とか「相手を倒すのが好き」という選手が多いので、その中で僕は「味方を活かすプレー」の方が好きですし、体格的にも味方にキャリーしてもらった方が絶対にゲイン出来るので、いかにそれをやるかと考えた時に、アオさん(青木アシスタントコーチ)とも話す中でコミュニケーションだと思い、これまでよりコミュニケーションの機会を増やしたんです。
自分の両サイド、そしてフォワードのみんなとのコミュニケーションを練習の時も増やし、リーダーシップをとって、周りのリクエストをより聞くようになったし、自分の要望も伝えるようになりました。練習以外のところでも、これまで映像を1人で見て1人でいろいろ考えていたのを、みんなと意見を交換するようになりました。
◆フォワードの中のスクラムハーフ
――1年目の昨シーズンは遠慮があったんでしょうか?
はい、高校、大学時代もそうでしたが、1最初の1年間は同じように試合に出られなかったんです。いずれも2年目にレベルアップしたと感じたのですが、それまで遠慮があったと思いますし、1年やったことによる慣れによるものだったと思います。サントリーでも同じことが言えると思います。
――普段から「考えてプレーする」ということなのですが、1年目もよく考えてデータ化して、蓄積していたのかもしれないですね
そうですね。考えてみれば、その間にデータを蓄積していたんだと思います。それがベースになって、2年目からのプレーに繋がったと思います。よく考えるのは、体格的に足りない部分を考えて補うということです。自分の良さをどうやったら出せるか、毎日考えています。
――自分の良さはどうやったら出せるのでしょうか?
コスさん(小野アシスタントコーチ)とのミーティングで、「フォワードの中のスクラムハーフになれればいい」という話があり、そういう役目を目指しています。フォワードもそういう役目の選手がいたら助かるだろうなと思いますし、小学生の頃はスクラムハーフでしたので、やれると思っています。
――パスがうまい理由は、最初スクラムハーフだったからなんですね、どんな小学生でしたか?
姉がラグビー部のマネージャーをやっていましたし、たまたま周りにもラグビーをしている人がたくさんいて、ラグビーをやるのが自然でした。やってみたら、タックルで相手を倒したり、パスしたり、相手を抜いたりというのが面白かったですね。小学生時代はスクラムハーフでしたが、中学になるとフィールドのサイズが3倍になり、ちょっとついていけないなと思っていたら、中学校のラグビーの先生からフッカーをやればいいと言われ、フッカーでも自由に動いたりパスを出したりさせてもらいました。それがなければ今の僕はないと思います。
◆この体格でもちゃんと出来る
――それにしても出られない期間が長かったけれど、よく頑張って続けてきましたね
自分なりの強みを活かして、この体格でもちゃんと出来るということを見せたかったし、またいつか見せる自信もありました。それが折れずにやってきた理由です。例えば小さな小学生たちも、僕がやっているのを見たら勇気が湧くのではないかなと思ってやっていました。
――そうやって頑張っているうちに、中堅の年齢になってきましたね
はい、中堅の年齢なので、次の世代にもアドバイスをしたり、環境を作ったりしていかないといけないと思っています。
――レベルアップを実感出来ている今、やっていてとても楽しいのでは?
はい、とても今楽しいですし、練習も試合も楽しみです。
――今シーズン、残り少ないですが目標は?
チームが優勝すること。そして2番をつけて試合に出ること。優勝する試合で、グラウンドに立っていることです。
――どんなプレーを見ていて欲しいですか?
他の人が大きいので僕がどこにいてもすぐわかると思いますが、パスとスクラムを見ていてください。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]