2024年4月26日
#901 垣永 真之介 『出し切ったら優勝できる』
だんだんと禅問答のようになっていくインタビューは、まさに垣永選手ペース。トークもプレーもマイペースを貫けるのは、11年のキャリアの成せる技でしょうか。(取材日:2024年4月下旬)
◆僕は僕の仕事をやる
――調子はどうですか?
いや、ぜんぜん。身体が重いです。今年はすごく走るラグビーなので、着いて行くのが精いっぱいです。
――では練習で走る量を増やしているんですか?
してないです。常にベストコンディションを整えて、試合に臨んでいる感じです。
――試合をやっていて楽しいところはどこですか?
試合をやっていて楽しいとかは、思わない人です。試合は苦しいですね。
――それを続けるモチベーションは?
「優勝したい」ということだけです。
――優勝への手応えはどうですか?
負けたり引き分けたりしていますが、悲観的なことはなくて、「優勝できる」と思っています。
――今シーズンはギリギリで勝ったり、負けたり、引き分けたりとありますが
本当に細かいところ、試合の締め方が悪かったり、ターニングポイントであまり良いプレーが出来なかったり、そういうところが課題だと思います。良くも悪くも、課題として捉えています。プレーオフ進出は決まったので、最後に優勝出来たら良いかなと思っています。
――その課題を乗り越えていくのは大変ですね
僕は僕の仕事をやるだけです。
◆僕の姿勢は変わらない
――2年前のインタビューで聞きましたが、みんなを巻き込もうという気持ちは、今も同じですか?
それはしっかり自分の情熱とか、ラグビーに対する姿勢で巻き込みたいと思っていますけれど、そこで周りがどう思うかだと思います。僕の姿勢は変わらないです。
――雄叫びは少し減っていますか?
別に増やそうとか減らそうとは、思っていないです(笑)。そこにはこだわっていません。
――こだわっているところはどこですか?
スクラムと、セットプレーを安定させるということです。
――スクラムは今シーズン良いのでは?
いや、昨シーズンの方が良いと思います。昨シーズンはペナルティを取った数がリーグで1位と聞いていますし、感触は昨シーズンの方が良いですけれど、昨シーズンよりもリーグとしてスクラムのレベルが上がっていると感じています。
――サンゴリアスとしては?
悪くはないと思いますけれど、もっと出来ると思っていますし、もっと勝てると思います。
――スクラムではどこが課題ですか?
そこが分かったら、苦労しないです(笑)。模索中です。
――試合をやるごとにスクラムの課題が出てくる感じですか?
毎回、相手が違うので、いろいろと課題が出て来ますし、難しいところはありますが、そこでいかにブレずに結果を出していくかということが、僕の仕事だと思っています。そこにこだわって、やっていきたいと思います。
――3番はスクラムの中心で、やはりスクラムで負けると悔しいですか?
そうですね。もちろんそれは悔しいです。
◆行ける時は行く
――静岡ブルーレヴズ戦でもジャッカルがありましたね
僕はラインブレイクとか独走トライとかは出来ないので、ペナルティを取ってゲインメーターを稼ぎたいと思っています。それが自分に出来ることであれば、どんどんやっていきたいと思います。
――ジャッカルに入る時と入らない時は明快ですか?
意外と闇雲に入っていて、最近は疲れるので、見極めるようにしています。
――見極めると良いプレーになりますか?
いや、あんまり・・・(笑)。ディフェンスは基本的には組織なので、そこにいなければいけない場所みたいなものがあって、勝手は出来ないので、出来る限り見極めるようにしています。
――いなければいけない場所にいて、ジャッカルに行くか行かないかは見極めているという感じですか?
そうですね。行ける時は行くという感じです。
――この前の試合では行ける時に行って成功、これから増やしていきたいですか?
そうですね。1試合に1本くらいは取れているイメージなので、継続的に続けていければと思っています。
◆足の速さで勝負はしていない
――11年目になりますが、肉体的にはどうですか?
キツいっす。
――だんだんキツくなってきていますか?
あまり変わらないかもしれないですね。足は遅くなったなとは思います。
――そこは素直に受け入れたんですか?
そうですね。別に足の速さで勝負はしていないので、遅くても良いと思っています。
――パワーの方はどうですか?
パワーはそんなに変わらないんじゃないですかね。良くなっているとかはないですね。
――最初から完成されていたんですか
そう言うわけでもないと思います。パワーにこだわっているわけでもないので。
――この11年間は階段を登るように成長してきた感じですか?
日本のラグビーが僕が入った時がちょうどレベルが上がり始めて、そんなに個が目立たなくなったというか、組織が重んじられるラグビーになってきたので、そこにはコミット出来ているかなと思います。その中でどれだけ自分を出せるかだと思います。
――自分を出すとは、例えばどういうところで出すんですか?
スクラムであったりジャッカルであったり、そういうところでコミットしています。
――技術的には質が上がっている感じですか?
技術というか、経験はそれなりに上がってきたと思います。こういう時にはこうするというような、引き出しはいくつかあるようになってきたと思います。
――メンタルの部分は安定していますか?
そうですね。自分のことをしっかりやるだけです。
◆特別なことはしない
――自分を信じて自分のやるべきことをやるということだと思いますが、目の前のことが上手くいかない時、その自信が揺らぐことはないですか?
揺らぐこともありますが、そんなに大きくはないですね。
――大きく揺らがない秘訣は?
良くも悪くも、いろいろなことを経験してきましたからね。
――そこにたどり着くまでにとても辛かったという話があったかと思います
そこはよく自分が頑張ったなと思います。今は如何にチームに貢献できるかというところしか見ていません。
――それで良いんだと信じる方法は何ですか?
それで良いんだと信じているわけではありません。別に自分の仕事だけをやっていればいいというわけではないですよ(笑)。
――シチュエーションごとに自分の仕事は変わっていくと思いますが、それをやり切るということですか?
特別なことはしないです。別に出来ないと思っています。
――「出来ない」と開き直った要因は?
自分の力量をわきまえています。
――昔は違ったんですよね?
昔はいろいろなことが出来ると思っていましたけれど、自分の力量を見極めることも大事なことだと思いますし、出来ないことは出来ないし、出来ることは出来るので、そういう感じですね。
――キャリアを積まないとそこは難しいところですね
本当にいろんなことがありましたし、その中で選別してきたという感じで、ココだというきっかけよりも、この10年間でだんだんと、という感じです。
◆たどり着いたという結果
――シーズン前にはワールドカップでの日本代表の活動などもありましたが、得たものはありますか?
試合には出られませんでしたけれど、ワールドカップを経験できたことは良かったと思います。あの舞台のスコッドに入れたということが、自分の中では良かったと思います。
――自分の中の経験値がアップしたということですか?
そこはあまり変わらないです。完璧な目標達成ではありませんでしたし、チームとしての目標も達成できたわけではなかったので、何かを得たわけではありませんが、あそこにたどり着いたという結果だけ残っている感じですね。
――昨シーズンの方が調子は良かった?
昨シーズンの方がとか、今シーズンの方が、とかもないですね。
――次の代表はどうですか?
監督次第じゃないですか。僕が行きたいと言って、行けるところではないので。一旦、今シーズンは身体で治さなければいけないところもあるので、またチャンスがあればと思っています。
――プレーオフ進出が決まって、ここからは何が大事ですか?
もう自分たちのやってきたことを信じて、出し切る。出し切って負けたら仕方ないですし、出し切ったら優勝できると思うので、自分たちのやってきたことを信じて優勝したいです。
――出し切るための鍵は何ですか?
自分たちのやってきたことを信じる。信じられる人間がフィールドに立てると思っています。
――その中で垣永選手はどうですか?
僕は信じています。優勝です。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]