2024年4月19日
#900 タマティ イオアネ 『日本でいちばんフィジカルの強い選手になりたい』
ニュージーランドで生まれ、オーストラリアを経由して、日本へやってきたイオアネ選手。インタビューのコメントの合間に見せる笑顔が魅力的です。(取材日:2024年4月中旬)
◆前に出ろ
――第13節三重ホンダヒート戦が怪我からの復帰戦でしたが、良い状態で戻って来れましたか?
はい、そうですね。苦戦した部分もありましたが、思っていたよりもプレー出来たので、そこは良かったと思います。プレーには満足していますし、コーチ陣からは「前に出ろ」としか言われず、とてもシンプルなゲームプランで臨んで、それだけを意識してやっていました。自分の役割がとても明確でした。
――アタックとディフェンスではどちらが良かったと思いますか?
多分キャリーの方ですね。タックルする回数よりも、キャリーの回数の方が多かったと思います。
――キャリーについては、本来の得意とするプレーが出せましたか?
基本的にフィジカルの部分が自分の強みだと思っています。
――相手が攻めてくるときに良いタックルも決めていましたね
コンタクトの練習が出来るようになってから、ずっとディフェンスコーチのヒュー(ホーガン)とディフェンスの練習をしてきたので、良い練習を積み重ねてきたからこそ、結果がついてきたのかなと思います。
――イオアネ選手の成長を我々は現在進行形で見ているということですね
そうですね!
◆日本でプレーしたいという気持ち
――ニュージーランド、オーストラリアでプレーした後、日本に来たきっかけは何ですか?
昔から日本でプレーしたい、という気持ちはありました。その理由としては、ヘンディ(ツイヘンドリック)が同じ高校、同じエリアで育っていて、同じエリアで育った人が日本で活躍していることを知って、日本でプレーしてみたかったんです。
私の兄とヘンディは高校で一緒にプレーしていてたので、実家の壁にはヘンディの写真が飾ってあります。ヘンディの写真を見たりプレーを見るたびに、昔から日本でプレーしてみたいと思っていました。
――その夢が叶ったんですね
そうですね。日本でプレー出来ることになった時には、とっても嬉しかったです。
――三重ホンダヒート戦でのプレーはツイ選手のように見えました
それはとても嬉しいです。ヘンディもとても良いパフォーマンスを発揮しているので、そう言われると嬉しいですね(笑)。
――日本に来てから、ツイ選手から何か教わったり、コミュニケーションを取ったりしているんですか?
復帰戦の前、1週間はずっとサポートしてくれました。分からないことがあればぜんぶ教えてくれました。復帰戦ということもあり、練習中からずっと一緒にプレーしていて、本当に素晴らしいサポートをしてくれました。
◆アイランダーの文化と日本の文化は似ている
――分からないところとは、具体的にどういったところですか?
唯一、日本に来て苦戦したことは、言語のところです。言語の問題で、みんなと繋がれない場面もありました。基本的にアイランダーの文化と日本の文化は似ているところがあって、相手を尊敬する、尊重するとか、先輩の言葉を大事にするとか、そういう文化は似ていて馴染みやすかったですね。
――日本の文化に触れて良かったと思うところは?
ビックリしたことや新しく感じたことよりも、本当に自分が慣れている文化にそっくりで、お互いの接し方など、自分の文化にそっくりだったので、馴染みやすかったですね。ひとつ驚いたことは、みんなが優しい、お互いに尊重して丁寧、そういうところですね。
――言葉の勉強は一生懸命取り組んでいるんですか?
はい、週1回は日本語レッスンを受けています。少しずつ学んでいます。まだ言っていることが分かる時と分からない時がありますが、自分の食事を注文できるくらいは出来ていると思います。
――長い間、日本にいたいと思っていますか?
出来るだけ長くいたいと思っています。向こうから犬を連れてきたんですが、長くいるつもりがなければ、犬は連れてきませんでした。
――なんという名前ですか?
プンバです。ライオンキングに出てくるキャラクターから取りました。
◆ずっとランニングをしていた
――プレー中からは想像がつきませんが、インタビュー中は笑顔が多いですね
いつも逆に言われます。自然な顔が怒っている顔と言われます(笑)。妻からは「もっと笑顔でいなさい」と言われます(笑)。
――今後に向けての課題は?
オフ・ザ・ボールの動きで、早くセットが出来るようにすることなど、運動量の部分です。フィットネスが上がらないと運動量も増えないと思うので、そこを伸ばし続けたいです。
――もともとフィットネスはある方ですか?
普通の人よりも、一生懸命やらないといけないと思います(笑)。
――フィットネスのトレーニングはやり続けていると思いますが、成果は出てきましたか?
怪我でラグビーが出来なかったので、ずっとランニングをしていました。それでフィットネスも上がったのかなと思います(笑)。
――ランニングは好きになりましたか?
プロになった最初の頃は大嫌いでしたが、今は耐えられます。日本のラグビーはみんなが走るので、走ることも好きにならなければいけないと思っています。
――いろいろなことに楽しんで取り組んでいると思いますが、ラグビーをやっていていちばん楽しい時はどんな時ですか?
仲間と一緒にいることです。今の環境も素晴らしいと思いますし、ラグビーをフルタイムでやる前にやっていた仕事には戻りたくないですね。
――どんな仕事をしていたんですか?
いろいろなことをやりましたが、倉庫で仕事もしましたし、サポートワーカーもやりました。
――みんなと一緒にいることが楽しいのは、寂しがり屋なんですか?
オーストラリアで妻と5回くらい引っ越しをしましたし、いつも2人だけで過ごしているので、寂しがり屋という訳でではないかもしれないですね。
◆ぬいぐるみ
――奥さんも日本に来ていますか?
はい、そうですね。妻は日本の食事も大好きですし、日本の人も大好きなので、日本で毎日、何かしらやろうとしていますね。
――奥さんは何かスポーツをやっていましたか?
いや、ラグビーのルールもすべて分かっていません。一緒にラグビーを見ていると説明をしないといけません。私がプレーをしている姿を会場で見ていると、少し怖いみたいですね。私のことをぬいぐるみだと思っているので、タックルに入られると怪我をしちゃうんじゃないかと思われています(笑)。
――日本に来る時には、ご両親からは心配されなかったですか?
日本でプレーするという目標を達成したいということを理解してくれていたので、喜んでくれていました。
――ツイ選手もいますからね
同じチームになるとは思っていませんでした。
――お兄さんは何か言っていましたか?
ヘンディよりも1歳上だったので、ヘンディと同じチームでやることを素晴らしいと言っていました。兄がラグビーから引退したのは、4年前くらいだと思います。プロにはなっていませんでしたが、スクールで教えたりしていました。家族が世界の反対側にいるので、少し寂しい時はありますが。
――ツイ選手の方が現役は長いんですね
そうですね。ヘンディと同じように長くプレーしたいと思っています。
◆日本に来て成長した
――目指している選手はいますか?
アーディ・サベア(コベルコ神戸スティーラーズ)です。ラグビーをするためのスキルを、すべて持っていると思います。
――対戦は楽しみですね
チャンスがあれば良いですね。
――どんな選手になりたいですか?
日本でいちばんフィジカルの強い選手になりたいです。タマティは日本でいちばんフィジカルが強い選手だと思われたいです。
――目標は?
優勝です。個人としては、自分が出来る限りのベストを尽くすことです。自分の役割を遂行して、決勝に出られるようにすることです。ここ3年間はいろいろとありましたが、日本に来て成長したと思うので、これからも毎年毎年成長できるように努力をしていきたいと思います。
――三重ホンダヒート戦がとても自信になったんじゃないですか?
試合後は自信になりましたが、次の日にはまたゼロからと思ってました。
――試合後にはお酒を飲みましたか?
いや、お酒を飲むのは年に2、3回程度です。優勝した時にお酒を飲みたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:樋野ジェシー興太郎)
[写真:長尾亜紀]