2024年2月16日
#891 サム ケイン 『ターンオーバーして反対側までボールを運ぶ』
期待通りの活躍を見せてくれているケイン選手。初めての海外である日本でのラグビーについて、終始穏やかな優しい口調で語ってくれました。(取材日:2024年2月上旬)
◆日本人らしくやっていきたい
――インタビュー直前が日本語のレッスンの時間でしたが、日本語は上手くなりましたか?
難しいですけれど、少しずつ出来るようになってきました。日本語を勉強するのは楽しいですね。
――来日すぐの記者会見から日本語を話そうと心掛けているように見えましたが
日本に来た時に出来る限り日本の文化に触れて、食事など全て日本人らしくやっていきたいと意識していましたし、日本語を少しでも話すことによって、日本人選手は笑ってくれますし、サポートしてくれるところがあります。みんなが英語を少しわかってくれるのでやりやすいのですが、出来る限り日本語を話すようにしています。
――だんだんと日本人らしくなってきた感じはありますか?
日本人らしくはなれていませんが(笑)、最初は文化に慣れたりすることに少し時間がかかりました。みんなと仲良くするとか、日本語を理解するとか、その辺は来日当初にはまだぜんぜんなかったので、時間がかかりましたけれど、1ヶ月くらい経つと日本語のラグビー用語も理解できるようになりましたし、今はとても心地よく皆とプレーが出来るようになりました。
◆いろいろな流れに慣れていくこと
――リーグ戦では最初からフィットしていたように見えましたがどうでしたか?
最初の3週間は、苦戦していたところもありました。ニュージーランドで10年間、同じチームでプレーしていて、そこからいきなり新しい文化の中に入り、新しいチーム、新しいチームメイト、新しいコールなど、いろいろと考えなければいけなかったので、苦戦していました。後半の3週間は、心地よくプレーが出来ていたと思います。
最初から全体の部分は理解していたところもありましたが、チームメイトの強みや弱みを理解するだけで自分のプレーも変わってくると思いますし、プレー中に細かいところを考えているとリアクションが遅れてしまいます。今は自然と「この選手はこうだから」と動けるようになったと思います。
――今はすべて上手くいきそうな感じですか?
今はとても上手くいっているように感じます。ホストゲームやビジターゲームでの移動の慣れとか、いろいろな流れに慣れていくことで、ぜんぜん違います。
◆必要だと思うところに常にいるように
――サンゴリアスでは2トライしていますが、アタックについても上手くいっていますか?
今シーズンの2トライは、本当に運が良い場所に立っていたという感じで、みんなが努力してくれて、最後の最後にボールを回ってきたという感じです。自分の強みとしては、やはりディフェンスのところですが、アタックも自分の強みにしていきたいと取り組んできましたし、サンゴリアスはアタッキングチームなので、上手くアタックも自分の強みにしていければ良いかなと思っています。
――ディフェンスではさらに目立っていますが、どういうところに気をつけてプレーしているんですか?
シナリオによって全く変わると思うんですが、チームメイトが必要だと思うところに常にいるように考えています。地面に倒れているのであれば、出来る限り早めに立ってチームをサポートしたり、ボールキャリアーが前にいたら、出来る限り目の前に立つようにするとか、チームが必要だと思うところに立つようにしています。
――今の自分自身の課題は何ですか?
今は自分の身体の状態をいちばん良い状態にすることが、いちばんの課題だと思っています。自分の身体がいちばん良い状態になれば、もっとブレイクダウンなどにもプレッシャーをかけられると思いますし、まずは自分の身体の状態を完璧にしていくことだと思います。
――今は良い状態ですか?
何週間か休めたので、より良い状態になったと思います。出来る限り早く、またみんなとグラウンドに立つことを楽しみにしています。
――東京サンゴリアスというチームに入ってどうですか?第5節、第6節は最後のプレーでの逆転勝利が続きました
本当にチームを愛しているので、組織的にも人間的にもみんな素晴らしいと思います。とても良いチームだと思います。試合に関しては、その2試合は良いスタートが切れていなかったので、そこは課題でもありますし、スタートのところとディフェンスのところを良くしていこうと、チームで話しています。
◆タフで行こうという思い
――キャプテン経験者が多い東京サンゴリアスの中に、ニュージーランド代表のキャプテンが加わってみてどうですか?
ホリ(堀越康介)が素晴らしい、チームのまとめ方などが素晴らしいと思っています。日本に来た最初の頃にホリと、どういうサポートが出来るか、どういうことを求めているのかなどをお互いに話しました。本当にホリは良いキャプテンで、良い仕事をしていると思います。オフ・ザ・フィールドの時にはみんなをケアしていますし、フィールド内では非常にタフで、みんなよりもタフで行こうという思いがあるから、みんなもついて行くんだと思います。
――キャプテンとして出場したワールドカップフランス大会はどうでしたか?
ワールドカップの話というと、みんなは決勝のことになるのだと思いますが、準々決勝でアイルランドに勝てて、あの試合は厳しい試合でしたし、その次にアルゼンチンにも勝って、いま見直すとチームとしても成長したと思いますし、それに対してプライドを持てる結果だったと思います。ほんのあと少しで優勝できたということを考えると、辛いですね。ワールドカップを通して考えると、チームとして良い成長が出来たのかなと思います。
――決勝後には「一生忘れない」というコメントがありましたが、やはり今でも思い出しますか?
今でもぜんぜん忘れられないですし、ワールドカップという大会にはみんなが時間をかけて、優勝するためにすべてを捧げているので、ダメージは大きいですね。時間が経てば少しずつ忘れられると思いますが、今はまだ忘れられないですね。
◆良い一日を
――今シーズンの目標をお願いします
目標としては優勝すること。その優勝に向けてチームに貢献したいと思うので、出来る限りやれることをやって、日々成長できるようにしていきたいと思います。
――ラグビーをやっていて、どういう時が楽しいですか?
個人的にいちばん楽しい時は、マルチフェーズをずっとディフェンスして、そこからボールを取り返して、フィールドの反対側までボールを運んでトライした時ですね。相手の攻撃をチームとして止めて、みんなの役割を果たしてボールを取り返して、自分じゃなくても誰でも良いからターンオーバーして、チームとして反対側までボールを運ぶということが、いちばん気持ちが良いです。
――その経験は何回もやっていますか?
そういう時もあります。サンゴリアスとしてもずっとディフェンスしてボールを取り返すシーンはあるので、そういうところはサンゴリアスも強みにしている部分でもあると思います。
――せっかく日本語を勉強しているので、最後にいちばん好きな日本語を言ってみてください
オーケー(笑)。いちばん好きなのは、「良い一日を」(日本語で)。他にも大事な日本語はぜんぶメモに入れています。(メモを見ながら日本語で)今日学んだのは、「日本語が分かりません」「英語が分かりますか?」「赤ワイン」「水」「冷たいビール」「美味しい」(笑)「トイレはどこ?」「そこ」「初めまして」......。
――ありがとうございます
「いいえ、どう致しまして」(日本語で)。
(インタビュー&構成:針谷和昌/通訳:樋野ジェシー興太郎)
[写真:長尾亜紀]