SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2023年12月29日

#884 山本 凱 『インパクトあるプレーを試合で出し続ける』

タックルの力強さと的確さでスタンドを沸かす山本選手。インタビューは長い距離を走って決めた社会人初トライの話から始まりました。(取材日:2023年12月下旬)

Yamamoto_01.jpg

◆近い距離の一瞬のスピード

――三重ホンダヒート戦のトライでは足の速さを見せましたね

まあまあという感じで、そんなに足は速くないです(笑)。体重の増加につれて足は遅くなっています。

――瞬間的に出すスピードが速いですね

近い距離の一瞬のスピードは、そんなに遅くはないかなと思いますけれど、長い距離はそんなに走らないですね。ホンダ戦では良い感じにボールをもらえて、たまたま出来ました。走り切れたので良かったです。

――ラインブレイクやタックルでもスピードを見せてくれましたが、スピードが強みですね

そうですね。クワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ)はアタックでも素晴らしくて、そういうイメージでアタックでも活かしていきたいなと思っています。

――パワーをつけつつスピードを上げていくようなトレーニングをやっているんですか?

はい、パワーをつけつつスピードが遅くならないように、小さいなりにやっていきたいですね。

Yamamoto_02.jpg

◆ガツガツとプレー

――高校1年生の時の監督がバックスからのポジションチェンジを勧めたわけですが、山本選手のことをよく見ていたんですね

そうですね。監督の良いアドバイスだったと思います。球技的センスがあるわけじゃないので、バックスよりフォワードが合っていると思います。ボールコントロールやハンドリング、アタックでの綺麗なパスとか連携、そういうプレーよりもガツガツとプレーしていた方が活躍できるかなと思います。

――ポジションチェンジを言われた時はどう感じましたか?

最初は「えー」という感じだったと思います。ずっとバックスでフォワードは初めてだったので。高校1年と3年では全然体格が違って、頑張って体重を25kgくらい増やしました。自分に合っていると思いましたが、周りと体格がぜんぜん違うので、体重をつけないと活躍できないと思って体重を増やしました。

――バックス時代はどうだったんですか?

中学の時には都選抜に選ばれて全国ジュニアに出場したこともありました。

――よくバックスに見切りをつけましたね

そうですね。当時は、何も思っていなかったと思います(笑)。

Yamamoto_03.jpg

◆行けるかなーっ

――無心になると良いとのことですが、無心になるとはどういう心境ですか?

やる気持ちですね。たくさんタックルに行く意欲だったり、ボールキャリーしたいという意欲だったり、そういう意欲を出したらそれに応じたポジションに立てるので、良いサイクルでラグビーが出来るかなと思います。

――性格的には、普段はあまり攻撃的ではないんですか?

そうですね。攻撃的な性格ではないと思います。仲の良い人とはいいですが、基本的には人見知りです。

――瞬間的な速さを活かして、タックルはギリギリまで待つんですか?

場面によってですね。出られる時は結構前に出たいタイプなので、前に出てタックルします。前に出ると、その分タックルミスのリスクとか、周りとのコネクションが悪くなったりするんですが、それが起きない範囲で行くという感じです。

――その感覚はどうやって掴むんですか?

まあ、行けるかなーって(笑)。

――自分のやり方を人に教えようと思ったらどう言いますか?

そんなに教えるが得意じゃないです(笑)。たまに母校に教えに行ったりするんですが、普段練習でやっているようなことしか教えられないです。タックルは本当に行けそうな時や、相手の幅、ボールのスピード、ゲインされている状況、いろいろなシチュエーションがあると思いますが、そこで行けそうだと思ったら前に出ちゃいますね。

――タックルに行く前にはいろいろなところを見ているんですか?

そうかもしれないですね。ただ、視野は狭めだと思います(笑)。

Yamamoto_04.jpg

◆楽しい、向上したいという気持ち

――視野が狭めということは集中力に優れている?

集中力はあると思います。遊びでも好きになるとめちゃくちゃ出来ますね。

――集中する秘訣は何ですか?

楽しいのと、向上したいという気持ちですかね。

――逆に集中できない時はどんな時ですか?

集中できない日もありますけれど、なぜかは分からないですね。試合では気持ちを持って行けるようにやっています。

――80分間、集中力を保つためには?

80分間集中するのは頑張らないといけないので、スイッチを入れる時は入れて、入れない時は入れないという時がありますね。80分間、ずっと糸を張っているとしんどいので、上手くメリハリをつけています。

――行ける時には行く感覚?

そうですね。あとはハーフが誰にパスしそうという予測ですね。

――そのために相手の映像をよく見たりしますか?

試合の週とかは、相手のアタックをよく見たりしますね。ラインアウトからどういうアタックしてくるのかなとか見るようにしています。

Yamamoto_05.jpg

◆タックルの本数を増やしてインパクトを

――試合によっては、なかなかタックルが上手くいかないという日もありますか?

あります。それは集中かどうか分からないですけれど、しょうがないなと思っています(笑)。行ける時もあれば行けない時もあるかとか思いますし、けれどダメだったら「あー」って思ったりします。そういう時はどんどん行くようにして、タックルの本数を増やして、その中でよりインパクトを出せるようにしていきます。

――上手くいくときはどんな感じですか?

よりポジティブにどんどん行こうと思えるようになります。

――昨シーズンと比べて、タックルに行く回数やボールに絡む数は増えていますか?

そんなに変わっていないと思います。

――今シーズンはどこが良くなりましたか?

まだ3試合しかやっていないので分からないですけれど、タックルだけじゃなくアタックやブレイクダウンの部分も伸ばして、いろいろなことが出来ることを見せていきたいと思っています。ホンダ戦は結構走ったので、良いキャリーが出来る場面を、相手が上位チームでも出せたら良いなと思っています。

Yamamoto_06.jpg

◆爪痕を残そう

――課題は何ですか?

この前、エディーさん(ジョーンズ/ディレクター・オブ・ラグビー)に「アタックでもっとクワッガ・スミスみたいに、ディフェンダーにタックルしたくないと思わせるくらい動いて、手なども使って激しくドライブして」と言われました。もっとそういうところをやっていきたいと思っています。

――そこはこれまであまり意識していなかったところですか?

そうですね。自分の中ではアタックも出来るつもりでいるんですが、どちらかと言うとタックルでアピールすることに重きを置いてプレーしているので、タックルで目立つ部分は継続して、アタックでも活躍できたらと思っています。

――今年の5月にはバーバリアンズとして試合をしましたが、この経験はどうでしたか?

本当にめっちゃいい経験というか、めっちゃ楽しくて、試合もそうなんですけれどロンドンに着いて、周りは知っているような人ばかりで、すげーという感じでした(笑)。

――プレーで自信を深めたところは?

爪痕を残そうと思って、タックルやジャッカルで良いプレーが出来たのは良かったですね。

――それが今シーズンに良い影響を及ぼしていますか?

どうですかね。それが本当に楽しすぎて、英語の勉強を始めました。ゆっくり上達中という感じです(笑)。チームにも外国人選手がいるので、もっと話したいと思います。

――コルビ選手は大きくないのにあれだけ出来るというお手本ですね?

コルビはやっぱり武器があって、それで勝負できると、あれだけ世界で活躍できるんだなと思います。話していろいろ教わっているのは、同じフォワードのサム・ケインからです。たくさん教えてくれて、ジャッカルの練習を一緒に出来るので、とっても良いですね。いつも優しくてフランクな感じです。

Yamamoto_07.jpg

◆パフォーマンスを残し続けていきたい

――日本代表に向けては?

監督が変わって、2027年に向かって変革というか、いろいろと変わる時期だと思うので、そこについて行けるように、最初呼ばれるように、まずはサントリーでパフォーマンスを残し続けていきたいと思います。

――今年のワールドカップはどういう風に見ていましたか?

メンバー選考にはぜんぜんかすりもしなかったので、フラットな感じで日本を応援していましたし、好きなチームの試合はちゃんと見ていました。

――どのチームを見ていたんですか?

強豪国が好きで、南アフリカはみんなヤバくて、ディフェンスを見ていて楽しかったですね。南アフリカ対アイルランドを見ていて、南アフリカのディフェンスがヤバいなと思っていたんですが、そこでアイルランドが勝ったので、アイルランドはすげーって思っていました。

――日本代表への手応えは?

もちろん選ばれてやろうという意欲はあります。

Yamamoto_08.jpg

◆もっとインパクトのあるタックルを

――今シーズンのサンゴリアスはどうですか?

開幕戦のクボタには良い試合が出来て、次の東芝、ホンダとあまり良くなくて、まだ波があると思います。

――その中で、自分自身の出来はどうですか?

もっとインパクトのあるタックルをして、インパクト残せるようなプレーが出来ればと思っています。インパクトあるプレーを試合の中で出し続ける。

――その中で大事にしていることは何ですか?

やっぱり意欲です(笑)。

――普通にしていると意欲が湧かないんですか?

いや、そんなことはなくて。試合の中で消極的になったり、油断しそうになったりするので、どんどんボールを触ったりタックルに行けるような気持ちを持って取り組んでいます。

――消極的になっている時には、人間って怠惰だなと思いますか?

そうですね。基本的には怠惰ですよね。

――怠惰になりそうなところで火をつけているわけですね

そうですかね。ラグビー中はそこまで怠惰にはならないですけれど、上手くいかなかったり迷った時に良い選択が出来るようにと思っています。

Yamamoto_09.jpg

◆これが好きでやっていくという思い

――怪我はあまりしないですよね

もともとそんなに怪我をしないですね。そんなに無理はしないですね。

――無理はせず、無心でやった方が良い?

大学4年生の時にはチームのことを考えたり、いろいろとこういうプレーがしたいとかあったんですけれど、自分の強みである思い切りのあるプレーが減ったりしてしまいました。そういうプレーは無心でやるというか、さっき言ったようなメンタルでやった方が出せるので、そういう時に気づきました。

――思い切りあるプレーをする上で、失敗はつきものという考えですか?

失敗しちゃったら「あー失敗しちゃったなー」って感じです。そこでめげないように頑張っています(笑)。失敗したことを考えちゃいますけれど、次の良いプレーでそれを払しょく出来るように頑張っています。失敗に打ち勝つには、自分の情熱を持って、これが好きでやっていくという思いが大事だと思います。

あとは普通に良いプレーをしたい、これで良いプレーをする、という思いですね。良いプレーをするためには、「ここでタックルに行くぞ」、「タックルに行ってアピールして目立つぞ」という気持ちです。

Yamamoto_10.jpg

――今シーズンの目標は?

もちろんチームとしては優勝なんですけれど、どのチームも強いので、そういう中で1試合1試合チームとして勝っていくこと。個人としては、7番でずっと出続けてプレータイムを確保して、ずっと同じ良いパフォーマンスを出して、毎試合良いインパクトを残せるようにプレーしたいと思います。

――次のトライは?

トライは出来る時に出来たら嬉しいなくらいで(笑)。

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ