2023年12月15日
#882 髙本 幹也 『ラグビーをしている自分が楽しい』
リーグワンのデビューを、10番開幕戦先発&フル出場で果たした髙本選手。インタビューでも笑顔が絶えない期待の新人が目指すラグビーは?(取材日:2023年12月中旬)
◆良いコントロールが出来た
――開幕戦のキックオフ、相手が太陽で眩しい位置を狙っていましたか?
狙ったというより、いつも通りの場所に蹴りました。ちょうど太陽で眩しかったんじゃないかと思います。
――それも含めて最初からゲームをコントロール出来ていたように見えましたが、自分としてはどうでしたか?
そうですね。前半は良かったと思います。後半、僕自身のコントロールがあまり良くない場面もありましたが、大崩れすることはなく、80分間通してみると、良いコントロールが出来たかなと思います。
――かなりシミュレーションして試合に臨んだんですか?
もちろんイメージしましたし、チームとして1週間、個人としても1週間で良い準備が出来たので、その結果が出たと思います。
――デビュー戦でしたが緊張は?
試合前はめちゃくちゃ緊張して、けれど楽しみもありました。試合前のアップの時は緊張していましたが、入場したら緊張感はあまり感じませんでした。
――いつもそうですか?
いつもそうですね。「今は緊張しているけれど、試合中は大丈夫」ということが自分自身で分かっているので、「いつも通りだな」と思っていました。
――緊張している時は、何に対して緊張しているんですか?
試合が始まってしまったら練習でやってきたことをやるだけなんですけれど、試合前は何も始まっていないので、こういうことが起きたらどうしようという不安とか、準備していないことが起きたらどうしようとか考えてしまって、緊張します。
◆相手をどう崩すのかも楽しい
――"楽しみ"というのは、どんな場面で楽しんでいるんですか?
何をやっているにしてもラグビーをやっている時が、勝っていても負けていても楽しいなと思います。もう、ラグビーをしている自分が楽しいですね。
――ラグビーのどこが合っていると思いますか?
ラグビーとサッカーしかしたことないんですが、チームスポーツが好きですね。勝った後にみんなで喜べることがチームスポーツの良さだと思っています。あと、ラグビー中にボールを持って何かをすることもとても楽しいですし、相手をどう崩すのかも楽しいですし、いろいろな楽しみがあります。
――サッカーよりもラグビーの方がいろいろ出来る?
そうですね。ラグビーがメインだったので、サッカーはあまり本気でやっていなかったんですが、ラグビーの方が毎年ルールが変わったり、流行りが変わったりするので、それに対応したり、自分の楽しい部分を伸ばしたりするのが面白いですね。
――対応はすぐに出来るんですか?
対応することは得意な方だと思います。試合中にこうしようとなっても、すぐに対応できる方だと思います。
――練習も楽しいですか?
練習も楽しいですし、ラグビーのことを考えている時も楽しいです。
◆上から見る
――ゲーム感覚なんでしょうか?
そっちの方が近いんですかね。ポジションが10番なので、ドローンの映像で上から見たりすることも楽しいですし、それをグラウンドで実際に出来た時も楽しいです。
――上から全体を俯瞰で見ているんですか?
練習中、試合中は上から見るようにしています。プレッシャーの有る無しで変わってくるんですけれど、見える時と見えない時があります。自分に余裕がある時は、グラウンド全体が見えるような気がします。
――グラウンドにいる30人が見えている感じですか?
30人まではいかないかもしれませんが、空いているスペースと味方の位置を見ながらですね。
――大学時代の方がより見えていましたか?
そうですね。相手のサイズもそうですし、俯瞰出来るスペースもそうなんですけれど、それに対して判断することが、今よりは簡単に出来たかなと思います。
――リーグワンでも慣れていけば、より見えるようになりそうですね
そうなると良いですね。そうなるための努力はしたいと思います。
◆相手の脅威になる
――改めて振り返って、開幕戦では何が良かったですか?
プレースキックはずっと僕の課題だったので、前半の5本すべてを入れられたのが良かったと思います。後半は3本中1本の成功だったので、点差が離れても集中して蹴らなければいけないと思いました。
――後半のキック以外に課題は?
やっぱりゲームコントロールのところですかね。良かった部分もあったんですけれど、要所要所で僕自身、納得いかないコントロールをしてしまったところがあって、相手にチャンスを与えるきっかけになってしまいました。80分間、シンプルにいちばん正しいゲームコントロールが出来れば良いと思います。
――シンプルに出来なかったということですか?
ちょっと考えすぎてしまって、味方に伝えるのが遅くなってしまったり、迷ったりすることが試合中に少しありました。
――今後、更に良くしていきたい部分はどこですか?
やっぱりチームを活かす、引っ張るのもそうなんですが、自分が相手の脅威になることが相手にとっていちばん嫌だと思うので、自分でボールを持ってキャリーしたり、空いているスペースをどんどん突いて行くプレーを、もっと良くしていきたいと思っています。
――一度、突き飛ばされましたね
今まで僕がコンタクトした中で、いちばん強いんじゃないかなと感じましたね。ビックリしました。次に同じような場面があれば、勝つまではいかないと思いますけれど、タックルで倒せたら良いと思います。
◆可能性を感じる、チャンスがある
――サンゴリアスの10番はシーズン前から注目されていましたが、それについてはどう感じていましたか?
「絶対に10番で出る」という気持ちがありました。それの基は、練習量と自信の両方だと思います。サンゴリアスに入ったからには絶対に10番として試合に出たいという気持ちがあって、リザーブでは満足しないという性格なんですが、それは僕だけじゃなく全員が持っている部分なんじゃないかなと思います。
――ホームページのパーソナルデータに、同じポジションでライバルでもあり先輩でもある森谷選手が"注目の選手"と書いていますね
僕が持っていない判断をするので、見ていても一緒にプレーしていても、面白いと感じます。
――どう判断しているか聞いたりしているんですか?
聞いたりもします。森谷さんなりにしっかり考えがあってやっているので、そういう考え方を聞くことも楽しいですし、それが自分の中で良いと思えば取り入れたりもします。
――チェスリン・コルビ選手、サム・ケイン選手からも吸収していますか?
そうですね。コルビは基本的なプレーがめちゃくちゃ丁寧なので、そこは本当に素晴らしいですし、ハイボールキャッチも素晴らしいですね。身長は僕とあまり変わらないのに、素晴らしいパフォーマンスをするので、可能性を感じるじゃないですけれど、チャンスがあることを感じさせてくれます。
サム・ケインはリーダーシップですね。普段の練習中からリーダーシップを取ってくれるので、そこは10番として似たようなところがあるので、とても勉強になります。
――練習から他の選手たちともかなりやり取りしていますか?
2番の選手やロックの選手、9番、12番、15番の選手とは、コミュニケーションをよく取っています。
◆大きく、強く、速く
――4年後にワールドカップに向けて、日本代表についてはどう考えていますか?
もちろん目指しています。今のままでは足りない部分が多いので、そこは4年間でしっかりと積み重ねて、4年後には良い姿でグラウンドに立てれば良いと思っています。
――身体を大きくしようと考えていますか?
そうですね。身体も大きく、強く、速くしないといけないんですけれど、そこはいま取り組んでいる部分でもあるので、4年間と言わず、この先ずっと取り組んでいきたいところですね。
――他に足りない部分や加えたい部分はありますか?
スピードですかね。パワーもそうなんですけれど、大学と比べるとスピード感がぜんぜん違うので、僕自身のスピードも上げないと追いついていけないと思っています。
――そのトレーニングにも取り組んでいるんですか?
取り組んでいます。毎日少しずつ積み重ねている感じです。
――それもラグビーのひとつとして楽しんでいるんですか?
それはボチボチですね(笑)。やっぱりボールを持っている時が楽しいので、ボールを持っていないと(笑)。
――キックも課題と言っていましたが、手でのコントロールに長けているんですね
そうですね。手でコントロールすることが好きですね。
◆嬉しいし楽しい
――目指している10番はいますか?
ダン・カーター選手、リッチー・モウンガ選手ですね。ダン・カーター選手のようになれれば良いなと思っていますが、身長や体重を考えると、モウンガ選手のようなプレーヤーを目指した方が良いのかなと思ったりします。
――次戦がリッチー・モウンガ選手がいる東芝ブレイブルーパス東京との試合ですね。
クボタのバーナード・フォーリー選手もそうですが、中学の時からテレビで見ていた選手なので、試合中に嬉しいというか、今週にモウンガ選手と試合が出来るのが嬉しいですね。そういう選手と試合が出来るということが、嬉しいですしやっぱり楽しいですね。
府中ダービーということもありますけれど、僕にとっては初めての府中ダービーです。プレシーズンマッチでは一度戦いましたが、公式戦ではメンバーが変わっていると思いますし、チーム全体で戦っていく。そのために僕がゲームコントロールして、良いゲーム運びが出来たら良いなと思います。
やっぱり相手の10番は素晴らしい選手なので、そこに対してしっかりとプレッシャーをかけていきたいですし、勝って僕のゲームメイクが良かったと言われるようにしたいと思います。
――味の素スタジアムとなり、より大きなスタジアムとなりますね
やっぱり接戦で勝つ方が喜びは増しますし、スタジアムが大きくてお客さんがたくさん入る方が、勝った時の喜びがぜんぜん違うので、いっぱいお客さんに来てもらって勝ちたいと思います。
――今シーズンの目標は?
個人としては全試合先発&フル出場が出来るように頑張りたいですし、チームとしてしっかりと優勝したいです。そのために、僕自身がチームの優勝に貢献できるようなプレーヤーになれたら良いなと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]