2023年12月 8日
#880 堀越 康介 歴代キャプテンが語るサンゴリアス史 20代目キャプテン①堀越康介『誰よりも激しく』
特別編"HISTORY OF SUNGOLIATH" 20代目キャプテン ①堀越康介
昨シーズン2人キャプテンとしてチームをリードした堀越選手と齋藤選手。サンゴリアス初の2人キャプテン体制を、2人はどのように行って何を得たのでしょうか?堀越選手に聞きました。(取材日:2023年11月)
◆共に同じ絵を見る
――2022-23シーズン4位という成績は、キャプテンとしてどう感じていますか?
やはりサンゴリアスは全員で優勝を目指していて、チャンピオンになるためにグラウンド内外でやってきたので、それが達成できなかったことが残念ですし、キャプテンとしての責任も感じています。
――責任を一番感じるところは?
その時、その時では自分のベストを出していましたが、いちばんは優勝にチームを持って行けなかったところです。
――チームを持って行くには、スタッフとのやりとりも重要だと思いますが、そこは上手くいっていましたか?
上手く行っていたと思います。キャプテンになったということもあると思いますが、サンゴリアスに入ってからいちばん密にスタッフと連携が取れていましたし、選手と監督の繋ぎ役がキャプテンでもあると思うので、そのギャップを無くすことは自分なりに出来ていたと思います。スタッフ、選手共に同じ絵を見ることが出来ていたんじゃないかなと思っています。
――選手、スタッフの両方に気を遣いましたか?
気は遣っていないですよ。選手から「プレシーズンではこうやっていたけど、シーズンに入ったらなんでこうなるの?」みたいな意見が出てくるわけですよ。スタッフもそれを分かっていましたし、昨シーズンは例えば雨の試合がとても多くて、プレシーズンにやろうとしていたプレーが、現実的ではないところがありました。なので、出来るだけキックを使っていこうとか、プレシーズンでずっとやってきたこととは違うことをやったことに対して、選手から「何で?」となった時に、僕から言ったり、コーチから言ってもらったりしたので、潤滑油としての役割は出来ていたんじゃないかなと思います。
◆いちばんのリーダーシップはパフォーマンス
――自分自身のプレーについてはどうでしたか?
満足はしていないです。僕の中で「いちばんのリーダーシップはパフォーマンス」だと思っているので、リーダーがパフォーマンスを抜群に発揮する、チームの中でいちばん発揮することが、大事だと思っています。それを考えると、怪我をしてしまいましたし、例えば埼玉ワイルドナイツ戦の大事なゴール前でのスローイングを1本ミスしてしまいました。そういうことがとても頭に残っていますし、そういうところを自分の中で反省しています。
――怪我明けからはずっと試合に出ていて、1試合で3トライした試合もありました。プレー自体は良くなっていたと思いますか?
キャプテンになる前だったら「良いパフォーマンスが出せたな」と思ったと思いますが、昨シーズンに関しては、自分なりに良かったと感じた試合が無かったですね。自分がそれなりのパフォーマンスを出せても、チームの結果が出なければ、そう思ってしまうんだと思います。
――個人的にいちばん成長した部分はどこですか?
全体的にミスが無くなったと思います。チームがどういうラグビーをして、どこでトライを取りたいか、そういうことをより自分で考えるようになってきて、例えば、それを僕が分かっていないと「これが出来ていないから、これをしよう」ということが言えないと思ったんです。チームがどういうラグビーを目指していて、プレースタイルは何なのかを頭に入れることで、「ここで下手なプレーをしない方がいい」とか、「このブレイクダウンが大事だ」ということが分かったんだと思います。だから精度は上がったと思います。
――その中で、プレーでの課題と思った部分は?
インパクトだと思います。スタートから出るとなったら、絶対に精度が大事になりますが、それにプラスした部分、例えばビッグゲインをするとか、タックルでドミネートタックルをするとか、インパクトの部分が少なかったのかなと思います。
――全体を見ることが出来た一方で、無理しなくなった部分もあるんですね
自分でもそういうふうに結びつけています。「ここで一発行かないと」というところで行けないことがありました。そんな簡単に思って出来ることではありませんが、そういうプレーを今シーズンはやっていきたいと思っています。
◆僕の良さ
――怪我についてはどうですか?
怪我をすることが、いちばん良くないと思います。選手としてもそうですが、リーダーがグラウンドにいないというのは良くないと思います。メンタル的にも大変でした。
――シーズンを通して怪我無く出るためにイメージしていることはありますか?
自分のことをしっかりとコントロールすることですかね。自分の感覚的に、どうしてもやり過ぎてしまうところがあるので、そこをコントロールしてストップをかけたりしなければいけないと思います。
――それは例えば、練習をやり過ぎてしまうのか、あるシーンでやり過ぎてしまうのか、どちらの場合が多いんですか?
両方だと思います。足が張っているのにやってしまったり、こんなにスピードを出さなくても良い場面で出し過ぎてしまったり、そういう部分はこれからコントロール出来ると思います。
――そこはクレバーになるということですか?
そうだと思います。僕としては練習でコントロールすることは好きじゃなくて、練習でやったことしか試合には出ないと思っていますし、練習では誰よりも激しくやりたいですし、そういうところでやってきたので、コントロールすることが難しいですね。周りからはコントロールすれば良いと言われるんですけど、自分としてはこれでいいのかなと。
――自分らしさと紙一重ですね
そうなんですよ。僕の良さってそこだと思うんですよ。誰よりも行くというか、スイッチを入れる人だと思っているので、そこでコントロールしてしまうのが果たして良いのかと。
――グラウンドにいなくても自分のリーダーシップが届くようなやり方はあるんでしょうか
無いとは言えませんが、それは僕のリーダーシップじゃないですね。そういうリーダーシップを取れる人もいると思いますが、僕はグラウンドにいないとリーダーシップを発揮できないと思っています。
――永遠の課題ですね
いちばんは、もっと鍛えて怪我をしない身体作りと、栄養面などの部分も改善の余地があると思っています。
◆2人とも全体を見ていた
――キャプテンが2人というのはどうでしたか?
やりにくさは無いだろうと思っていましたが、いざ終わってみると、気を遣う部分はあったかなと思います。直人(齋藤)の方が気を遣っていたと思います。めちゃくちゃ気を遣われている感じはなかったですけれど、少し感じる場面もあったので、やりにくさは少しありましたね。
――こうすれば良かったというところはありますか?
例えば、ハドルの中でどちらが喋るかということをアイコンタクトしていたんですが、それをみんなに見られているような時があったので、良くなかったかなと思います。そういう時は、僕が喋れば良かったなと思いましたね。
――その他の役割は決まっていましたか?
例えばプレスの前で喋ることは、僕がスタートの時は、基本的に僕がすべてやっていました。直人は1週間を通してリーダーシップを発揮してくれていましたし、バックスがどうなっているか、そして細かい部分をこだわっていってくれるので、そういう部分でリーダーシップを発揮してくれていました。
――堀越選手がフォワードで、齋藤選手がバックスという分け方ではなかったんですね?
そういう分け方ではなく、2人とも全体を見ていました。
◆小さい子が憧れる存在
――キャプテンをやって良かった点は何ですか?
まだないですね。
――サンゴリアスに入った時から「キャプテンをやりたい」と言っていましたが、やりたいと言っていた時と実際になった時では違いましたか?
僕がサンゴリアスに入った時に言っていたのは、「キャプテンになって優勝したい」ということだったと思うんですが、キャプテンにはなりましたが優勝は出来ませんでした。個人的には何も成し遂げられていないので、キャプテンをやって良かったことは無いということですね。
――キャプテンになって辛かったことは?
チームが負けた時のショック。みんなに対して申し訳ないとか、メンバーに入ってない人たちに対しての申し訳なさは、いちばん強く感じました。そこがいちばん辛かったですね。
――改めて、サンゴリアスのキャプテンをやってみて、キャプテンとはどんな存在だと思いますか?
小さい子が憧れる存在。やるからにはそうなりたいですね。チームの象徴だと思うので、キャプテンはそういう存在だと思います。
――象徴となるには、人間性とラグビーのどちらも大事になりますね
そうですね。両方大切だと思います。昨シーズンに感じましたが、気取らなくていいなと思いました。良いことを言おうとしている時があって、それは要らない、ありのままで良いなと感じましたね。
――キャプテンは他の人に勧められるような経験やポジションだと思いますか?
それは無いですね。キャプテンは「なりたい」でなってはダメだと思います。その時、その時の流れでキャプテンになる人がいると思います。タイミングやチームの雰囲気とか、そういうところでキャプテンになる人でないといけないと思います。
例えばユタカさん(流大)がキャプテンになった時は、前年が9位で、「何かを変えなければいけない」というタイミングで2年目のユタカさんがキャプテンになりました。その時に「若手がチームの中心になっていい」という雰囲気がチームに生まれていたと聞いたので、そういう雰囲気やタイミングでユタカさんが最適だったんだと思います。今のこのチームに大切なことは、"泥臭さ"だと思っているので、今はそういうタイミングなんだと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:長尾亜紀]